抗生物質と抗菌薬の違いは?服用中に起こりうる副作用は?

2019/5/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

感染症などにかかった際には、抗生物質がよく処方されます。しかし、抗生物質といわれても、「実際はどのような薬かを正しく理解していない」という方もいらっしゃると思います。また、抗生物質と似た言葉に「抗菌薬」があり、これらの違いに疑問を持ったことがある方もいるはずです。今回は抗生物質の概要や副作用、抗菌薬との違いなどをご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

抗生物質とは

抗生物質の「抗生」とは、生命に拮抗する(殺す)という意味を持ちます。つまり、細菌などの微生物の生命と拮抗する物質のことを、抗生物質と言うのです。現在は50種類ほどの抗生物質が使われており、β-ラクタム系、テトラサイクリン系などに分類されています。

なお、抗生物質は細菌を殺す効果はありますが、ウイルスには効果がありません。この理由は、そもそもとして抗生物質はウイルスを殺す薬ではないからです。あくまでウイルスを殺す効果があるのは「抗ウイルス薬」なので、これらを混同しないようにしましょう。

抗菌薬との違いは?

一般的に抗生物質と抗菌薬は同じような意味で使われますが、これらは異なる薬のことを指しています。合成抗菌薬の意味も含めて、以下にこれらの違いをまとめておきます。

抗菌薬
細菌を抑制したり、殺したりする薬
抗生物質
抗菌薬のうち、生き物(細菌や真菌など)から作られる薬
合成抗菌薬
抗菌薬のうち、科学的に合成されて作られる薬

このようにまずは抗菌薬があり、この中に抗生物質と合成抗菌薬があるのです。なお、日常生活ではこれらを区別しなくても、問題はないと言えます。また、当メディア「medicomi」では分かりやすさの観点から、抗菌薬に区分されるものも抗生物質と記載しています。

抗生物質の服用で起こりうる副作用は?

抗生物質の主な副作用には、胃のムカつき、吐き気、下痢、便秘、腹痛、消化不良といった胃腸症状があります。この理由は抗生物質の成分により、胃粘膜が傷ついたり、胃酸の働きを強めたりするからです。特に、空腹時は副作用が出やすいので気をつけてください。

また、皮膚のかゆみ、湿疹、じんま疹などの皮膚症状もよくみられます。こちらの理由は、抗生物質を使用すると皮膚が乾きやすくなってしまうからです。なお、爪などで刺激するとかゆみを増強する物質が集まってしまうので、かゆくても我慢するように注意しましょう。

他にはどのような副作用があるの?

頻度は多くはありませんが、抗生物質には以下のような副作用も報告されています。

全身倦怠感
だるさ、疲れやすさ、筋肉痛など
肝障害・腎障害
だるさ、むくみ、発熱、黄疸など
心臓・呼吸障害
動悸、息切れ、低血圧、呼吸困難など
精神神経障害
ふらつき、めまい、眠気など
血液障害
貧血、溶血、血小板減少など

なお、これらの副作用は実際に使用する薬によっても異なりますし、症状の現れ方、重症度もさまざまとなっています。また、必ずしも全ての人に現れるわけではありません。しかし、抗生物質にはこのような副作用があることを、きちんと理解しておきましょう。

副作用かな、と思う症状がみられた場合は?

抗生物質を服用したことで、胃腸症状、皮膚症状、全身倦怠感などの異変がみられたら、服用を中断してすぐに医師や薬剤師に相談してください。そのまま我慢し続けてしまうと、重症化する恐れがあるほか、副作用への対応も遅れてしまいます。そのため、些細な症状であっても、不安や違和感があれば早めに相談するように心がけましょう。

胃腸症状が現れたらどうすればいいの?

胃のムカつき、胃もたれ、吐き気などは、よくみられる副作用です。重症の場合はすぐに医師へ相談すべきですが、軽度の場合は、胃を守るための工夫をするのがおすすめです。たとえば「食後に抗生物質を飲む」、「牛乳などの飲み物にする」などが良いかと思います。

また、下痢や消化不良などを起こす場合は、抗生物質によって腸内の良い細菌が殺されている可能性があります。そのため、「消化の負担が少ない食事にする」、「ヨーグルトなどの乳酸菌飲料を飲む」などをして、できる限り腸内を良い状態に保つ必要があります。

おわりに:抗生物質を処方されたら、きちんと飲みきるのが重要!

近年、抗生物質の耐性菌が問題となっていますが、これは不必要な抗生物質を使用していたり、処方された抗生物質を飲まなかったりすることで起こります。「何のために抗生物質を飲むのか」をきちんと確認し、処方された抗生物質は必ず飲みきるようにしてください。

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