腟カンジダ治療薬 メンソレータムフレディ®の開発秘話を突撃インタビュー
2018/8/28
腟カンジダの再発治療薬には、塗り薬タイプと錠剤タイプがあります。錠剤タイプの薬の場合、自分で腟の中に薬を挿入しなければなりませんが、うまく入れられるのか、入れたとして正しい位置に入っているのか、不安になりますよね。
今回は、アプリケーター(腟錠を適切な場所に挿入する器具)付きの腟錠を開発・販売しているロート製薬さんにお邪魔して、製品開発までの道のりや製品の特徴、マーケティング活動を伺ってきました。
メンソレータムフレディ®開発のきっかけ
ロート製薬は、もともと「女性ならではの悩み」を解決するための製品作りにかなり力を入れてきました。妊娠検査薬は、弊社が日本で早くから開拓したカテゴリーですし、排卵日検査薬をOTC医薬品にするために20年近く力を尽くしてきました。
腟カンジダのOTC医薬品を開発しようと思ったのは、産婦人科の先生方とお話していく中で必要性を感じたのがきっかけです。
腟カンジダは性病と思っている方が多いのですが、実際はそうではありません。疲れがたまったり、抗生物質を服用したりして、常在菌のバランスが崩れてしまったときに発症してしまう病気なんです。
また、腟カンジダは20代から30代の女性がなりやすい病気なのですが、病気に対するイメージもあり、病院に行くこと自体が恥ずかしいと感じる方が多くいます。さらに、最近は仕事や家事、育児に忙しく働く女性も多く、病院に行きたくても行く時間がとれない方もいらっしゃいます。このため、気づいたときには悪化していて大変なことになっている方もいらっしゃるそうです。このような経緯を知り、腟カンジダのOTC医薬品開発に取り組むことにしました。
腟カンジダにしろ、妊娠にしろ、女性が気軽に相談しづらい悩みですよね。だからこそ、弊社としてそれを解決するお手伝いにいち早く取り組みたいと思ったんです。
腟カンジダ治療薬開発までの道のり
―妊娠検査薬や排卵日検査薬のように、腟カンジダ治療薬の「メンソレータムフレディ®CC」の開発にも苦労があったのでしょうか。
「メンソレータムフレディ®CC」は、医療用医薬品をベースに開発したOTC医薬品(一般用医薬品)です。開発にあたり、医師や厚生労働省からいくつか要望がありました。
ひとつは、腟カンジダを再発した方のみを対象とした再発治療薬として販売することです。初めて腟カンジダになった方は、症状が腟カンジダかどうかを適切に判断できない可能性があります。誤って使うことがないよう、初めて発症した方はOTC医薬品の対象者から除外することにしました。
また、これは腟カンジダの薬に限ったことではないのですが、OTC医薬品なので市販後調査(PMS:Post Marketing Surveillance)の実施も義務付けられています。
ただ、一番大変だったのは、購入前に薬剤師がセルフチェックシートを使って症状などを確認し、腟カンジダの再発かどうかをチェックする仕組みを作ったことかもしれません。
セルフチェックシートは、腟カンジダの疑いがある人が薬局やドラッグストアに来たときに使うものです。このシートで症状をチェックしていただき、1つでも「はい」があったときは治療薬を購入できないようにしました。このような「安全に薬をお使いいただくための仕組み」をしっかり構築したことで、OTC医薬品として販売できたんです。
セルフチェックシートを作成する取り組みは、弊社だけでなく、腟カンジダ治療薬を普及させたいと願う業界全体で取り組んできました。たとえば、薬剤師の方を対象にした商品解説書や臨床試験の結果をまとめた資料を作ったり、腟錠の詳しい使い方と、使用中に起こりやすいトラブルへの対処法などを説明する勉強会を開催したこともあります。
このため、準備から実際の販売までに1年以上かかっています。開発スタート時期から考えると、おそらく5年以上かかっているかもしれません。ただ、承認が下りたらできるだけ早くお客様に届けたい!という思いがあったので、販売準備そのものは少しずつ前倒しで進めていました。
メンソレータムフレディ®の特徴は「使いやすさ」
―他社製品と比べると、「メンソレータムフレディ®」シリーズの特徴はどのようなところにあるのでしょうか。
腟カンジダの成分そのものは、他社と大きく異なるところはありません。ただ、治療中は毎日使っていただくものですし、デリケートな部分に使う、ということもありますので、使い心地のよさは他社のものに負けていないのではないかと思います。
たとえば、塗り薬タイプの「メンソレータムフレディ®CCクリーム」はのびがよく、ベタつかない使い心地にして、治療中でも快適に過ごしていただけるよう工夫しています。また、腟錠タイプの「メンソレータムフレディ®CC」については、腟剤を適切な位置にきちんと挿入できるよう、アプリケーター(的確に腟錠を挿入する器具)に入れた状態のものを販売しています。
他社製品の中で、アプリケーターつきの腟錠はありません。このため、腟錠を挿入するときは、基本的に自分の指で挿入する必要があります。でも、適切な位置に挿入するためには、かなり奥深くにまで挿入しなければなりません。このため、実際に使ったことがある方の話を聞くと、寝ている間に外に出てしまっていたり、おりものと一緒に流れ出てしまったりすることがかなりの頻度で起こっているそうなんです。
こうした課題を解決するために、海外ではアプリケーターが販売されています。弊社ではここにヒントを得て、アプリケーター付きの腟錠を販売することに決めました。
アプリケーターは、タンポンに近いイメージを思い浮かべていただくとよいと思います。筒の中にはすでに腟錠が入っているので、使いたいときは袋を開けてストッパーを外し、左ひざを立てたら、体の力を抜いて、息を吐きながら筒を腟に挿入します。適切な位置(指が膣口にあたるくらいまで)まで挿入したら、棒で腟錠を押し出し、筒を取り出します。腟のまわりを傷つけることはありませんし、使い捨てタイプなので安全面でも心配ありません。
この商品は、試作品を試してくださる女性の意見を参考にしながら、じっくり時間をかけて開発しました。女性の気持ちに寄り添った商品開発をしたい! という弊社の理念がありますから、実際に使う女性の要望に応えたかったのです。
ちなみに、ゴミ袋から透けてもわからないよう、アプリケーターを入れた袋には商品名を記載していません。妊娠検査薬や排卵日検査薬とも共通する理由なんですが、集合住宅に住んでいる方から「半透明のゴミ袋に入れて捨てるときに透けて見えてしまうのが恥ずかしい」という声が寄せられたのを受け、袋に商品名を載せないことにしました。
忙しく働く女性のために
―「メンソレータムフレディ®」シリーズの認知度を高めるためのマーケティング活動として、どんなことをされているのでしょうか。
発売直後(2009年春)は認知度を高めるために、ドラッグストアの方と協力してポスターを作ったことはありますが、最近はこういった活動は特にしていません。
商品の売り上げは、季節を問わずほぼ横ばいなのですが、Webサイトのアクセス数は多いです。最近はスマートフォンで検索して情報収集することがほとんどですから、おそらく「メンソレータムフレディ®」シリーズも、検索を通じて認知されているのではないかと思います。その意味では、潜在的なニーズは高まっていると言えるかもしれません。
先ほども申し上げましたが、腟カンジダは20代~30代の女性に多くみられる病気です。この年代の方は仕事を持っていたり、子育てで慌しい日々を過ごしていることが多いため、体調がおかしくても病院に行く時間が取れないことも多いと聞きます。こうした方々に「メンソレータムフレディ®」のことを知っていただき、困ったときの強い味方にしていただけたら、と考えています。
もともと、製品名である「フレディ」という名前には、「フレーフレー、レディ」と、頑張る女性を応援する思いをこめてつけています。日々慌しく働く女性に、ぜひ「メンソレータムフレディ®」を使っていただきたいと思います。
―「メンソレータムフレディ®」の認知度を高める上で、medicommi がお役に立てる部分がありましたら、ぜひ協力させてください。本日はありがとうございました。
▼ロート製薬 メンソレータムフレディ®
https://jp.rohto.com/flady/
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。