記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/4/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
血液のがんである白血病を発症すると、疲れや発熱、体重減少といった症状がみられます。この白血病には、実はいくつかタイプがあることをご存知でしょうか。この記事では、進行が遅いといわれている慢性骨髄性白血病について、症状の特徴や原因、治療法を解説していきます。
血液は赤血球、白血球、血小板など、さまざまな細胞によって構成されています。
血液の細胞は骨髄でつくられます。骨髄は、ほとんどの骨の中心に存在しており、多くの血管が通っています。骨髄には、赤色骨髄と黄色骨髄の2種類があり、赤色骨髄には、白血球、赤血球、血小板になる能力を持つ血液幹細胞が含まれています。一方、黄色骨髄は大部分が脂肪でできています。
正常な状態の骨髄は、血液の未熟な細胞である造血幹細胞が作られ、これが増殖しながら分化していくことで成熟した血液細胞に成長していきます。慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞に異常が起こってがん化した血液細胞が無制限に増殖することで発症する血液のがんで、血液のがんの中でも比較的ゆっくり進行する種類の1つです。通常、中年期以降に生じ、小児に生じることはまれです。
慢性骨髄性白血病は、白血球ががん化して白血病細胞となってもほぼ正常の白血球と同じ働きをすることや、白血病そのものがゆっくりと進行していくため、初期の段階には目立った症状がみられないことが特徴です。そのため、たまたま受けた血液検査によって白血球数や血小板数の増加によって発見されることが大半を占めます。
しかし、病気が進んでいくと極度の疲労感、全身倦怠感、発熱、寝汗、原因不明の体重減少、左側肋骨より下の疼痛または膨満感などの症状がみられることがあります。しかし、これらは慢性骨髄性白血病以外でも起こりうる症状なので、なかなか気づけないという特徴があります。
慢性骨髄性白血病を診断された方の95%以上でフィラデルフィア(Ph)染色体という異常な染色体が見つかっており、これが慢性骨髄性白血病の原因であると考えられています。
フィラデルフィア染色体とは、ひとつの染色体におけるDNAの一部が別の染色体に移動することによって起こる染色体の変化のことを言います。これによって、骨髄中ではチロシンキナーゼと呼ばれる酵素の働きが高まり、白血球となる幹細胞が過剰に作られ、慢性骨髄性白血病となります。
フィラデルフィア染色体となる原因として放射線、ベンゼンやトルエンなどの化学物質、ウイルスなどが挙げられているものの、その仕組みについては完全には解明されていないのが現状です。また、慢性骨髄性白血病には遺伝性はないと考えられています。
慢性骨髄性白血病の検査は主に血液検査、骨髄検査の2つの検査で診断します。
血液検査では、血液中の赤血球、白血球、血小板の数や白血球の分類、遺伝子や染色体を調べます。そして骨髄検査では、腸骨に細い針を刺し、骨の中にある骨髄液を注射器で吸引し、採取をして調べます。局所麻酔を用いて検査を行いますが、骨髄を吸引する際にはまだ局所麻酔が効いておらず、鈍い痛みが一時的に生じることもあります。骨髄吸引ができなかった場合は太い針を使用して骨髄生検を行うこともあります。
そのほか、問診で既往歴などを聞き取ることもあります。こうした検査を経て、慢性骨髄性白血病であるかどうかの診断がなされます。
慢性骨髄性白血病は進行がゆっくりなこと、白血病細胞になっても正常な細胞と同じ働きができることから、病気を発症していることに気づきにくいのが特徴です。進行すると高熱や寝汗、体重減少などの症状がみられるものの、これらの症状は白血病以外にも出てくるため、たまたま血液検査を受けたら見つかった、という事例が大半を占めています。もし慢性骨髄性白血病が見つかったら、進行が遅いからと放置せず、すぐに専門的な治療を受けましょう。