記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
顔の両側に左右対称のシミができる肝斑は、30~40代の女性に多い肌トラブルです。
もし、病院に行かずに肝斑を治療できる薬があるとしたら、挑戦してみたいですよね。
今回は薬局で買える肝斑の薬「トランシーノ®︎」について、開発の経緯や購入に当たっての処方箋の必要性、ピルとの併用の可否などを解説していきます。
まずは肝斑の改善薬「トランシーノ®︎」がどのような薬なのか、その効果や開発に至った経緯をご説明していきます。
トランシーノ®︎は、もともと皮膚科医が処方するトラネキサム酸の内服薬を開発・製造していた、第一三共ヘルスケアという製薬会社によって開発された肝斑改善薬です。第一三共ヘルスケアは取引のある皮膚科医に聞き取りを行い、自社が開発するトラネキサム酸が確かに肝斑を改善するという確信を得て、薬の開発を決定しました。
その後、自社のトラネキサム酸開発のノウハウを生かして肝斑改善薬の開発に取り組み、膨大な臨床試験を経て、製剤の効果や安定性・安全性などの立証に成功します。
こうして2007年、当時はほとんど知られていなかった肝斑を治療する初の肝斑改善薬として、トランシーノ®︎は誕生したのです。
トランシーノ®︎は、ドラッグストアで買うことのできるいわゆるOTC医薬品です。OTCとは「Over The Counter」の略で、医師に処方してもらう薬に近い効果がありながら、医師の処方箋なしでドラッグストアで買うことのできる一般用医薬品を指します。
トランシーノ®︎の場合、もともとは医師の処方箋によってのみ購入できる薬でしたが、近年になってからOTC医薬品に変更されました。このためトランシーノ®︎は、皮膚科医などの処方箋がなくても、ドラッグストアで薬剤師の説明を受ければ購入可能なのです。
高い安全性が認められていて、かつ医師の処方箋なしに購入できる肝斑改善薬トランシーノ®︎は、肝斑に悩む女性の強い味方といえるでしょう。
ピル服用中は血栓ができるリスクが上がるため、トラネキサム酸を含むトランシーノ®︎は一緒に服用すべきではない、という話があります。
たしかに、トランシーノ®︎に含まれるトラネキサム酸には、吐き気や食欲不振など消化器系へのダメージの他、血が固まり血栓ができやすくなる副作用も報告されています。しかしながら、ピルとトランシーノ®︎の併用によって血栓ができるケースは非常にまれであり、ピルによって血栓の副作用が起こるのは5万人に1人の割合といわれています。
基本的には、以下の条件を満たす方であればピル服用中にトランシーノ®︎を飲んでも問題ないと考えられています。
ただし、病院・医師によっては併用の危険性に考慮し、ピル服用中にトランシーノ®︎とほぼ同成分のトランサミンの処方することを避けているところもあります。ピルを服用中で、トラネキサム酸を含むトランシーノ®︎の服用について不安がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
肝斑改善効果が証明されており、かつ医師の処方箋なしでドラッグストアで買えるOTC医薬品「トランシーノ®︎」は、とても便利な肝斑改善薬です。しかし、医師の処方箋がなく手軽に入手できる分、ピルや他の薬との飲み合わせにリスクを感じることもあるでしょう。過去に血栓による既往歴がなければ、基本的にはピルと併用しても問題ありませんが、心配なら服用開始前に医師または薬剤師に相談してください。