記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
2018/2/21
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
インフルエンザは冬に流行する感染症です。流行シーズンはメディアにも多数取り上げられるので、知らない人はいないのではないでしょうか。しかし、インフルエンザをきちんと治し、感染を予防するためには「正しい知識」が必要です。
今回はインフルエンザの基礎知識を紹介していきますので、インフルエンザの治療と予防に役立ててください。
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによる気道感染症です。
乳幼児から高齢者まで感染する感染症で、毎年、空気が乾燥する冬に流行し、11月下旬ごろから始まり、1月から3月にかけて感染のピークを迎え、患者数が増加します。
A型、B型、C型の3種類がありますが、C型は感染力が弱く、流行しにくいうえ、感染しても症状も軽いため、インフルエンザと言うと、一般的にはA型とB型を指します。
感染経路としては、インフルエンザに感染した人がくしゃみや咳をすることによって、インフルエンザウイルスが空気中に飛び散り、それを吸い込むことで人から人へ感染していきます。
くしゃみや鼻水、喉の痛みといった鼻やのどの症状に加えて、38度以上の高熱が出て、筋肉や関節の痛みが起こります。かぜに比べると、症状が出始めてから悪化するまでのペースが早いことが特徴的です。
通常は、5日から1週間程度で症状は改善して治りますが、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者では、肺炎や脳炎を起こすこともあり、命にかかわる重篤な状態に陥ってしまうこともあります。
風邪は「かぜ症候群」や「普通感冒」と呼ばれています。
上記で説明したように、インフルエンザは38度以上の高熱が出て、筋肉や関節が痛くなるのが特徴です。風邪は熱が出ても微熱程度でおさまることが多く、倦怠感や体の痛みもほとんど起こりません。
風邪っぽいと思ったときは、上記の症状がないかをきちんと確認しましょう。
ただし、B型に感染したときは高熱が出ないことがあるため、症状だけで自己判断するのは危険です。インフルエンザは飛沫感染するため、自分がインフルエンザと知らずに周囲に感染を拡げてしまう可能性があります。風邪のような症状があるときは、病院で検査してもらいましょう。
症状からインフルエンザが疑われる場合は、診断のため、検査用の綿棒を鼻の奥に差し込み、インフルエンザウイルスに感染しているかどうかの検査を行います。
検査結果が出るまでの時間は10〜15分程度です。検査が陽性と出れば、インフルエンザと診断されます。
ただし、インフルエンザの症状が出始めてすぐ(数時間以内)に検査すると、インフルエンザウイルスの量が少なく、実際はインフルエンザにかかっていても検査では陰性と出る場合があります。
抗インフルエンザ薬が使われます。抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスが体の中で増えることを抑え、症状を軽くし、治るまでの期間を早めます。
経口薬と吸入薬、点滴、小さな子供さん用のドライシロップと様々な薬があり、患者さんの年齢や使いやすさ等を考慮して薬を出します。商品名はタミフル®、リレンザ®、イナビル®があります。
抗インフルエンザ薬はインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬なので、発症して48時間以内(まだウイルスが増殖しきっていない時期)に使わないと効果がありません。
インフルエンザが悪化すると、深刻な合併症に発展する可能性があります。インフルエンザの合併症には、インフルエンザウイルスが原因の「一次性」のものと、細菌感染が原因の「二次性」があります。
代表的な合併症は
・肺炎
・急性脳症、急性脳炎、ライ症候群
・心筋炎、心膜炎
・急性筋炎
などですが、急性胃腸炎や中耳炎、副鼻腔炎などの合併症を発症することがあります。
合併症を防ぐためにも、インフルエンザは早期に治療を始める必要があります。また抗インフルエンザ薬は48時間以降は効き目が期待できないため、発症後はできるかぎり早く投与することが治療のカギになってきます。そのため、インフルエンザウイルスが増殖しきっていない早期の段階で病院を受診することが重要です。
のどの痛みや咳、鼻水などの風邪のような症状があるときはもちろん、筋肉や関節の痛みや寒気などの症状あるときは、すぐに病院に行くようにしてください。
インフルエンザは、空気中に漂っているインフルエンザウイルスを吸い込んだり、インフルエンザに罹っている人と接触することで感染しますので、外出して帰宅した時には、せっけんを使って念入りに手洗いをし、うがいを行いましょう。
そして、体が疲れていると免疫力が低下した状態になり、インフルエンザウイルスに感染しやすくなります。十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事で、疲れを溜めないようにしましょう。
また暖房で部屋の空気が乾燥すると、インフルエンザウイルスが繁殖しやすくなるうえに喉が乾燥して、ウイルスが付着しやすくなります。部屋の空気を乾燥させないようにするために、加湿器や濡れたタオルを1枚干すなど部屋の湿度をあげる工夫をしましょう。
起きているときはマスクなどでくしゃみや咳のときの飛沫が飛び散らないようにできますが、寝ているときにはマスクを知らずにはずしてしまうことがあるので、徹底することは難しいでしょう。つまり、同じ部屋で寝起きをしている人は、インフルエンザに感染する危険性が高くなります。インフルエンザになった人は部屋を別にして寝るようにしましょう。
使用したマスクを外して置きっぱなしにする人がいますが、マスクにはウイルスがたくさん付着しています。外したマスクは、置きっぱなしにせず、ビニール袋に入れて密閉し、ゴミ箱に捨てるようにしてください。
家族に1人でもインフルエンザの人がいるだけで、家の中の至る所にインフルエンザウイルスが付着します。こまめに、洗濯や掃除を行い、食事前などは、家族全員しっかり手を洗うことを徹底しましょう。
また、インフルエンザが流行するのは冬場のため換気がおろそかになりがちですが、窓を開けて空気を入れ替えることは部屋の空気をきれい保つために大切なことです。部屋の換気も徹底するようにしてください。
インフルエンザは、のどや鼻の症状とあわせて、高熱や関節の痛みなどの症状が現れます。ただしB型に感染したときは熱がでないこともあります。風邪っぽいと思ったときは、必ず病院へ行くようにしましょう。特にインフルエンザが流行する11月から3月頃までは徹底するようにしてください。