記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
野球や柔道、ラグビーといった部活に取り組む10代の子供が肩の痛みを訴えるとき、将来のことを考えると心配になりますよね。今回は、このような痛みを訴える原因として考えられる症状を中心にご紹介します。
野球をしている10代の子にズキズキとした肩の痛みがあるとき、「野球肩」と呼ばれる肩障害である可能性があります。
「野球肩」という名前の病気があるのではなく、インピジメント症候群、リトルリーグショルダー(上腕骨骨端線障害)、関節唇損傷、動揺肩など、肩に関する病気を指す総称です。ものを投げる動作によって、肩関節を構成する腱や筋肉などが障害を受けてしまうのが原因で、成長期の子どもは特にリトルリーグショルダー(上腕骨骨端線障害)による損傷のケースが多くなります。上腕骨の成長軟骨が、投球動作によって損傷されることが原因です。ピッチャーやキャッチャーはボールを投げる機会が多いため、このような痛みが出る可能性が高くなります。
柔道やラグビーなど、肩を強く打ち付けるスポーツをしている場合、「肩鎖関節脱臼」が疑われます。肩の外側を強く打ち付けた際、鎖骨と肩甲骨の間にある肩鎖関節が外れてしまうのです。その結果、肩鎖関節に付いている靭帯(肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯)や筋肉(三角筋・僧帽筋)が損傷を受けることもあります。
関節が外れる方向や外れた程度によって、肩鎖関節脱臼は捻挫・亜脱臼・脱臼に分類されます。肩鎖靭帯を部分的に傷めただけのⅠ型(捻挫)、肩鎖靭帯が断裂して烏口鎖骨靱帯が部分的に傷んだⅡ型(亜脱臼)、肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂するⅢ型(脱臼)、鎖骨の端が後ろにずれて脱臼し、肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯ともに断裂しているⅣ型(後方脱臼)、Ⅲ型の程度が強くなったⅤ型(高度脱臼)、鎖骨の端が下にずれるⅥ型(下方脱臼)があります。いずれにせよ、安静時、患部を押したとき、運動時に激しい痛みと腫れがみられます。
過去に脱臼を含めた肩のケガがあった場合、脱臼がクセになってしまう「反復性肩関節脱臼」の可能性もでてきます。日常生活の中でも、肩が抜けそうな嫌な感じがあり、腕を挙げにくくなるのです。脱臼した瞬間には強い痛みが生じたり、音が出たりすることもあります。また、肩の形状が左右で違ってしまうこともあります。
反復性肩関節脱臼の場合、上腕骨の受け皿についている靭帯がはがれる「バンカート損傷」というものが生じています。普段の肩は靭帯が緊張しているため、肩が受け皿からこぼれおちて脱臼することはありませんが、「バンカート損傷」になると、靭帯が緊張しなくなってしまいます。スポーツの障害、あるいは日常生活にも支障がある場合には、手術が必要になることもあるでしょう。
野球をしている10代の子にズキズキとした肩の痛みがあるとき、「野球肩」と呼ばれる肩障害である可能性が、ラグビーや柔道の選手には「肩鎖関節脱臼」の可能性、脱臼経験者には「反復性肩関節脱臼」の可能性があります。症状や過去のスポーツ歴だけでこれらの症状が出ているとは限りませんが、痛みが長引くと物事に集中しづらくなるので、痛みや不具合があるときはなるべく早く整形外科で診てもらいましょう。