記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/3/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
65歳以上の男性に多い、腹部大動脈瘤は症状に気づかないことも多いです。その反面、破裂してしまうと死に至る確率が非常に高いとても恐ろしい病気です。症状に気づかなければ、どういった人がかかりやすいのか、どうやって見つければいいのかわかりませんよね。そんな腹部大動脈瘤を見つけるために有効なのがスクリーニング検査です。
この記事では、腹部大動脈瘤スクリーニングについて解説していきます。
腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm;AAA)スクリーニングとは、大動脈の動脈瘤を検出する検査です。
腹部大動脈瘤は65歳以上の男性に多く見られます。腹部大動脈瘤は目立つ症状はほぼありませんが、破裂すると非常に危険で、通常は死に至ります。
検査では腹部超音波検査を程度行います。
一般的には腹部大動脈瘤があっても自覚症状はありません。おそらく痛みを感じることも、何か異常に気づくこともないと思います。スクリーニングは早期に動脈瘤を検出する方法です。
腹部大動脈瘤は、長びく咳があって胸部の検査を受けたときや、ほかの病気の検査のときなどに偶然見つかることもあります。腹部大動脈が特に大きく腫れた場合、拍動感を感じたり、腰や背中に痛みを感じることがあります。しかし、これに気づかなければ破裂するまで腹部大動脈瘤があることはわかりませんが、破裂すれば緊急事態であり、通常死に至ります。
しかし、破裂する前に動脈瘤が発見されれば治療できます。通常は手術で治療します。手術では、大動脈瘤は合成チューブで置き換えるか、補強をします。65歳以上の男性は特に動脈瘤を発症する危険性が高いです。
動脈瘤があるかどうかを調べる最も簡単な方法は、スクリーニングで腹部の超音波検査を行うことです。検査することで、腹部大動脈瘤で死亡する確率が約半分に抑えられます。
男性は、女性よりも腹部大動脈瘤を有する確率が約6倍高いです。動脈瘤の発生リスクは年を重ねるごとに増加します。腹部大動脈瘤のリスクは、以下の場合にも高くなります。
・喫煙している
・高血圧である
・親や兄弟姉妹に腹部大動脈瘤を有する(または有していた)
腹部大動脈瘤がその親族に見つかった年齢より、5歳若い年齢のときにスクリーニングを受けるように勧められます。
腹部大動脈瘤スクリーニングは、腹部の超音波検査を通常は10〜15分程度行われます。被験者の腹部のあたりに透明なゲルを塗ってから、超音波検査の端子を皮膚の上で動かします。超音波スキャナーは腹部大動脈の画像をモニターに映されその厚さを測定されます。
腹部大動脈瘤の検査結果は以下の4つうちのいずれかになります。検査結果によってその後の対処する方法が異なります。
・正常サイズ
・小型の大動脈瘤
・中型の大動脈瘤
・大型の大動脈瘤
超音波スキャンで腹部大動脈が正常なサイズ(直径3cm未満)だった場合、腹部大動脈瘤はないということになります。動脈瘤は非常にゆっくりと成長し、65歳以降に成長することはまずないので、さらに別の検査をすることはありません。
検査で小型(3~4.4cm)または中型(4.5~5.4cm)の大動脈瘤があることがわかった場合でも、この段階では治療は必要ありません。しかし、動脈瘤の大きさをチェックするために定期的に検査することになります。
小型の大動脈瘤なら1年ごとに検査し、中型の大動脈瘤の場合には3ヵ月ごとに検査します。
動脈瘤は非常にゆっくりと成長するので、小型または中型の動脈瘤があっても治療は必要ないことがあります。また、動脈瘤が大きくなるのを防ぐ方法について以下のようなアドバイスを受けます。
・禁煙する
・バランスの取れた食事をする
・健康的な体重を維持する
・定期的に運動をする
・主治医の指示に従って服薬する(血圧を下げる薬など)
検査で腹部大動脈瘤が5.5cm以上であることがわかった場合は、手術を勧められます。健康状態や大動脈瘤のサイズを考慮して話し合います。
手術には主に2つの選択肢があります。
・開腹手術―胃(腹部)のあたりを開腹して、大動脈瘤をグラフトと呼ばれる合成チューブに置き換える
・血管内手術は、まず鼠蹊部に小さな切開部を作る。さらに壁を補強するために、脚の動脈を介して大動脈の腫れた部分にグラフトをいれて動脈の壁を補強する
手術に身体が耐えられない、または手術を受けたくない場合は、腹部大動脈瘤の成長を遅くして破裂の危険性を低下させるため、生活習慣改善のアドバイスや薬が提供されます。
腹部大動脈瘤を見つけるためにスクリーニングをうけることはとても有効です。この記事でも説明したように、もし自分が腹部大動脈瘤になる危険性が高い場合は、病院で腹部大動脈瘤スクリーニングについて相談してください。