発ガン性物質にはどんなものがある?日常で口にしているものは?

2019/4/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

がんの原因になったり、がんを引き起こすきっかけになる物質の総称として「発がん性物質」という言葉は、一般的にもよく知られていますよね。

今回は発がん性物質について、その定義や分類、含まれている食べ物・嗜好品や摂取することの影響について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

発ガン性物質とは

がんを誘発する、またはがんの発生率を増大させると思われる化学物質・化学混合物の総称が「発がん性物質」です。発がん性物質の認定は国際がん研究機関(IARC)で行われており、また物質や生活環境などについて評価した、発がん性リスクについての一覧表の公開も行っています。

なお、がんを誘発する作用が確認されているもの以外にも動物実験で腫瘍を誘発し、その誘発メカニズムが人間に起こり得る場合にも、発がん性物質と認定しています。

発ガン性物質は5つに分類されている

国際がん研究機関(IARC)は、世界保健機構が運営する発がんの抑制や状況の監視、発がん原因の特定、発がん性物質のメカニズムの解明などを行う組織です。IARCでは、物質を発がん性に対する根拠の強さにより、以下5段階に分類しています。

IARC認定、5段階別発がん性物質の分類

グループ1
人に対する発がん性があると、十分な根拠から断定されるもの。
アルコールやベンゾピレン、ベンゼン、アフラトキシンなど120種類。
グループ2A
人への発がん性には限られた証拠しかないが、動物実験の結果から、発がん性があると考えられるもの。アクリルアミド、亜硝酸塩など81種類ある
グループ2B
人に対しては限られた根拠しかないが、動物実験の結果から、人に対しても発がん性がある可能性のあるもの。わらび、漬物など299種類ある
グループ3
人に対しても動物に対しても不十分な証拠のみで、人に対する発がん性について明確に分類できないもの。502種類ある
グループ4
人に対して、また動物実験の結果においても、発がん性がないことを示す証拠があるもの。1種類ある

発ガン性があるとされる食品って食べても大丈夫なの?

発がん性が指摘されている化学物質のなかには、私たちが日常的に摂取する食品のなかに添加物として含まれているものもあります。たとえば、ハムやソーセージなどの加工肉には亜硝酸ナトリウムという発がん性物質が含まれています。

ただ、その量は国際基準で無害とされる量のわずか約100分の1とされています。また、食品に添加物として使われている発がん性物質は、長期間毎日食べ続けても体に害が出ない量に抑えて使われています。

ちなみに、加工食肉に添加物として亜硝酸ナトリウムを使う場合は、以下3つの目的で使用されていることが多いです。

  • お肉がもともと持っている赤い色素を固定し、褐色や茶色への変色を防ぐため
  • お肉のもつ特有の臭みを消し、ハムやソーセージの風味を加えるため
  • 細菌の繁殖を抑え、食卓に並ぶまでに食中毒が発生するのを防ぐため

たばこには有害物質がいっぱい!

たばこの煙には約4000種類もの化学物質が含まれており、そのうちニコチンやタールなどの有害物質は200種類以上、発がん性物質は50種類以上になるといわれています。また、たばこの煙に含まれる有害・発がん性物質の量は、喫煙者がフィルター越しに吸い込む主流煙よりも、火のついたところから出る副流煙の方が多いとされています。

このため、たばこを吸うということは喫煙者自身だけでなく、周囲の家族や同僚にも発がんリスクを負わせていることになるのでです。自分自身と周囲の大切な人をがんから守り、少しでも発がんリスクを抑えるためにも、禁煙を考えてください。

お酒の飲みすぎにも気をつけて!

過去に、お酒を摂取する量によって約73,000人を6つのグループに分け、お酒と発がんの関係性の調査が行われたことがあります。調査開始から10年後、対象者のうち約3,500人が何らかのがんにかかりましたが、それぞれのお酒の摂取量と発がん率の違いを調べたところ、以下のような結果がみられました。

飲酒量と発がんの関係に関する調査結果
  • 飲酒量が1日2合未満のグループでは、がん全体の発生率は変わらず
  • 飲酒量が1日2合以上3合未満のグループでは、がん全体の発生率が1.4倍に
  • 飲酒量が1日3合以上のグループでは、がん全体の発生率は1.6倍に

この調査結果から、適切な量を超えたアルコールの摂取が、発がんのリスクを高めていることが推測できます。さらに、上記のグループに喫煙の有無を当てはめた比較の結果は、以下の通りです。

喫煙の有無別、飲酒量と発がんの関係に関する調査結果
  • たばこを吸わない人では、飲酒量が増えてもがんの発生率は特に高くならなかった
  • たばこを吸う人では、飲酒量が増えれば増えるほどがん発生率も上昇した
  • 1日2合以上3合未満飲酒し喫煙するグループは、飲酒が少ないグループと比べ1.9倍、3合以上飲酒し喫煙するグループでは2.3倍にまで発がんリスクが増えた

お酒もたばこも、発がん性物質を持つと言われる嗜好品です。過剰に摂取すると体の負担となり、発がんリスクを増大させる可能性があることをしっかりと理解しておきましょう。

おわりに:発がん性物質は、日常の食事や嗜好品にも潜んでいます

がんは誘発、または発生率を上げる恐れのある化学物質・化学混合物は、IARCによって発がん性物質と認定されています。身近なものとしては、食品に添加物として使われているもの、たばこに含まれるもの、アルコール飲料などがあります。発がん性物質が含まれているものを知り、意識的にこれらを回避することは、自身と周囲の発がんリスクを下げることにもつながることを覚えておきましょう。

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