記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
赤ちゃんのおよそ1000人に1人の割合で起きると言われる「先天性股関節脱臼」。今回の記事では、先天性股関節脱臼の進行度別の治療法や、合併症である「骨頭壊死」について解説します。
先天性股関節脱臼は、出産前後になんらかの要因があって股関節の脱臼が起きた状態のことです。先天性という名前ではありますが、生まれてきてからの足の動かし方によって発症する場合もあります。
男女比では圧倒的に女児が発症することが多く、ホルモンや体内環境、遺伝子などが関係していると考えられています。ただ、一つだけの原因で発症するわけでなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って起こるとされています。
発症原因が出産後にある場合には、脱臼を起こさないように赤ちゃんを扱うことで予防することが可能です。生まれてしばらくの間は、股関節が柔らかく脱臼を起こしやすい状態なので、起こさないように気をつけることが重要なのです。
先天性股関節脱臼は、症状の程度に応じて治療法が違ってきます。症状が最も軽いものが脱臼準備状態で、レントゲンを撮っても明らかな所見はみられません。まだ脱臼を起こしていませんが、起こす可能性が高い状態で、基本的には足の動きを妨げないようにしながら経過観察をします。
ここから症状が進むと亜脱臼と呼ばれる状態になります。関節軟骨同士は接触していますが、足の位置によってしっかりと関節が適合しないことがある状態です。この状態になるとリーメンビューゲルという装具を着用する治療をします。
この次の状態が脱臼で、同じように装具で治療を行いながら、入院して開排位持続牽引整復法を行います。さらに症状が進むと高度脱臼と呼ばれる状態になり、関節が完全に外れてしまっている状態で開排位持続牽引整復法を行って治療します。
診断が遅れた場合や適切な治療が受けられなかった場合、開排位持続牽引法を行っても治療に長い期間がかかります。
先天性股関節脱臼の治療の際には、股関節の脱臼が起こっているため、股関節を正しい位置に整復してから固定する方法がとられます。しかし、赤ちゃんの骨は繊細なため、整復をする時に骨頭に血流の障害を起こしてしまうと、そのことが原因で骨頭に栄養を送る血流が悪くなり、最悪の場合には骨頭壊死を生じてしまいます。
骨頭壊死が起きた時には、運が良ければその後の成長と共に骨頭が形成されていく場合もありますが、順調な経過をとらない場合には、一生残ってしまうような股関節の変形を起こしてしまうことがあります。赤ちゃんの時期に骨頭壊死になっててしまうと、その後一生に渡って股関節に不自由を感じながら生活をしていかなくてはいけません。
そのため、先天性股関節脱臼の治療の際には骨頭壊死を起こさないように細心の注意を払っていかなくてはいけません。装具の装着だけでは骨頭壊死が起こることがあったため、最近では牽引法が基本的な治療として選択されるようになってきています。
先天性股関節脱臼は、脱臼の重症度に応じて適切な治療法が異なっていきます。不適切な処置によっては骨頭壊死となってしまう恐れもあるため、専門の医療機関にて治療を進めていくことが大切です。