記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/5/29
記事監修医師
前田 裕斗 先生
自閉症は先天性の発達障害のため、赤ちゃんのころから兆候がみられることがあります。
この記事では、自閉症の赤ちゃんにみられる特徴や行動パターンについて解説しています。自閉症は早めに対処していくことで社会に適応しやすくなるとされています。赤ちゃんがいる人や自分の子供が自閉症かどうか気になる人だけでなく、一般的な知識として理解しておきましょう。
「自閉症」は、先天的な発達障害です。その症状はさまざまですが、自閉症の赤ちゃんによく見られる行動としては、まず、じっとできず目的もなく動き回るなどして目が離せない「多動」があります。これは注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断される場合もあります。また、位置、行動、習慣などがいつも同じ状態であることに強く固執する「こだわり」があり、同じ事を何度も繰り返すこともあります。そのほか、「意思疎通ができない」ため何かを要求するときに相手の手をつかんで引っ張っていくような行動をとる、感覚が正しく脳で処理されず極度に過敏となったり逆に鈍感で痛みを感じないなどの「感覚異常」がある、成長しても睡眠のリズムがつかめず睡眠時間が極端に少ない状態が続く「睡眠異常」などがみられる場合も多いといわれています。
赤ちゃんは本来、母親に対して絶対的な安心感があるので、母親の目を見つめたり抱っこしてもらって泣きやんだりするのが一般的です。しかし、自閉症の赤ちゃんには、母親と目を合わせようとしない、目を合わせようとしても顔をそむけて目線をそらすといった症状がみられる場合があります。
自閉症と診断がつくのは3~5歳が多いとされていますが、その頃に目立ってくる特徴として「社会性の欠如」「コミュニケーション能力の欠如」「想像力の欠如」があります。視線を合わせようとしないこともその兆候のひとつとされ、診断されたときに「そういえば赤ちゃんの頃から目が合わなかった」と感じる両親は少なくないといわれています。
ただし、目が合わない赤ちゃんのすべて自閉症というわけではなく、大半は心配のない成長の過程のひとつです。また、数は少ないですが目や視力の異常を原因とする場合もあります。
一般的に赤ちゃんは母親に抱っこされると安心した様子を見せますが、自閉症の兆候がある場合、抱っこを極端に嫌がることがあります。お腹がすいたときや甘えたいときに抱っこされても、さらに激しく泣き出してベビーベッドに寝かせるとおとなしくなったり、抱っこそのものを嫌がるので授乳するときにも泣いてしまいミルクを飲んでくれない状況になることもあります。
また、母親が抱っこしていてもいなくても変わりがなく、抱っこを喜ぶ様子がないといったことや、一般的に人見知りをするはずの赤ちゃんが人見知りをしないという傾向もあるといわれています。こうした愛着行動をとるべきタイミングでそれができない、1人にしても泣かない、あやしても反応しない、といった症状は、「コミュニケーションが苦手」という自閉症の特徴として現れていると考えられています。
自閉症は、生まれ持った脳機能障害のひとつです。胎児の頃に中枢神経の発達になんらかの問題が発生したことが原因ではないかと考えられますが、はっきりとしたことはわかっていません。
現在では自閉症は発達障害のひとつとして認識され、対処方法も増えています。保育園や幼稚園、学校などでも受け入れ先が増えているので、赤ちゃんの頃からしっかりと対処していくことで症状は軽減され、社会に適応した形で生活できるようになります。どうしても不安がある場合には、ひとりで抱え込まず、まずは育児相談や乳幼児健診、小児科などで相談してみましょう。
自閉症の赤ちゃんには、多動、こだわり、意思疎通が困難、感覚異常、睡眠異常などの特徴がみられます。母親と目を合わせない、抱っこを嫌がる、音に驚かない、母親がいなくても泣かないなどの症状から、育て方のせいではないかと悩む親も多いようですが、それだけではないことは医学的に証明されています。不安があれば、専門家に相談してみるようにしましょう。