記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/22 記事改定日: 2018/4/5
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
貧血になると、めまいや立ちくらみだけでなく、強い眠気を感じることもあります。これはなぜでしょうか?貧血と眠気の関連性や、貧血を緩和する方法などをご紹介していきます。
貧血とは、血管を流れる赤血球に含まれるヘモグロビン(鉄を含むタンパク質)が減少した状態のことを言います。貧血には複数のタイプがありますが、多くの場合は、鉄が欠乏したことによる鉄欠乏性貧血です。鉄が欠乏すると骨髄で行われるヘモグロビン合成がうまくいかなくなり、貧血を起こすようになります。貧血にはほかに、赤血球の形成不全によるものや、赤血球が破壊されて起こるものなど、さまざまなタイプのものがあります。
軽度の貧血ではほとんど症状が出ないですが、代表的な症状としては、以下のものがあります。
さらに進行すると、以下の症状が出ることがあります。
貧血になると全身に酸素が回らなくなりますが、体全体の中で酸素の消費量は一番多いのは脳です。このため、酸素不足に陥ると脳が疲れ、頭痛やめまいを引き起こすことがあります。
貧血になると、日中でも起きていられないほどの強い眠気に襲われたり、休日に一日中寝てしまうという人もいます。貧血を起こすと血中酸素が不足し、脳への酸素供給量が減少するのですが、それにより新陳代謝が悪化すると、脳そのものの活動も低下し、眠気を感じるようになるのです。
なお、鉄分の多くは、人が眠っている間に腸管を通して体内に吸収される仕組みになっています。そのため睡眠不足の人も貧血になりやすいとも言われているので要注意です。
妊娠すると、胎児の分の血液を確保するために、母体の血液量が増えます。しかしこの血液量のうち、血漿量(液体成分)は妊娠後期で50%ほど上昇するのに対し、赤血球量は20%程度しか増えません。このため血が薄まったような状態になり、妊婦さんは鉄欠乏性貧血を起こすことが多くなります。そして眠気や頭痛、めまい、息切れなどの貧血症状が起こりやすくなります。
生理中は眠気がひどくなりますが、その理由としてまず貧血があります。貧血により酸素を届ける血液が不足することで、脳が疲労して眠気を引き起こすようになります。
また、貧血以外にも生理中の眠気には理由があります。例えば、生理の始まった頃は女性ホルモンの一種のプロゲステロンが増えるのですが、プロゲステロンは睡眠薬と同じくらい眠気をもたらす作用があると言われています。他の理由としては、生理中は次の妊娠に備え子宮に多くの栄養が運搬されるため、体全体が栄養不足の状態になり、低血糖状態を起こして眠気が起きるという側面もあります。
貧血対策としてまず重要なのが、食生活を見直すことです。貧血の根本原因の多くは、偏った食事や無理なダイエットなどによる栄養不足です。良質なタンパク質や鉄分、それを体内に吸収する手助けをするビタミンCを中心に、しっかりとバランスのよい食事をするようにしましょう。
とくに10代などの成長期には鉄分が豊富に必要になります。女子の場合は生理(医学的には月経というのが一般的です)が始まる時期でもあるので、レバーやひじき、ほうれん草などの鉄分を多く含む食品を意識して摂るようにしてください。また、女性の場合には妊娠すると貧血を起こす人も増えます。鉄分だけではなく葉酸も不足しますので、ほかの栄養素とともに葉酸も多めに摂るように気をつけましょう。
食生活の改善がむずかしい場合や、貧血症状が重く、食事だけでは貧血が改善しないときには、市販の貧血改善薬を使用したり、病院で診察を受けることも有効です。市販薬の多くは、鉄分だけではなく、葉酸やビタミンB類などを一緒に配合したものが多いので、一人暮らしで栄養が偏りがちの人にもおすすめです。病院では血液検査を行った後、鉄剤の処方薬のほか、注射、シロップ剤などでの治療が行われます。
貧血による眠気は、血中の酸素不足によって脳の活動が低下したことが原因と考えられています。貧血の多くは、過度のダイエットや食事制限による栄養不足が原因なので、鉄分の多い食品を食べるなど日頃からの食生活の改善を心がけましょう。