記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/12 記事改定日: 2020/3/17
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日本では梅雨の時期から見かけることの多くなるカタツムリ。一見無害に見えるカタツムリですが、人間が感染すると死亡するリスクのある寄生虫を保有している可能性があることをご存知ですか?
この記事では、カタツムリの危険と対処法について說明していきます。
カタツムリは、普段葉っぱやコケなどを餌にしていますが、大量発生すると農作物を食べる場合があるため「害虫」として扱われることもあります。そして、自然環境で生きる過程で「広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)」という寄生虫に寄生されることがあります。
線虫とは土壌や河川などに生息する線状の生物で、種類によって動物に寄生したり、植物に寄生したりします。
広東住血線虫の終宿主はドブネズミとクマネズミで、ネズミの体内で卵が成長し、幼虫になったところで糞と一緒に排出されます。その幼虫を中間宿主のカタツムリなどが取り込み、さらに成長したところで、中間宿主を食べたネズミに再寄生し成虫になるというサイクルができています。
広東住血線虫の中間宿主はカタツムリだけではありません。ナメクジも代表的ですし、まれにエビやカエル、プラナリアなどが中間宿主となることがあります。
なお、日本での主要中間宿主は、沖縄や小笠原、奄美大島などに生息する大型のアフリカマイマイやアシヒダナメクジなどです。日本での広東住血線虫感染の症例は少数ですが、寄生が確認されたカタツムリやナメクジは全国で見つかっているので注意が必要です。
ロイコクロリディウムは、日本でも北海道や沖縄に生息するとされている寄生虫です。
この寄生虫は、鳥の糞に卵を産み付け、それを捕食したカタツムリの中で成長します。イモムシのような形態が特徴的であり、カタツムリの体内で成長したロイコクロリディウムはカタツムリの触角部分に移動し、あたかもカタツムリ自体が巨大化したように見えると言います。
そして、鳥に食べられると鳥の体内で増殖を繰り返し、直腸内の便に卵を産み付けて一生を終えることが分かっています。
このように、ロイコクロリディウムは鳥に寄生されやすいようにカタツムリに寄生するため、「カタツムリを操る寄生虫」と言えるのです。
見た目が非常に派手で異質な寄生虫ですが、広東住血線虫などのように人に感染したというケースはこれまで報告されていません。人に対してのリスクは低いと考えられますが、人には感染しないと確実に証明されたわけではありませんので注意が必要です。
人間が広東住血線虫に感染すると、2週間ほどの潜伏期間の後、幼虫が脊髄から脳に侵入することで発熱や激しい頭痛、嘔吐といった髄膜炎症状が起きるようになります。しかし、広東住血線虫は人間の体内では成虫にはなれず自然に死滅するため、ほとんどの場合は回復します。
ただし、一度で大量の広東住血線虫に感染すると、重篤化して視力障害を起こしたり、最悪の場合は死亡するケースも報告されています。
広東住血線虫を死滅させる薬剤は開発されておらず、感染した場合は諸症状に対する対症療法が主体となります。
一般的には、痛みを和らげるためのステロイド療法や脳圧を上げるためのマンニトール・グリセオールなどの利尿薬による薬物療法が行われ、脳圧の上昇が著しい場合には腰椎穿刺を行って髄液を排出する治療が行われます。
日本では、広東住血線虫は主にカタツムリやナメクジに寄生していることがありますが、寄生しても見た目に明らかな変化が見られるわけではないので、目視で見分けるのは不可能です。普段から以下のことに気をつけるようにしましょう。
カタツムリやナメクジを子供が触ることは決してめずらしいことではありません。接触だけで広東住血線虫に寄生されるケースはあまりありませんが、子供は触れた手を何気なく口に入れてしまうことがあります。
子供にはもしカタツムリなどを触らないよう伝えておき、もし触ってしまった場合は、徹底的に手洗いをするよう教えておきましょう。