記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/2/27 記事改定日: 2020/4/22
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
月経随伴性気胸は、毎月生理の前後に症状が現れる気胸です。気胸というと、若く痩せている男性の患者が多いイメージがあるかもれませんね。
この記事では月経随伴性気胸」について、症状や原因、治療法について解説していきます。どんなときに病院に相談したほうがいいかの参考にしてください。
月経随伴性気胸は、異所性子宮内膜症(子宮や卵巣以外で子宮内膜ができてしまう病変)により引き起こされる気胸の一種です。
生理(月経)開始3日前から5日後までの間に胸痛、呼吸困難や喀血、血痰などの症状を呈し、多くの場合右肺に症状が現れます。顕微鏡下での組織学的診断をつけることは簡単でなく、診断基準は一定していないのが現状です。
通常の気胸は10〜30代の痩躯の男性に多く、女性が発症することはあまり多くありません。
月経随伴性気胸では月経中や月経前後に次のような症状や身体の変化が現れます。
月経中やその前後の体調不良は、月経困難症などと思われがちであり「胸の病気」と結びつける人は少ないでしょう。しかし、月経随伴性気胸は決して珍しい病気ではありません。月経に関連して呼吸器症状が強くなるときは月経随伴性気胸を疑い、早めに産婦人科や呼吸器内科などを受診するようにしましょう。
月経随伴性気胸は
が原因と考えられています。
ただし、どのような経過を辿ってこれらの病変が出てくるのかについては
など、いくつかの説がありはっきりしていません。
月経随伴性気胸の治療は、外科的手術とホルモン療法の2本柱で進められます。
なお、手術のみやホルモン療法のみの治療では再発率が高いことから、両方の治療を組み合わせて実施することが望ましいとされています。
月経随伴性気胸の直接的な治療として挙げられるのは、横隔膜の病変部を切除して取り除き、損傷部位を縫合する手術です。子宮内膜の増殖を抑制するには女性ホルモンの活性を喪失させる方法が有効という点から、卵巣摘出術が実施される場合もありますが、妊娠希望の方には実施できないというデメリットがあります。
ホルモン療法とは、GnRHアナログなどを投与して偽閉経状態を作り出し、卵巣からのエストロゲン分泌量を減少させることで、子宮内膜病変を退縮させる治療法です。副作用として、更年期障害や血栓などの症状が出る場合があります。
再発を繰り返す人には、GnRHアナログなどの方法に引き続き、低用量ピルやダナゾールなどの治療薬を継続する場合もあります。
月経随伴症候群は、肺や横隔膜に発生した異所性子宮内膜が月経周期による女性ホルモンの増加によって増殖し、剥がれ落ちることが原因で胸の痛みや呼吸困難などの症状を引き起こします。
このため、妊娠中は月経に伴う女性ホルモンの変化がなく、異所性子宮内膜が増殖することもないため、一般的には妊娠すると症状が治まるとされています。
しかし、出産後に月経周期が再開すると症状が再発することが多々あります。
月経随伴性気胸は月経に伴う病気のため、まずは婦人科を受診することをおすすめします。しかし、重度な症状があって手術を必要とする場合や、大きな気胸が生じた場合には呼吸器外科や呼吸器内科での治療が必要となる場合もあります。
このため、婦人科や呼吸器科を兼ね備えた総合病院を受診して相談することをおすすめします。
「毎月生理の頃になると、胸の痛みや呼吸困難が起きる」という場合は、月経随伴性気胸かもしれません。早めに婦人科・呼吸器科がある総合病院を受診することをおすすめします。再発することもあるので治療に時間がかかるかもしれませんが、担当医と相談しながら根気よく治療を続けていきましょう。