記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/5/17
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
定期的に、あるいは突然に女性を襲ってくる左胸の痛み。心臓病なのではないかと不安にもなりますが、どのような原因が考えられるのでしょうか。今回は、女性にズキズキとした左胸の痛みがある場合に考えられる代表的な疾患3つと、その他の可能性についてご紹介していきます。
左胸のあたりがズキズキと痛み、しばらく経っても改善がみられなかったり、痛みが強くなっている場合、心筋梗塞や気胸(様々な原因で、肺に穴が空いてしまう病気)といった命に関わる病気を発症している恐れがあります。このため、まずは病院で検査を受け、このような病気を発症していないかどうかを確認することが大切です。
検査の結果、心筋梗塞や気胸といった緊急の対応を要する病気を発症していないことがわかった場合、考えられる病気として以下のようなものが考えられます。
心臓神経症は、左胸の痛みとともに以下のような症状を表すもので、特に子育てを終えて時間ができた中年以上の女性に多いと言われている疾患です。
上記のような症状は、一度発症すると1日中続く場合もあれば、数秒~数分で収まることもありますが、いずれも1人で安静にしているときに現れるのが特徴です。発症には精神状態が大きく関係していると考えられており、ストレスや心身の過労、心臓病になるのではないかという極度の不安が原因となって心臓神経症を発症するとされています。
発症しやすい人の特徴としては、慢性的にストレスを抱えている人や、ちょっとしたことでも不安を感じやすい人、また不安のために不眠症を起こしている人などが挙げられます。
左胸の特定の範囲だけが、ズキズキ、または刺すように強く痛み、呼吸や体位を変えることで変化するようなら、胸痛症候群の可能性が高いです。
胸痛症候群は原因不明の胸の痛み全般を指す言葉で、思春期・成長期にあたる14~20歳までの若い女性に、特に多く見られる疾患です。
胸痛症候群による胸の痛みの出方や特徴としては以下が挙げられ、胸痛の原因となる他の要素に当てはまらないと判断された場合に診断されます。
原因不明の胸痛を胸痛症候群と診断するため、後日になって別の疾患や骨折、筋肉痛などが胸痛の原因として判明することもあると言います。なお、一般的に10代・20代の若い世代の女性の胸痛が心臓病である可能性は非常に低く、肋骨や筋肉など、胸の外側に原因があるパターンが多いと考えられています。
左胸のうち、特に乳首の周辺など乳房や、脇の下のリンパ節周辺にズキズキとした痛みがある場合は、乳腺症によって痛みが引き起こされている可能性があります。乳腺症によって現れる胸の痛みや、その他の特徴的な症状としては以下が挙げられます。
乳腺症は、特に30~40代の女性に発症が多いとされる症状で、病気や疾患というよりは「年齢に伴うホルモンバランスの変化で生じる乳房の状態変化」と表現されるものです。
乳房の中にあり、妊娠・出産の際に母乳をつくる役割をもっている乳腺は、月経周期で変動する女性ホルモンの量やバランスによって、状態が変わる性質を持っています。この「女性ホルモンに対する乳腺の反応が強く起こる」と、一時的にしこりや痛みを伴うほど乳腺が発達して、乳腺症を発症すると考えられています。
なお、しこりが生じるため乳がんを心配する人もいますが、乳腺症から乳がんに発展することは基本的にはありませんので、安心してくださいね。
ここまでにご紹介した3つの原因のほかに、女性の左胸の痛みの原因として考えられるものとして、肋間神経痛や肋骨骨折などがあります。
まず肋間神経痛は、肋骨の間にある肋間神経が刺されるように強く痛む、神経痛の一種です。特に、深呼吸や伸び、咳やくしゃみなどをして肋骨が動いたときに、突発的に発症することが多いといわれています。
一方、肋骨骨折はその名の通り、胸を守っている12本の肋骨のうち1本、あるいは何本かが折れていたり、ひびが入っている状態です。肋骨が折れる原因はさまざまですが、肋骨は他の骨に比べて薄くて細いため、事故や転倒、人によってはくしゃみなどでも折れることがあります。
女性の左胸が痛む場合に考えられる疾患として、心臓神経症、胸痛症候群、乳腺症と、肋骨神経痛と肋骨骨折をご紹介しました。それぞれ特徴的な症状を発しますが、いずれも心臓に異常があるのではなく、胸の外側の骨・筋肉や乳腺、精神が原因で発症するものです。気になる、または頻発する左胸の痛みがある場合は、一度病院で診てもらうのが良いでしょう。深刻な心臓病などではないこともありますので、気軽に訪ねてみてください。