記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2018/8/1 記事改定日: 2019/4/24
記事改定回数:1回
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
帯状疱疹は胸部や腹部だけでなく、眼にも影響を与える恐れがあります。今回の記事では、まぶたにできる帯状疱疹「眼部帯状疱疹」について、症状や治療法、予防法をお伝えします。
帯状疱疹とは、水痘(水ぼうそう)ウイルスが再活性化し、痛みを伴うびらん(浅い傷)が皮膚に出来る病気です。水痘にかかるとウイルスが血流にのって、脊髄神経や脳細胞や神経細胞の集合(神経節)に感染します。一度感染すると、休眠状態のまま神経節などに潜伏し、症状が出ることはありません。
ところが加齢や慢性病治療により免疫機能が低下すると、再度活性化することがあります。この再活性化したウイルスは神経線維に沿って皮膚に戻り、痛みのある水痘に類似したびらんを呈するようになります。
びらんは、神経線維が分布している部位の上にある皮膚に帯状に発生し、左右どちらか一方に見られるのが特徴です。この帯状の皮膚は皮膚分節(デルマトーム)と呼び、しばしば隣接した皮膚分節にも症状が出る場合もあります。
帯状疱疹は腹部や胸部の皮膚に症状が出るのが一般的ですが、眼部にも病変が出現することがあります。顔面には顔の各部の活動や感覚を司る三叉神経が支配していますが、眼部もまた同様にこの神経が分布し神経線維が伸びている部分です。
なかでも三叉神経第1枝の支配する、おでこの半側・まゆげ部分・上まぶたなどの皮膚に出る場合を、眼部帯状疱疹と定義しています。
眼部帯状疱疹では、前駆症状として額の部分にちくちくした感覚を覚えることがあります。発症時には額や鼻などの皮膚への強い痛みを伴う水疱が多発したり、眼に感染すると眼痛・光をまぶしく感じる、まぶたの腫れといった症状を呈します。
なお、眼に病変が出ると、角膜炎・強膜炎・虹彩炎などを引き起こすこともあります。特に眼球に病変が波及した場合には、視力に重大な障害を残す可能性があるので、速やかに治療を開始することが必要です。
まぶたに帯状疱疹ができた場合でも、基本的にはバルトレックス®などの抗ウイルス薬の投与が行われます。一般的には7日間の内服治療が行われますが、高熱や激しい痛みがあるなど重症な場合には抗ウイルス薬の点滴治療が選択されることもあります。
また、まぶたにできた場合には目にも病変が現れることがありますので、抗ウイルス薬入りの眼軟膏が使用されます。帯状疱疹だができた側の目にしっかりと眼軟膏を塗り、まぶたに触った手で目を擦らないように注意しましょう。
眼部帯状疱疹が他の部位に生じる帯状疱疹と異なるのは、緑内障といった後遺症を原因として視力に深刻なダメージを及ぼす可能性があるということです。未然に発症を予防したいものですが、眼部帯状疱疹はワクチンで予防することが出来るのです。
以前は、子供の頃に水痘にかかった経験がある人は一生免疫が続くと考えられてきました。
しかし近年では、免疫は20年ほどで低下し始め、40〜50年以上経過すると、危険なレベルまで低下することが分かってきています。
眼部帯状疱疹をはじめ、帯状疱疹が中高年以降の年代で急増するのは、このような事情がある為です。そのため50歳以上の方は、眼部帯状疱疹等を予防すべく、ワクチン接種することをおすすめします。
加齢とともに免疫力が低下してくると、水痘ウイルスが再活性化し、帯状疱疹を発症することがあります。眼部帯状疱疹は緑内障や視力低下などを引き起こすリスクもあるので、中年以降の方はワクチン接種で、未然に発症を防ぐことが望ましいです。