記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/27 記事改定日: 2018/5/21
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
円形脱毛症になると、髪の毛や眉毛などが急激に10円や500円大の円形に抜け落ちてしまいます。なぜ、突然髪の毛などが円形に抜け落ちてしまうのでしょうか。この記事では考えられる原因を解説します。
円形脱毛症の原因ははっきりとはわかっていませんが、「自己免疫疾患」「アトピー、アレルギーによる皮膚炎」「遺伝的要因」「栄養障害」の4つが主な原因と考えられています。以下に、円形脱毛症の原因として考えられる4つの要素について説明します。
自己免疫疾患による円形脱毛症とは、何らかの理由により身体を異物から守ってくれる免疫システムが誤作動を起こし、自分の細胞を異物として攻撃した結果、円形脱毛症の症状が引き起こされるものです。甲状腺疾患や全身性エリテマトーデスなど、代謝に関わる病気の症状として、または精神的・肉体的ストレスによる自己免疫反応の結果として円形脱毛症が起こるケースがあります。
気づかないうちに何らかの物質にアレルギー反応を起こしてアトピー性皮膚炎を発症し、円形脱毛の症状が出る場合があります。
家族や親族に円形脱毛症になったことがある人がいる場合、円形脱毛症を発症するリスクが通常に比べて10倍高くなるというデータが報告されています。円形脱毛症患者の家族が100%発症するわけではありませんが、上記の事実から、円形脱毛症が遺伝性の疾患である可能性も指摘されています。
近年、過度なダイエットや食生活の乱れが原因で栄養障害に陥り、髪の発育に必要なビタミン・ミネラルが不足した結果、円形脱毛症を発症する例が報告されています。
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があります。このため、髪の正常な生育に必要な頭皮の血流が保たれず、健康的な髪の成長が妨げられることがあります。
また、ニコチンには男性ホルモンを増加させる作用もあります。男性ホルモンが多くなると、逆に女性ホルモンの分泌が減少することがありますが、女性ホルモンは髪の生育に必要なホルモンであり、結果として髪の生育が妨げられることがあります。
円形脱毛症は、体毛が10円や500円大の円形に、急激に抜け落ちてしまう病気です。ほとんどの場合、円形脱毛症の症状は頭髪に現れますが、人によっては眉毛、まつげ、ひげ、陰毛など、頭髪以外にも症状があらわれるケースがあります。通常、放っておいても数カ月で治ると言われていますが、一度発症すると再発しやすく、再発を繰り返す場合は病院での治療が必要となるのが特徴です。
円形脱毛症は、症状の現れ方によって多発型円形脱毛症、全頭脱毛症、汎用性脱毛症の3種類に分類されます。
円形脱毛症は、ストレスが原因で発症すると思われがちですが、ストレスは確かに発症のきかっけとなることはあるもののそれ自体が主要な原因ではありません。円形脱毛症は、頭皮にある毛の先端部分の毛包と呼ばれる部位が異物と認識されてリンパ球が攻撃してしまうことで生じます。
なぜ毛包が異物と認識されるのかは明確には解明されていませんが、円形脱毛症は家族内発症を起こすこともあり何らかの遺伝的な要因も関与していると考えられています。
また、発症に人種差や男女差はなく、多くは15歳以下で発症し、特に症状がひどいものは小児で多く見られる傾向にあります。
円形脱毛症は軽度な場合には、多くは特別な治療を必要とせず自然と治ることがほとんどです。自宅でもできるケアとしては、頭皮に刺激を与えるよなシャンプーや整髪剤の使用を避け、しっかり皮脂を洗い流して頭皮を清潔に保つことを心がけましょう。
また、円形脱毛症は、ストレスが引き金となることもありますので、休息をよくとり、しっかりとリラックスできる時間を持つことも大切です。不規則な食生活や喫煙も頭皮にダメージを与えることがありますので、それらを改善する必要もあるでしょう。
しかし、脱毛部分が広範囲にわたるような重症のケースでは、自分でできるケアのみでは症状は改善せず、どんどん悪化することもあります。セルフケアを続けてもよくならないときや、一度に何個も脱毛箇所ができてしまった場合には、皮膚科や美容外科などを受診して早めに治療を開始するようにしましょう。
重症な円形脱毛症では、外見的な問題から、ウィッグやかつらを使用する人が多いですが、使用する場合には医師と相談の上で医療用のものを選ぶようにしましょう。
医療用のウィッグやかつらは、自然な見た目を維持するだけでなく、頭皮に負担をかけないように通気性に優れています。サイズが多彩で、自分の頭の形に合わせて作るものもあるので、頭の形により合うものを選ぶことが可能です。
一方、市販のものは、おしゃれを目的に作られているため、人工毛髪が大量に使用され、通気性が悪く頭皮に過度な負担をかけることがあります。また、大量生産を行うために医療用に比べて作りが雑で、人工的に見えるという欠点があります。
円形脱毛症では、頭皮への過度な刺激や負担は禁物ですので、ウィッグやかつらは自己判断で市販品を使用せず、医師とよく相談して医療用のものを選ぶようにしましょう。
病院で円形脱毛症の治療を受ける場合、外用薬・内服薬の投薬、局所注射、免疫療法による治療が行われるのが一般的です。
投薬治療では、炎症やアレルギー反応を抑えるセファランチン®やグリチロン®などの内服薬や、患部に塗布して血流改善と発毛を促す塩化カルプロニウムなどが処方されます。
局所注射は、脱毛個所に直接炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを注射するもので、比較的症状の重い患者に推奨されます。痛みや皮膚陥没といった副作用のリスクを伴うため、子供には使用しませんが、高い効果が期待できる治療法だと言われています。
免疫療法は、脱毛個所に皮膚かぶれを引き起こす薬品を薄めて塗布し、発毛を促す治療法です。「SADBE」や「DPCP」とも呼ばれています。脱毛班が広範囲にわたっていたり、長期にわたって再発を繰り返している患者に有効な治療法とされていますが、皮膚をかぶれさせるため治療にかゆみを伴います。
このほか、患者の症状や重症度に合わせて、患部の血流を促進する冷却・冷凍治療、紫外線・赤外線による光線療法、漢方による治療も行われています。
ひとくちに円形脱毛症と言っても、その原因は人によって異なります。原因にあわせた適切な治療を行わなければ、円形脱毛症を根本的に治療をすることはできません。円形脱毛症の症状が出たらすぐに病院を受診し、原因に合った治療を受けてください。