記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/5/3
記事監修医師
前田 裕斗 先生
更年期には、のぼせやほてり、イライラといった症状だけでなく、吐き気の症状を訴える人もいます。こちらの記事では、更年期の吐き気と治療方法、そのほかに見られる症状について解説します。
更年期には、のぼせやほてり、めまいといった自律神経失調症状、うつや不眠、イライラするといった精神症状のほかに、吐き気が現れることがあります。更年期の吐き気症状の緩和には、一般的に漢方薬の投与や女性ホルモン補充療法(HRT)といった方法がとられるでしょう。
女性ホルモン補充療法とは、エストロゲンという女性ホルモンを薬で補うという治療法です。子宮体癌のリスクを上昇させないよう、何らかの疾患で子宮を摘出していない人の場合は黄体ホルモンも同時に投与されます。更年期の症状は閉経に伴う女性ホルモンの減少で起こるため、女性ホルモンを補充することで多様な症状を改善することができます。
更年期特有の症状の緩和に用いられるのは、以下のような漢方薬です。
一般的に、漢方薬は患者の体質を詳細に見極めながら最善とされるものが処方されます。更年期障害の症状と考えられる吐き気の解消のために漢方薬を服用したい場合は、漢方専門医を受診して処方してもらいましょう。
更年期障害では、吐き気に伴って胃痛が起こるケースもしばしば見受けられます。胃のあたりがむかむかする、気持ちが悪くてあまり食べられないなど、胃もたれが生じることも珍しくありません。これは、更年期にエストロゲンが減少することや、自律神経の機能が乱れることが原因です。
通常、人間の胃の働きは自律神経がコントロールしています。そのため自律神経が正しく機能しなくなると胃のぜん動運動が弱まり、食べ物がなかなか消化されずに胃に残りやすくなった結果、胃もたれや胃痛が起こってしまうのです。こうした胃腸の不調が吐き気にも繋がります。
ただし、更年期の胃痛や胃もたれが必ずしもホルモンバランスや自律神経の乱れで起こるとは限りません。更年期は、男女ともに臓器を含む体のあらゆる部位に不調が現れやすい時期であるといえます。特に胃の症状が長期化している場合には何らかの疾患が隠れているおそれもあるため、早めに受診してください。
更年期に現れる症状には個人差があり、症状の種類は多岐にわたります。吐き気だけでなく、寒気(悪寒)や頭痛が起こるケースは少なくありません。エストロゲンが減少することで血管運動神経にも異常が生じ、ホットフラッシュ(のぼせやほてり、発汗などが突然起こること)が起こる一方で、血管の収縮が起こるために寒気や冷えが引き起こされてしまいます。
更年期に起こりやすい頭痛は、緊張型頭痛と片頭痛の2種類です。
頭がぎゅっと締めつけられるような痛みを感じるものです。長時間同じ姿勢でいるような身体的ストレスや、緊張や不安といった精神的ストレスが原因で起こります。女性に多いと言われてはいるものの、エストロゲンの減少がどのようなメカニズムで影響しているのかはまだはっきりとはわかっていません。
こめかみなどの頭の片側で、ズキズキと脈打つような痛みを感じるものです。一般的に片頭痛では吐き気があったり、実際に嘔吐してしまったり、光や音、においに敏感になったりと、頭痛以外の症状も同時に現れます。月経時の片頭痛と同様に、更年期の片頭痛もエストロゲンの減少で起こると考えられています。
更年期特有の症状に悩まされている場合には、婦人科を受診してください。婦人科の中でも特に更年期に特化しているところを選ぶと良いでしょう。
医療機関によっては、通常の婦人科とは別に更年期障害を専門としている更年期外来を設けていることもあります。更年期外来では、個人個人の症状に合った治療を施してもらったり、日常生活でのアドバイスをもらったりすることが可能です。更年期障害に特化している診療科であれば、更年期障害の代表症状であるほてりやめまいだけでなく、吐き気や胃痛といった胃腸症状への対策にも詳しいでしょう。
更年期障害の治療で近年注目されている女性ホルモン補充療法ではなく、漢方薬での治療を望む場合には、漢方薬に詳しい医師がいる婦人科や更年期外来を受診しても良いでしょう。効果が得られやすい漢方薬を服用するためには、漢方薬に詳しい医師に診察・処方してもらうことが大切です。一度体に合わなかった場合でも、体調や体質を見て最善の漢方薬を処方してもらえるでしょう。
更年期に現れる症状には様々なものがあり、吐き気や胃痛、胃もたれといった胃腸症状が起こることもあります。吐き気の症状がひどい場合には、無理をせずに更年期障害に強い婦人科や更年期外来などを受診してください。専門の診療科であれば、症状に合った適切な治療が受けられるでしょう。