記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/5/31
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
スルホニル尿素(SU)薬は、糖尿病の患者さんに使われる薬剤の一種です。糖尿病は血糖値(血液中の糖分の濃度)が高くなってしまい、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高くなる状態です。そこで、スルホニル尿素薬などの薬剤を使って血糖値を下げる必要があります。
スルホニル尿素薬にはどのような種類があるのでしょうか?また、副作用や服用時の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか?
スルホニル尿素薬は、血糖値(血液中の糖分の濃度)を下げる薬剤の一つです。血糖値を下げる働きのある「インスリン」というホルモンの分泌を促して血糖値を下げます。インスリンは膵臓のβ細胞という部分で作られていて、この細胞自身に働きかける薬剤です。歴史の長い薬剤ですが、最近は比較的少量を他の薬剤と併用して使われることが多いです。
そのため、そもそも膵臓のβ細胞のインスリン生成機能がある程度残っている人にしか効果がありません。糖尿病には主に1型と2型の2つがありますが、1型の場合はこのβ細胞そのものが壊れてしまった状態のため、スルホニル尿素薬では治療することができないのです。
したがって、スルホニル尿素薬は、主に2型糖尿病の患者さんに対して使われます。2型糖尿病には、インスリンの分泌が弱まっているタイプ(インスリン分泌低下)とインスリンが効きにくくなっているタイプ(インスリン抵抗性)の2つがありますが、スルホニル尿素薬は分泌を促す薬剤ですから、主に前者のタイプに効果があります。
私たちの体は、糖分を含む食べ物を食べると、最終的にブドウ糖に分解して小腸から血液中に取り込みます。一時的に血糖値が高くなると膵臓からインスリンが分泌され、血中に取り込まれたブドウ糖を筋肉などに送り込んで血糖値を下げていきます。こうして、血糖値が一定に保たれるようになっています。
インスリンは膵臓の「ランゲルハンス島」という部分にある「β細胞」で作られ、分泌されます。スルホニル尿素薬はβ細胞にある「スルホニルウレア受容体(SU受容体)」という部分に結合し、インスリンの分泌を促して血中のインスリンの量を増やすことで血糖値を下げます。
スルホニル尿素薬は、主に以下のような人に対して用いられます。
スルホニル尿素薬は、あくまでも食事療法や運動療法はきちんと行っているのにインスリンの基礎分泌量が増えない方に使われる薬剤です。スルホニル尿素薬による血糖コントロールができても、食事療法や運動療法を続けられないと肥満になってしまい、その結果だんだんスルホニル尿素薬が効きづらくなっていってしまうからです。
また、食事療法や運動療法をきちんと行っているのにスルホニル尿素薬の効果が弱まってくる場合は、「二次無効」という状態で、長期にわたって高血糖状態が続いた結果、β細胞の働きが弱まってしまったことによると考えられています。二次無効となってしまったら、他の薬剤に切り替えたり併用するほか、インスリンを直接投与する「インスリン療法」へ変更することがあります。
スルホニル尿素薬には、薬剤が開発された時期によって第1世代~第3世代の3種類があります。このうち、現在主に使われているのは第2世代・第3世代のスルホニル尿素薬で、以下のようなものがあります。
グリベンクラミド・グリクラジド・グリメピリドは、いずれも一般名(有効成分名を表記したもの)です。それぞれ以下のような特徴があります。
第2世代のスルホニル系尿素薬のうち、グリベンクラミドはどちらも効果が高い代わりに副作用も出やすい薬剤です。血糖値を下げる効果が強いため、その分下げすぎて低血糖状態になることもあります。しかし、錠剤に含まれる有効成分は1.25mgや2.5mgという微量から調節できるため、少しずつ様子を見ながら増減していくことができます。
グリクラジドは、グリベンクラミドと比較して効果がマイルドな分、副作用の低血糖も起こりにくい薬剤です。ただし、血小板の機能を低下させてしまう作用も併せ持っているとされるため、服用中は怪我をしても血が止まりにくくなっている可能性がありますので、十分注意しましょう。
第3世代のグリメピリドは、第1・第2世代のスルホニル尿素薬と比較して膵臓のβ細胞に働きかける力は弱い傾向にありますが、その分、肝臓や筋肉・脂肪組織でのインスリン感受性を高める作用があります。つまり、インスリンの分泌を促すとともに細胞がインスリンに反応しやすくすることで、血糖値を下げる効果を発揮しているのです。
また、グリメピリドには、「チアゾリジン系製剤(商品名:アクトス)」との配合剤があります。チアゾリジン系製剤は、インスリンに対して反応しにくい状態を改善する働きがあり、グリメピリドと併用する人もいます。こうした方にとって、2錠の薬剤を別々に飲むより、1日に1回1錠だけ飲めば良いこの配合剤の方が、飲み忘れを防ぐなどの意味から続けやすいと考えられます。
第1世代のスルホニル尿素薬には、「トルブタミド」「アセトヘキサミド」「クロルプロパミド」「グリクロピラミド」の4種類があります。第1世代のスルホニル尿素薬の特徴として、比較的効果が弱く、腎臓から排出されるということがあります。この特徴から、高齢者で腎機能が低下している患者さんでは重症の低血糖に陥る危険性がありました。
特に薬の作用が長時間続くものでこうした傾向が見られたため、現在では第1世代のスルホニル尿素薬はほとんど使われなくなっています。
スルホニル尿素薬を服用中は、以下のような副作用に注意しましょう。
スルホニル尿素薬は、インスリンの分泌を促して血糖値を下げる薬剤です。そのため、効きすぎて血糖値が下がりすぎてしまうこともあります。この状態が低血糖で、ほとんどの場合は砂糖やブドウ糖などを適量摂取することでおさまります。また、薬剤にどのくらい反応するかには個人差があり、少量の薬剤でも低血糖を起こすことも考えられますので、特に始めて飲む場合は注意しましょう。
肝機能障害・無顆粒球症は非常にまれな副作用ですが、重篤化もしやすいため、症状が現れた場合は早めに医師に相談しましょう。無顆粒球症とは、白血球のうち「顆粒球」という細胞が非常に減少してほとんどなくなってしまうため、ウイルスや細菌に対する免疫力が低下してしまう症状です。放っておくと肺炎や敗血症などの重篤な感染症にかかってしまうこともあります。
スルホニル尿素薬を服用中にニコチン酸(ナイアシン)を含む食材を摂取すると、血糖値を下げる効果が弱くなり、一時的に高血糖状態となることがあります。高血糖状態になると、吐き気や嘔吐、脱水、呼気のアセトン臭などの症状があらわれます。
そこで、ニコチン酸(ナイアシン)を含む食材(まいたけ、たらこ、インスタントコーヒー、かつお節、まぐろ など)を食べる際には気をつけましょう。これらが好物の方は、特に摂取量に注意し、医師や薬剤師に相談しておくのがおすすめです。
スルホニル尿素薬は、糖尿病の薬剤の中でもインスリンというホルモンの分泌を促す薬剤です。インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるため、スルホニル尿素薬はβ細胞に働きかけます。
スルホニル尿素薬には開発された時期によって第1~第3世代のものがありますが、現在では第1世代の薬剤はほとんど使われなくなりました。血糖値を下げる薬であるため、副作用としては血糖値が下がりすぎる低血糖に注意する必要があります。