記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/4/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
最近、尿漏れなどの排尿障害に悩んでいる女性が増えてきています。今回は、排尿障害の原因となる「過活動膀胱(かかつどうぼうこう)」や「腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)」「骨盤臓器脱(性器脱)」についてまとめました。また、尿漏れなどの治療法や予防法などもあわせてご紹介します。
「過活動膀胱」という病気をご存知でしょうか。過活動膀胱になると、突然強い尿意が起こっておしっこが我慢できなくなる「尿意切迫感(にょういせっぱくかん)」に襲われます。切迫性尿失禁(尿漏れ)や頻尿といった自覚症状がある方も、過活動膀胱の可能性が高いです。
これらの症状がある場合は、一度泌尿器科などに相談してみると良いでしょう。診察時には尿検査を行い、医師が症状などを聞きます。症状によっては内診や尿流量検査、エコー検査なども行う場合があります。また、排尿日誌(摂取水分量、排尿時間、尿量、尿漏れの有無など)をつけ、提出することもあります。
検査の結果「過活動膀胱」と診断された場合、以下のような治療を行います。
症状を軽くする対症療法です。
尿道や膀胱を支えている骨盤底筋や膀胱を鍛え、症状を軽くします。「骨盤底筋体操」や「膀胱訓練」などの体操があります。
電気・磁気で骨盤底筋に刺激を与え、骨盤底筋の収縮力を強めます。尿道や膀胱のはたらきも調整できると言われています。
腹圧性尿失禁とは尿漏れのことで、最近女性に増えている症状です。ドラッグストアで「尿漏れ用パンツ」といった大人用のおしめを見たことがある方もいるかもしれません。
クシャミや咳をしたり、重い物を持ち上げたりする時、お腹に力が入っても、普通は尿が漏れません。それは骨盤底筋が尿道を支え、必要に応じて尿道を閉じているからです。
骨盤底筋が弱くなったり、傷がついたりすると、お腹に力が入り、腹圧がかかるだけで尿漏れを起こします。骨盤底筋が尿道を上手に締められず、結果的におしっこが漏れてしまうのです。これが腹圧性尿失禁です。
これらの動作を行うとおしっこが漏れる方は、腹圧性尿失禁の可能性があります。
病院での問診・検査・パッドテストなどで腹圧性尿失禁と診断された場合、「骨盤底筋体操」を中心とした治療をします。「骨盤底筋体操」とはその名の通り、骨盤底筋を鍛え、尿道や肛門を自分で締める力、締めたり緩めたりのコントロール力を身につける体操で、過活動膀胱にも効果的です。内臓が下がるのを防ぐ効果もあります。
腹圧性尿失禁の治療法としては「骨盤底筋体操」が効果的ですが、それでも症状が落ち着かない場合は投薬治療や手術、コラーゲン注入による尿道の筋肉強化といった治療も行います。
最初は締めた状態を3秒ほどキープするだけで良いですが、徐々に5秒、10秒……と時間を延ばしていきます。全部取り組んでも5分くらいの体操ですが、回数を増やし、10~20分ぐらい取り組んでみてください。
あお向けに寝て、両膝を立てた状態で行います。慣れてきたらイスに座っているときや立っているときでも出来るようになります。通勤中や家事をしている時などに、こまめにすると効果的です。
女性の排尿トラブルは過活動膀胱や腹圧性尿失禁だけではありません。「骨盤臓器脱」あるいは「性器脱」と呼ばれる病気も原因となります。
「骨盤臓器脱」もしくは「性器脱」とは、子宮や膀胱、直腸といった臓器(骨盤臓器)が下降し、腟の入り口から出てきてしまう状態です。
正常な状態では、骨盤が肛門筋肉や子宮や膀胱、直腸を支えています。しかし、妊娠や出産で肛門筋肉や神経などが傷つくと、骨盤が臓器を支えきれなくなり、腟の入り口から飛び出てしまうのです。これが骨盤臓器脱(性器脱)です。
骨盤臓器脱(性器脱)になると、尿漏れなども起こりますし、出てきた臓器を手で戻さないと排尿・排便がしにくいこともあります。
症状が軽度であれば、先にご紹介した骨盤底筋体操を行うだけで症状が改善する可能性があります。
リングペッサリーという器具を腟に挿入し、骨盤臓器が落ちないようにします。しかしリングペッサリーの定期チェック・交換が必要ですので、通院が必要です。
根本治療としては手術で腟壁を縫って縮め、臓器が落ちてこないようにします。しかし、上記の方法では再発率が高いため、時には子宮摘出も実施します。
最近はポリプロピレンメッシュシートを使用するTVM手術が多くなっています。例えば直腸が腟壁を押して外に出てきてしまう場合、腟壁と直腸の間に、直腸をブロックするポリプロピレンメッシュシートを挿入します。
経過が順調ならば手術後3~5日程度で退院できる手術ですが、退院後1カ月ほどは重い物を持たない、踏ん張らないなど、お腹に力を入れないよう気をつけて過ごします。
では、排尿障害の予防や、症状の軽減のためにはどういったことに気をつければ良いのでしょうか。
尿漏れには「骨盤底筋体操」が効果的です。この体操は根気よく継続することで効果を得られますので、すぐに効果を実感できなくてもあきらめずに続けてくださいね。尿漏れも骨盤臓器脱(性器脱)も、初期段階の方が回復の見込みがあります。症状が出ている方は早めに受診しましょう。