記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
血液を造る機能に異常が起きることから「血液のがん」とも表現される白血病は、患者の年齢・性別を問わず発症する、難治性の病気です。
今回は、白血病の治療法の1つである造血幹細胞移植(ぞうけつかんさいぼういしょく)とは何か、特徴や治療内容、合併症のリスクなどとあわせて解説していきます。
造血幹細胞は、血液を構成する成分のうち赤血球・白血球・血小板など「血球(けっきゅう)」と呼ばれる細胞のもととなるもののことです。その多くは、骨の中心部にあるスポンジ状の組織「骨髄(こつずい)」にあり、自己複製をしながらたえず血球への成長・分化を行い、血液に必要な血球を作り出しています。
また、造血幹細胞は、骨髄だけでなく、妊娠中のお母さんと赤ちゃんをつなぐへその緒を流れる血液「さい帯血」にも存在しています。
造血幹細胞を使った治療とは、一般的には病気や治療で造血幹細胞を損傷した人が、健康な人から採取された造血幹細胞を移植してもらうことを指します。主に白血病や、そのほかの組織にがんなどの病気ができたとき、またその治療のために骨髄中の造血幹細胞が損傷した場合に、この造血幹細胞移植による治療が検討されます。
病気そのもの、または抗がん剤や放射線による病気治療によって造血幹細胞が損傷を受けると、正常な造血が阻害されて以下のような症状が現れます。
このような造血障害に対し、造血幹細胞移植による治療は非常に効果的なのです。
白血病治療のための造血幹細胞移植は、白血病細胞を死滅させ、患者の造血幹細胞とドナーから受け取った新しい造血幹細胞を入れ替えるイメージで行われます。
その方法は、まず事前に抗がん剤と放射線を使って、患者の白血病細胞と造血幹細胞を可能な限り死滅させます。十分に細胞を死滅させて患者の免疫反応を抑えたら無菌室に移動し、ドナーから提供を受けた健康な造血幹細胞を点滴で移植していきます。
移植された新しい造血幹細胞は、早ければ患者の体に2~3週間でなじみ、成長・分化して血液を造り始めます。これにより、患者は正常な造血機能を取り戻します。
ドナー由来の造血幹細胞によってつくられた白血球は、自身が持つ免疫作用で患者の体内にのこった白血病細胞を攻撃して死滅させ、白血病を治療してくれるのです。
造血幹細胞のドナーは、以下いずれかの方法で探すことができます。
白血病治療のための造血幹細胞移植では、主に移植前の処置により、通常の抗がん剤・放射線治療で生じるような吐き気、嘔吐、抜毛などの副作用や合併症が生じます。造血幹細胞移植の前の処置に使用される抗がん剤の量は通常の抗がん剤治療よりも多く、患者の免疫機能も低くなっているため、副作用・合併症は長く、重くなります。
また、造血幹細胞移植に伴う特有の合併症としてはGVHD、移植片対宿主病(いしょくへんたいしゅくしゅびょう)が挙げられます。
移植片対宿主病は、ドナーの造血幹細胞が血液とともに作り出したリンパ球が、患者が持つ正常な細胞を攻撃してしまう免疫作用で生じる、造血幹細胞移植の合併症です。合併症としてこの病気を発症するかどうかは、患者とドナーのヒト白血球抗原の組み合わせの違いに、大きく関係するとされています。
このため、移植前には患者への十分な検査と移植片対宿主病への予防措置が取られますが、発症した場合は病変部位の生検を行い、適切な治療法を模索していくことになります。
人間の脊髄やさい帯血には、血液を構成する重要な細胞である赤血球・白血球・血小板などを作る「造血幹細胞」が存在しています。しかし白血病、またはその治療のために造血幹細胞が障害を受けると、造血機能が低下して貧血や免疫低下など、深刻な影響が出てきます。造血幹細胞移植は、患者に健康な人から採取した造血幹細胞を点滴移植することで、白血病細胞の死滅と造血機能の回復を目指します。