記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/27
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
病院でもらった薬を飲み切らずに溜めてしまったり、似たような病気で別の病院に行って薬をもらいすぎてしまったりすることはありませんか。今回は、薬のもらいすぎによる弊害、「ポリファーマシー」について、言葉の定義や原因、防止のための取り組みなどを解説します。
その人にとって必要以上の量、または不必要な量・種類の薬が処方された状態のことを「ポリファーマシー」といいます。ポリファーマシーと判断される薬の種類・量に明確な定義はありませんが、一般的には4~6剤以上の薬が処方されているとポリファーマシーと定義されます。
ポリファーマシーが起こるケースとして、以下のような状況が考えられます。
医師は患者からの申告がない限り、いま診療している患者さんが訴えている症状に対して有効な薬を処方します。このため、他の診療科と薬が重複している場合や、患者さん本人が薬の用法・用量を正しく守っていないなど、医師が知ること自体難しい事情がある場合にポリファーマシーが発生することが多いのです。
このように、ポリファーマシーは医師と患者のコミュニケーション不足や、薬の履歴の管理・共有不足といったことが原因で起こると考えられています。
ポリファーマシーを防ぐために、以下のような取り組みが行われています。
高齢者は加齢とともに複数の疾患を抱えやすいため、若者に比べて処方される薬の量・種類が多くなります。また、体調によって効き目が変わるため、薬の効き目が弱すぎる、もしくは強すぎることがあります。また、自分で薬を管理できなくなった結果、ポリファーマシーが起きてしまうといったリスクもあります。
ちなみに、日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を策定しています。ガイドラインでは、特に高齢者に処方されやすい薬について、処方が推奨されるものや中止すべきもの、代替薬とその根拠を示し、ポリファーマシーを減らすための方法を提示しています。
このように、適性な減薬を行った医療機関を評価する仕組みを作ることで、医療業界に対し減薬を促し、ポリファーマシーを防止しているのです。
ポリファーマシーを防ぐために個人でもできることがあります。それは「おくすり手帳」の活用です。
「おくすり手帳」とは、持ち主の薬の履歴や過去に副作用を起こしたことのある薬の有無などが記録されている手帳です。処方薬を受け取るときに薬剤師に渡して内容を確認してもらうことで、これから処方する薬で副作用が起こってしまうのを未然に防いだり、ポリファーマシーの予防につながります。
「おくすり手帳」はこれまで紙のものが主流でしたが、最近ではクラウド上にデータを保管できるスマートフォンアプリも登場しています。管理しやすい方法で、「おくすり手帳」を活用していきましょう。
ポリファーマシーは複数の診療科に通っている場合が多い高齢者に、特に多くみられる現象です。近年、医療の世界でも重要な課題と位置づけており、薬の処方を減らす取り組みがされています。ただ、「おくすり手帳」を活用することで自分で自分の身を守ることもできます。もし、「おくすり手帳」をお持ちでないようでしたら、今度処方薬をもらうときに「おくすり手帳をいただけますか」と伝えるか、使いやすいスマートフォンアプリをダウンロードしてみてください。