記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/3/23 記事改定日: 2019/11/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠初期に出血があると、お腹の赤ちゃんによくないことが起きているのではないかと不安に思うかもしれません。
一般に、妊娠初期は着床出血が起こることもあり、心配ないこともありますが、出血量が多かったり、激しい痛みが伴う場合は病院で診てもらったほうがよい可能性があります。この記事では、妊娠初期の出血について、症状や対処法などをご紹介します。
着床出血とは、卵子と精子が受精して子宮内膜に着床するときに、絨毛(じゅうもう)が子宮壁を傷つけたときに起こる軽い出血です。この出血が体の外に出てくるときに「着床出血」と呼ばれます。
着床出血は「生理開始予定日の1週間から数日前」くらいに起こるのが一般的です。出血量はごくわずか、色は人によって異なりますが、茶色いおりもの状のものやうすいピンク色、あるいは真っ赤な血の色であることもあります。
妊娠初期に起こる出血のうち、着床出血以外に考えられるものとして、以下のようなものがあります。
受精卵が子宮以外の場所に着床することを異所性妊娠と呼んでいます(子宮外妊娠と言われることもあります)。
異所性妊娠の大部分は、卵管(卵巣から子宮へ、卵子を運ぶ管)で生じますが、そのほかにも卵巣や子宮頸部(子宮の開口部)、または腹腔内でも起こることがあります。
症状としては、腹痛やお腹が張った感じがすることがあります。異所性妊娠の場合、正常な出産は望めません。また、卵管内に着床した場合、妊娠が進行するにつれて卵管の破裂が起こり、お腹の中で大量出血を引き起こす恐れがあります。
切迫流産とは、子宮から出血があるものの、妊娠そのものはまだ正常な状態で保たれています(流産とは違って、まだ子宮内で胎児は生きています)。
場合によっては血のかたまりが子宮内に形成されて流産のリスクが高まることもありますが、 軽度であれば、切迫流産を経験したほとんどの女性は健康な赤ちゃんを出産することができます。
絨毛膜下血腫は妊娠初期に起こりやすい病気で、切迫流産の一種です。
受精卵が子宮内膜に着床すると妊娠が成立し、絨毛(じゅうもう)と呼ばれる組織を子宮内膜へ伸ばして根を張り、胎盤を作り始めます。
このとき、なんらかの原因で子宮の内側にある「脱落膜」と、絨毛が発育してできた「絨毛膜」との間に出血が起こることがあります。多くの場合、出血量は少なく、体内に自然吸収されるのですが、場合によっては超音波検査で血の塊が見つかることがあります。そのときに絨毛膜下血腫と診断されます。
自然流産は、胎児の自然な死産です。ほとんどの自然流産は、妊娠12週未満に起こっています。その原因のほとんどは、受精卵の染色体異常です。染色体異常があると、胎児に成長する力が備わっていないため、やがて流産してしまうのです。
この染色体異常は両親に原因がある訳ではなく、事前に防ぐこともできません。このため、もし自然流産が起きたとしても、自分を責めることはありませんし、次の妊娠で無事に赤ちゃんを産むこともできます。
そのほかの自然流産の原因として、母親が感染症や内分泌疾患、甲状腺疾患を持っている場合もあります。また、自然流産の兆候として、腰痛または腹痛、けいれん痛、性器出血、腟からの組織排出などが挙げられます。
妊娠初期は着床によって傷ついた子宮内膜などから出血を起こすことがあります。
問題ない出血も多いですが、なかには流産や子宮外妊娠によって出血していることもあります。
次のような症状があるときはできるだけ早く病院を受診するようにしましょう。
とくに注意したいのは、子宮外妊娠による出血です。妊娠検査薬で陽性が出たとしても、必ずしも正常に妊娠しているわけではありません。
子宮外妊娠でも検査薬は陽性と出ますので、陽性を確認した場合はできるだけ早く産婦人科を受診して正常妊娠か否かを確認してもらいましょう。
万が一、産婦人科で確認する前の段階で強い腹痛や大量の出血があるときは子宮外妊娠の可能性も否定できません。
めまいや立ち眩み、動悸、意識消失などを伴うときはお腹の中で大量に出血していることがありますので救急車を要請することも考えましょう。
医師は、どのくらいの量およびどのくらいの時間出血していたか、腹部のけいれんや痛みがあるかを尋ねます。場合によっては、内診や超音波検査、血液検査または尿検査が必要な場合もあります。
女性の妊娠が正常であることを確認するには、超音波で十分な場合もありますが、妊娠超初期(妊娠0週から3、4週)の場合、出血の原因を特定するためにさらなる検査(MRI検査など)が必要になることもあります。
出血の原因に応じて、治療が必要な場合があります。
切迫流産の場合は、主に子宮収縮抑制薬が処方されます。また、 医師は出血が止まるまで、できるだけ安静にすることを勧めます。また、この時期は旅行や運動、性行為も控えましょう。
もし流産だった場合、医師は組織が自然に排出されたか、またはそれを取り除く処置が必要かどうかを観察します。場合によっては、流産後に組織を取り除く、もしくは出血を止めるための処置を行う必要があります。この処置をする場合、器具を用いて子宮頸管を拡張し、子宮内にある組織を吸引または掻爬(そうは)します。
妊娠中の体を健康に保つことは、妊娠期間を健康に保つとともに、赤ちゃんを無事に出産する上でとても大切です。 タバコやアルコールなど、胎児に悪影響を及ぼすようなことは控えましょう。また、市販薬や処方薬の中には、妊娠中に服用しないほうがいいものもあります。服用する前に、必ず医師に相談しましょう。
また、赤ちゃんの脳や脊髄の問題のリスクを下げるために、妊娠を考え始めたときから葉酸が豊富な食べ物(レバー、枝豆、アスパラガス、ほうれん草、ブロッコリー、マンゴー、いちごなど)や、葉酸を含むサプリメントを服用するのがお勧めです。高血圧や糖尿病など、医療上の問題がある場合は、妊娠中に必要なケアについて医師に相談してください。
妊娠初期の出血は、着床出血のように問題のないこともあれば、異所性妊娠や切迫流産、もしくは自然流産など、医師の診察が必要なものもあります。もし、出血がずっと続いていて気になるようでしたら、念のため産婦人科で診てもらうことをお勧めします。