記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/21
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
自閉症は、対人関係、コミュニケーション、特定化した興味や活動の3つの特徴をもつ障害で、その症状が軽いものを含めて「自閉症スペクトラム障害」とも呼ばれています。
出生後まもなく判明する発達障害なので、家族にとって自閉症患者の世話をするのはかなりの負担を強いられます。ここでは、家族介護者への支援について考えてみたいと思います。
自閉症にとって必要なのは、支援です。しかし、その介護をする家族も支援を受ける恩恵があります。
自閉症は広範囲の障害であるため、その介護にはかなりの負担がかかることは否定できません。その度合いは人によって異なりますが、重症の自閉症では家族介護者の負担はより大きなものとなります。家庭内の行動問題に対処することは非常に難しく、トイレの問題から自傷行為に至るまで対応しなければなりません。
自閉症は、目に見えない障害で、外見的な身体的徴候はありません。見た目は健常人とかわらないため、自閉症の行動を理解していない人からの非難にはそのつど家族介護者が対応しなければなりません。そのため家族介護者は、自閉症児を連れて家から出たくなくなります。
助けを求めることは、ストレスの少ない状況にするための前向きな一歩です。
以下に、自閉症と家族介護者両方に役立つヒントを示します。
・公的な手当
介護者は「介護者手当」、自閉症者は「自立支援給付」を受ける権利があります。
・住んでいる地域の介護福祉課に相談しましょう。そして、どのようなレスパイトケア(患者の会やデイサービスなど)を受けるか決めましょう。
・自身の健康に影響を及ぼす問題について医師に相談しましょう。必要に応じて、関連する支援サービスを紹介してもらいましょう。
自閉症患者は複雑な要求をするので、家族介護者は他人に迷惑をかけたくないから頼むのは難しいと思うかもしれません。しかし家族介護者が休憩をとることは、身体的、情緒的にも重要なことです。
信頼できる友だちや家族は、休息の時間を与えてくれるでしょう。また、住んでいる地域の行政は、介護者がある一定の休息時間をもつことができるようにデイサービスなどの在宅介護支援を行っています。
介護者こそ正しい食事を取り、十分な運動をして健康を保ってください。疲れたり気分が落ち込んだら、すぐに医師に相談しましょう。
自閉症スペクトラム障害(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害)の患者とその家族のためのサポートとして、患者の会、家族の会、支援グループは全国にたくさんあります。
同じ境遇の人と会い、話し、対処方法を共有することは介護者にとっても、患者にとっても有益なことです。
介護では、多くの人が似たような経験をもっています。
介護に疲れたときは、支援の手に委ねることも大切です。多くの人がきっと手助けしてくれるでしょう。
介護の負担を「重荷」ととるか「新たな挑戦」ととるかは、あなた次第です。患者とともに新しい扉を開けてみませんか?