記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/5/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
喘息のときに処方される吸入ステロイド薬。「ステロイド」と聞くと、ずっと使っていると副作用が起こるんじゃないか…と不安かもしれません。でも、本当にひどい副作用が起きてしまうのでしょうか。この記事で解説したいと思います。
吸入ステロイド薬とは、主に喘息治療で使われる薬です。
かつて、喘息の原因は気管支平滑筋の攣縮(れんしゅく:けいれん性の収縮)による可逆性の気流閉塞と考えられていました。しかし1980 年代以降、研究の進歩によって、喘息が好酸球や T リンパ球などが関与する気道の慢性炎症性疾患であることが明らかになり、ここから吸入ステロイド薬が使われるようになりました。今日、喘息による死亡者が著しく減少している背景には、吸入ステロイド薬が関係していると言われています。
ステロイド薬は強力な抗炎症作用があり、気道の炎症を抑えることができます。また、吸入ステロイド薬は炎症の改善と並行して呼吸機能や臨床症状、気道過敏性を改善させることも期待できます。
現在日本で成人患者に使用できる吸入ステロイド薬として、エアロゾル製剤(オルベスコ®︎、フルタイド®︎)とドライパウダー製剤(アズマネックス®︎、パルミコート®︎、フルタイド®︎、モメタゾン)の 2 剤型、ブデソニド吸入液(パルミコート®︎)があります。
エアロゾル製剤は、嗄声(させい:声がかすれる状態)や口内炎、口腔内カンジダ症といった局所にあらわれる副作用が比較的少ないことに加え、吸気筋力の低下のために十分な吸気流量を得にくい高齢者や神経筋疾患、指示通りに動けない認知症高齢者にも使いやすい薬です。
また、ドライパウダー製剤は残量がわかりやすく、噴霧との同期やスペーサーの使用がいらない、というメリットがあります。そして、ブデソニド吸入液は乳幼児の適応でしたが、成人でも使用できるようになった薬です。
吸入ステロイド薬は通常の使用量では全身性の副作用をほとんど起こさず、飲み薬などに比べて安全性の高い薬ですが、副作用が起こらないということではありません。
吸入ステロイドの副作用として、以下のようなものが挙げられます。
また、頻度は低いものの、過敏症として発疹やじんましんを起こすこともあります。
口腔の副作用は、特にドライパウダー製剤の吸入ステロイド薬で多くみられる症状です。副作用を起こさないためには、吸入後にうがいを行うことが大切です。うがいができない場合は、口の中をブクブクとゆすぐだけでも予防できます。
ただ、もしうがいをしても副作用症状が改善されない場合、吸入ステロイド薬の中止を検討せざるを得ないこともあります。うがいをしても副作用症状の改善が見込めない場合は一度主治医へ相談してみてもよいでしょう。
喘息治療で使用される吸入ステロイド薬には、ドライパウダー製剤、エアロゾル製剤、ブデソニド吸入液があり、それぞれに特徴があります。ステロイド薬と聞くと副作用を心配しがちですが、飲み薬のような重度の副作用が起こることは少ないと考えられています。吸入後にうがいをするなど、使用上の注意をしっかり守って喘息を治療しましょう。