記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
なんとなく胃もたれが続く、むかむかする、みぞおちが痛む、などの症状が出ている場合、機能性ディスペプシアと呼ばれる疾患である可能性があります。
機能性ディスペプシアには、どんな自覚症状があるのか、また、診断基準や特効薬などについても解説します。
「ディスペプシア」とは、胃の痛みや不快感などの症状をさす医学用語です。機能性ディスペプシアは、以下のように定義されています。
「症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患」
(日本消化器病学会)
つまり、症状の原因となるような明らかな病理学的異常や疾患が見つからないのにも関わらず、慢性的にみぞおちの痛みや胃もたれ・不快感などの症状を呈している状態のことです。内視鏡検査などで調べても胃がんや胃潰瘍などのはっきりとした病気は見つからないのが特徴です。
以前は慢性胃炎と診断されることが多かった機能性ディスペプシアですが、近年、胃に炎症がなくても症状が出ていること、逆に胃に炎症があってもディスペプシア症状を呈さないこともあることから、胃炎とは関連性がないことがわかっています。
自覚症状としては、以下の2種類に大別されます。
こうした症状が週に数回、また3ヶ月以上続いているようであれば、機能性ディスペプシアである可能性が高いといえます。ただし、胃の不快感は単なる機能性ディスペプシアだけではなく、炎症や腫瘍などの他の疾患が隠れている場合がありますので、決して自己診断はせず、医師の判断を仰ぎましょう。
機能性ディスペプシアになる原因は、主に3つのことが原因と考えられています。
機能性ディスペプシアの主な原因は、胃の動きが弱まっていたり、知覚過敏が起こったりして、食べたものを上手く送れないことや、少しの刺激で大きな影響が生じてしまうことです。こうした機能不全を引き起こす根本的な原因は解明されていませんが、不規則な生活やストレス、ピロリ菌などが影響しているのではないかといわれています。
機能性ディスペプシアかどうかの診断基準は、「胃の痛みや不快感などの症状が続いていること」「内科系の疾患が見つからないこと」の2つから判断されます。
これらの診断基準を満たしている場合、機能性ディスペプシアと診断されます。実際の医療現場では、腹部症状がいつからどの程度起こっているか、症状と食事の関係はあるか、体重減少はあるかなどの質問もしながら総合的に判断することになります。
機能性ディスペプシアの治療法は、主に食後に起こる症状と、食前・食間を問わず起こる症状とで分けられます。
胃の働きが弱まっている場合は、消化管運動改善薬が用いられます。日本では2013年6月にアコチアミドという薬剤が発売され、世界で初めて機能性ディスペプシアに対して適応を持つ薬として注目されています。
脳が過敏になっている状態を改善するのは比較的難しいのですが、精神的な原因によるものであれば抗不安薬や抗鬱薬が効果を発揮する可能性があります。また、漢方薬に粘膜の知覚過敏を抑えてくれる働きをするものもあります。
不規則な生活や食事の内容が偏っている場合は、生活習慣や食生活の改善で機能性ディスペプシアの症状が改善されることがあります。具体的には、規則正しい生活と十分な睡眠をとること、脂っぽい食事や香辛料の多い食事は控えることが挙げられます。
機能性ディスペプシアは、胃や十二指腸など、消化管の働きが弱まったり、刺激に過敏に反応したりすることが原因で起こることが多い症状です。
直接的な原因がわかっていないため、特効薬的な治療法はありませんが、改善薬や生活習慣の見直しなどで消化管の負担を減らし、症状を軽減することはできます。長く続く胃腸の不調があるなら、ぜひ一度医師に相談してみましょう。
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