記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/3
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
日常生活や会話には何も問題がないのに、勉強に関する特定のことだけが苦手など「学習障害」が疑わしい場合、どのようなところに注目したらよいのでしょうか?また、診断を受けられるのは何歳ぐらいからなのでしょうか?
チェックポイントや診断について、解説します。
学習障害とは、全体的な知能の発達には遅れがないものの、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算する」「推論する」など、主に学習に関する能力に困難が生じる発達障害のことです。その他の発達障害と同様、先天性の疾患であり、環境要因の疾患ではありません。
また、知能全般に困難が生じる知的障害とは別の疾患です。知的障害との見分け方は、以下の項目に着目すると良いでしょう。
学習障害は、ある特定の分野にのみ障害・困難が生じるため、人によって生じる度合いや分野がさまざまです。そのため、障害のある分野以外では得意分野があることもあります。例えば、漢字を書くことは苦手なのに、算数は非常に得意という子もいます。
また、学習障害の原因は完全に解明されてはおらず、従って有効な治療法も確率されていません。個々人の能力に合わせた教育を行うなど、療育という方法で社会の中で自立して生活することを支援する取り組みが行われています。
学習障害のうち、多く見られるものを3つご紹介します。
名称 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
読字障害
(ディスレクシア) |
読みの困難
(識字困難) |
|
書字表出障害
(ディスグラフィア) |
書くことの困難 |
|
算数障害
(ディスカリキュリア) |
算数の困難
(推論の困難も含む) |
|
学習障害のうち、読字障害(ディスレクシア)が最も多いとされています。文字を読むことができない、見た文字を音にできないという障害です。また、読みの障害があると結果的に文字を書くことにも障害が生じることがあるため、読み書き障害とも呼ばれています。
読字障害のある方では、文字がぼやけたり黒いかたまりに見える、図形として見える、など文字の認識の仕方が異なったり、ひらがなやカタカナのように音と文字が一致している場合には理解できても、漢字になると理解できなくなったりします。また、漢字の音読みと訓読みの区別ができない、単語や文節の途中で区切ってしまう不自然な読み方をするなど、国語の授業で困難が生じることがあります。
未就学児は、文字を書いたり計算を行う機会がそれほど多くないため、一般的に小学校に入学後に気づきやすいのが書字表出障害と算数障害です。この2つの障害は、特に学校のテストを受けるのが困難になるため、そこで気づくことも多いようです。
書字表出障害は、文字は読めるけれど書けないという学習障害です。単に自発的に文字が書けないだけでなく、書いてある文字を写し書きすることができない、正確に書いているつもりでも鏡文字になったり、長時間文字を書くことが苦手だったりといった特徴が現れます。
算数障害は、計算能力に困難がある場合だけでなく、推論が苦手な場合も含まれます。数字や計算に用いる記号の概念が理解できないことや、規則性や図形問題など、書き表されていること以外に推論が必要な場合に困難を生じます。また、視覚認知の機能が弱い場合、数字を揃えて書いたりバランスを取ることが苦手で、筆算の桁を揃えて書くのが苦手なことがあります。
それでは、主な学習障害3つについて、それぞれの学習障害が疑われる場合のチェックポイントについてご説明します。
これらの特徴が数回程度でなく、反復し継続して(特に6ヶ月以上)現れる場合、学習障害が疑われます。
学習障害は、単なる勉強嫌いとよく混同されてしまいがちです。しかし、学習障害は単なる勉強嫌いとは違い、本人の努力で解決できるものではありません。そこで、勉強嫌いと学習障害との見分け方についてもポイントをご紹介します。
これらのポイントに着目して判断するのが良いでしょう。特に、本人は努力しているのに、特定の分野のみ習得が遅れている場合、学習障害の可能性が高いです。逆に、明らかな努力不足であり、全体的に成績が悪いという場合は単なる勉強嫌いの可能性が高いです。
しかし、勉強嫌いと学習障害を見分けるのは専門家でないと難しい場合が多いです。あまり自己診断で決めつけず、学習面で大きな困難や障害があるようであれば、専門家に相談しましょう。
学習障害は、文字通り学習に関する障害であるため、一般的には小学校入学以降に症状が発見される場合が多いです。逆に、未就学児の読み・書き・算数の困難は、単に年齢相応の状態であることが多く、様子を見ておいた方が良いとされています。
学習障害の具体的な検査・診断の年齢は設定されていませんが、一般的には小学校入学後、1年生の学年末になってもひらがなの読み書き、拗促音などの認識が困難である場合は、小児科医の診断を受けるのが良いとされています。また、その後であっても学習面で大きな困難が起こり、本人の努力で解決できないと判断される場合には、診断を受けることをおすすめします。
ただし、学習障害は習得困難な分野が中学校以降に現れる場合や、学生時代には目立って表出しなかったものが、大人になってから現れる場合もあります。年齢に関わらず、本人が学習に困難を感じた時点で専門機関に相談するのが良いでしょう。
学習障害が疑われる場合、まずは無料で利用できる専門機関に相談しましょう。本格的に学習障害が疑われる場合は、そこから専門医を紹介してもらうこともできます。
これらの公的機関を利用し、まずは学習障害かどうかの判断を専門家にしてもらうことがおすすめです。
また、初めから医療機関にかかりたい場合は、以下のようなポイントに気をつけて選びましょう。
子供の場合も大人の場合も、学習障害は発達障害の一部ですから、発達障害の専門医のいる医療機関を受診しましょう。
学習障害は、知的障害と違い人によって困難な分野が違うため、見分けが難しい疾患です。しかし、先天性疾患であり、本人の努力や訓練だけでは解決できない疾患でもあります。
逆に言えば、早めに診断を受けることで、本人にとって適切な療育を受けられる可能性も上がります。この記事でご紹介したチェックポイントなどをぜひご参考に、学習障害の疑いが強い場合は専門機関に相談してみましょう。