糖尿病の治療中は、空腹になっても我慢したほうが良い?

2018/4/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病の食事療法が始まると空腹を感じるという人が多いですが、それはなぜなのでしょうか?
また、空腹を感じても我慢して乗り切るしかないのでしょうか?
この記事では、糖尿病治療中に空腹感を感じる理由と対策をお伝えします。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

糖尿病の治療中は空腹を我慢したほうが良い?

糖尿病の治療中に空腹感を感じやすくなる原因は大きくわけて以下の2つです。

〈1〉食事量が減ること

糖尿病の食事療法を始めるまでに高カロリーな食事を続けてきた場合は特に、食事療法によって食べる量や内容が変化するために空腹感が起こります。

〈2〉血糖値を戻そうとする体の反応

血糖が高いことに慣れていた体の状態から食事療法によって血糖が下がってくると、血糖を高い状態に戻そうと体が反応するために強い空腹感を感じることがあります。

食事療法による空腹感は(個人差はありますが)1週間~1か月程で体が慣れてなくなっていきます。糖尿病の治療の中心になるのは食事療法なので、この空腹感に対しては最初のうちは我慢をしつつ、徐々に慣れていくという方法が理想的です。ですが、我慢しすぎるとその反動でたくさん食べて血糖値コントロールが乱れる可能性があるので、次の項目にあげるような対策で空腹と上手に付き合っていきましょう。

糖尿病治療中の空腹対策

空腹感はある程度我慢すれば慣れますが、少しでも楽に乗り切る方法があったら嬉しいですよね?以下に、空腹感に負けて食べ過ぎないための工夫や対策をあげるので、糖尿病治療中の方は参考にしてみてください。空腹感に負けて高カロリーなものを食べてしまい、血糖コントロールを乱すことがないよう、早い段階で自分に合った対策を見つけて実践していきましょう。

◆シュガーレスのガムをかむ
◆水、緑茶など、カロリーのない(ほとんどない)飲み物を飲む
◆摂取カロリーを超えない範囲で、食事に一品追加する(こんにゃく、きのこ、海藻などの低カロリー食品を使ったおかずがおすすめです)
◆間食には低脂肪のタンパク質(卵、チーズ、豆類など)を摂る
◆空腹感を感じたら歯みがきをする
◆マスクをする(マスクをしたままでは口に食べ物を入れられないので、無意識に食べ物に手を伸ばしてしまう癖がある方にはおすすめです)

糖尿病治療中におすすめの間食の摂り方

(※この記事内では、「間食」は3食以外で食事と食事の間に摂る食事全般を表します。たとえば小腹がすいたときに食べる軽い食事や夜食なども間食とします)

糖尿病になると、健康人と比べて血糖値が上がりやすく、一度上がった血糖値が下がりにくくなる傾向があります。そのため、3食以外の時間に何かを食べると、食べて上がった血糖値が下がり切らないうちに次の食事を食べて、血糖値が再び(もしくはさらに)上がってしまうという悪循環となり、高血糖状態を続けてしまう可能性が高いです。

間食をするのであれば指示エネルギー量の範囲内で3食との兼ね合いを考える必要があります。無意識かつ衝動的に食べてしまうとエネルギー管理がうまくいかなくなってしまい、血糖コントロールが乱れる原因になってしまうので医師や栄養士の指示には必ず従うようにしましょう

〈上手な間食の取り方のコツ〉

間食をするときは以下のような点に注意しましょう。

◆菓子などを買うときは栄養成分表示でカロリーや塩分、糖分を確認してから買う
◆だらだら食べずに量を決めて食べる(80kcal前後が目安です)
◆菓子類を買うときは小さいサイズのものや、個包装に分かれた食べきりサイズを用意する
◆少量を味わって、ゆっくり食べるようにする
◆間食は夕食後は避けて日中に食べる
◆お菓子は目につく所に置かない
◆間食後は買い物に出かけるなど、運動する週間をつける

注意が必要な空腹感もある?!

先述したような食事量の減少や高血糖状態に戻そうとする体の反応で起こる空腹感は、一定期間を過ぎるとだんだんと落ち着いてきます。ですが、食事療法を行っていないのに起こる強い空腹感は、糖尿病によってブドウ糖をエネルギー源として活用できなくなっていることが原因で生じている可能性があるので注意が必要です。

特に、強い空腹感とともに、喉が渇きやすい、トイレの回数が増えた、体がだるいなどの症状がある場合には早めに病院を受診するようにしましょう。

おわりに:糖尿病の治療中の空腹感は工夫して乗り切ろう!

糖尿病の食事療法を行うと、それまでの食事量や内容との違いや、血糖値をもとの高かった状態に戻そうとする効果が働くため、特に最初のうちは空腹感を感じることが多いです。空腹になってもできるだけ3食(朝・昼・夜)以外の食事は摂らないことが理想的ですが、我慢しすぎるとその反動でたくさん食べて血糖値コントロールが乱れる可能性があること、また長い期間間食を全くしないことは難しいことから、間食をしてはいけないわけではありません。ただし、間食をする場合は食品の量や内容、食べるタイミングを医師に確認し、指示に従うようにしてください。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

食べ物(93) 糖尿病(273) おやつ(9) 対策(73) 血糖値(78) 食事療法(41) 低脂肪(4) 飲み物(27) 間食(6) 歯みがき(1) ガム(4) マスク(20) 空腹感(3) 治療中(2)