記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/6/1 記事改定日: 2020/10/16
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
ダウン症の特徴は、赤ちゃんや子どもと大人で変わっていくことがあります。周囲の人が気をつけてあげられるのはどんなサポートでしょう。ダウン症の特徴や育児の注意点、大人のダウン症にみられる退行現象についてなど紹介していきます。
ダウン症の赤ちゃんや子供には、次のような特徴が現れることがあります。
ダウン症は上で述べたように様々な心身の特徴や合併症があるため、育児を行っていく上で注意しなければならないことが多くあります。具体的には次のような点に注意していきましょう。
ダウン症の子は心疾患などの合併症を抱えているケースが多く、体調を崩すと重症化しやすい傾向にあります。
日ごろから生活リズムを整えてバランスよい食事を摂るなど、生活習慣に注意することが必要です。また、外出後の手洗いや外出時のマスク着用など基本的な感染対策も徹底しましょう。
ダウン症の子は咀嚼機能や嚥下機能が低いケースが多く、物をうまく飲み込めないことも少なくありません。
誤嚥を防ぐためにも食事の形態はその子に合わせてとろみをつける、細かく刻むなど工夫することが大切です。また、食事中はできるだけそばに付き添い、むせこみなどがないかチェックしましょう。
ダウン症では足底のアーチが十分に形成されないいわゆる「扁平足」になりやすいです。このため、通常よりも転倒しやすい傾向にあります。足に合ったくつを選び、周囲の環境を整えるなど転倒に注意しましょう。
ダウン症の子は知能や運動機能の発達が遅れるため、個々人に適した療育を進めていく必要があります。担当医とよく相談して上で日常生活や社会生活に順応できるよう適切な療育を進めていくようにしましょう。
ダウン症の子が30〜40代になると
などの「退行現象」が起こることがあります。
このような症状が現れるときは、本人が環境の変化に戸惑っている可能性があります。以下を参考に本人が納得するまで時間をかけて話をするようにしましょう。
現在置かれている状況にストレスや恐怖感を抱いている場合、言葉にできずに大声で泣きだしてしまうことがあります。また、過去の出来事を思い出して泣いている場合には、理由を尋ねて、それは現在起きていることではないことを説明してあげましょう。
年齢が上がるとともに作業時間が増え、仕事内容に遅れが生じたり、同僚や上司からそのことを指摘されると、モチベーションの低下やストレスが起こり、引きこもりになるケースもあります。本人や周囲の人達が、本人の生きがいや楽しみを見つけることが大切です。
家の内外を問わず、独り言を言う事が多く、幻聴や幻覚なのではないかと疑うのは早計です。ダウン症の人達は豊かな空想性を持っており、独り言が多くてもあまり心配する必要はありません。
ただし、「あいつが悪い」「あれは私のせいじゃない」など心的な感情を繰り返す場合には、心配事やストレスを抱えている事があるので、本人に尋ねてみましょう。
歯ぎしり・独り言・手をもみ合わせる・唸る・体を前後に揺らす・顔を撫でる・奇妙な顔をする・喉や頰を鳴らす・手をひらひらさせるなどの行動はチック現象と呼ばれるものです。
これらの反復行動は、楽しい・満足・興奮・ストレス・動揺・不安などの気持ちの現れとされています。
子供の頃から、自傷行為により不安解消をしてきた人は、大人になっても自傷行為を続ける傾向があります。自傷行為は、家庭内の不和や暴力などが原因となる事が多いようです。
米国の臨床結果によると、自傷行為を始めた時に、顎や頭のかわりに手を叩くように促したり、気持ちを声に出す練習をすると、自傷行為改善に効果があるとされています。
ダウン症の方が成長して大人になると、生活の自立や勤労などに関することなど、幼少期とは異なる様々な困難が目立つようになります。このような問題・困りごとは、次のような施設で相談できます。
成人したダウン症の人やその家族がよりよい生活を送るために、困ったことがあれば積極的に利用するようにしましょう。
ダウン症の赤ちゃんには、顔や身体的なものの他に、睡眠や合併症などにも特徴があります。大人のダウン症の特徴としては、無気力や独り言、チック症状、自傷行為などの精神的な面での特徴が現れる傾向があります。周囲の人が異常に気づいた場合は、本人に事情を尋ねてあげるようにしましょう。話をすることで困り事や心配事が改善する可能性があります。