記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2018/8/6
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
人に感染する恐れのある感染性結膜炎の一種に、はやり目やプール熱などの「ウイルス性結膜炎」があります。今回の記事ではこのウイルス性結膜炎について、特徴的な症状や対策を解説していきます。
「結膜炎」とは、結膜(まぶたの裏と白目の粘膜)に炎症が起こっている状態をいい、大まかに、人に感染する「感染性結膜炎」と、人に感染しない「非感染性結膜炎」の2つに分けられます。非感染性のものには花粉症やダニなどによる「アレルギー性結膜炎」が、感染性のものにはプール熱やはやり目を含む「ウイルス性結膜炎」があります。
このうち、ウイルス性結膜炎には「流行性角結膜炎」「急性出血性結膜炎」「咽頭結膜熱」の3種類があり、それぞれ原因となるウイルスが異なります。一般的にはリンパ節が腫れ、症状、伝染性が強いのが特徴で、夏前後に流行することが多いといわれています。
流行性角結膜炎(はやり目)は、ウイルス性結膜炎の中でもっとも症状が重いもので、充血、目やにがひどく、眼痛をともなうこともあります。感染力が非常に強く潜伏期間が長いため大流行し、終息には1~2カ月かかります。角膜炎(黒目の表面の膜の炎症)を併発し、視力低下を引き起こすこともあります。
次に、急性出血性結膜炎(アポロ病)は、感染力が強いものの潜伏期間が短いため、大流行しても2週間程度で終息します。充血、目やに、目のゴロゴロ感とともに、白目に出血があるのが特徴です。
最後に、咽頭結膜熱(プール熱)は小児に多く、結膜炎の症状以外に高熱やのどの痛みなど呼吸器系の症状をともないます。
ウイルス性結膜炎には今のところ特効薬はなく、感染したウイルスの抗体が体内に自然につくられるのを待つしかありません。感染して抗体ができ、それがウイルスを退治するまでには2~3週間かかります。
しかし、炎症を抑え、細菌による二次感染を防止するために薬が処方されるのが一般的です。充血、炎症などの緩和には、角膜炎にも有効とされるステロイド点眼薬が、傷んで雑菌が繁殖しやすくなった目を守るための薬としては抗菌点眼薬が用いられます。また流行性角結膜炎では角膜表面の一部がはがれてしまうことがありますが、このような場合には抗菌薬の点眼や眼軟膏を用いて感染を予防する必要があります。
ウイルス性結膜炎を予防するには、まず石鹸と流水で手や指についているウイルスをよく洗い流すことが大切です。
もし感染してしまったら、目やにや涙を直接さわらずティッシュペーパーなどでふき取りすぐに捨てるようにしてください。感染の恐れがあるのは、流行性角結膜炎や咽頭結膜熱では約1~2週間、急性出血性結膜炎では3~4日です。感染の可能性のある期間は学校や会社は休み自宅療養をしてください。
家庭内ではタオルなどは家族と別にし、使ったものは煮沸消毒し、目やになどをふいたティッシュペーパーは専用のビニール袋に捨て、お風呂は最後に入るようにしましょう。なお、咽頭結膜熱では目の症状がなくなっても、およそ1ヶ月は糞便中にウイルスが含まれるので注意が必要です。
ウイルス性結膜炎は、原因ウイルスによって異なるものの強い感染力を持つ病気です。特効薬があるわけではないので、普段から予防を心がけるとともに、違和感があれば早めに眼科を受診して症状の悪化を防ぎ、感染を広げないよう注意しましょう。