記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/6/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
生活習慣病のひとつである高血圧は、塩分を摂りすぎることで引き起こされることがあります。そこで今回は、塩分を多く摂った場合にみられる病気や予防法などをご紹介します。
塩分を摂りすぎると、主に以下のような病気となることがあります。
腎臓は余分な塩分や老廃物などをろ過し、尿として体外に排出しています。塩分を摂りすぎる状態が続くと腎臓に負担がかかり、慢性的に腎臓のはたらきが弱くなる慢性腎臓病を引き起こす可能性があります。状態がさらに悪化すると、腎不全になる恐れもあります。
また、尿としてナトリウムが排出されるときにその一部がカルシウムに置き換わるため、ナトリウムが多く排出されるほど、カルシウムも多く排出されます。これが原因で尿路結石になりやすくなるといわれています。尿路結石はカルシウムを主成分とし、泌尿器科の外来の中で最も頻度が高くみられる疾患のひとつとされています。さらにカルシウムが不足することで骨のカルシウムが溶けだし、骨粗しょう症になることもあります。
塩分が多い環境では、胃がんや胃潰瘍の原因となるピロリ菌が増殖しやすいといわれています。また1日10g以上の塩分を摂っている人は、そうでない人と比較して胃がんになるリスクが高まる傾向にあるという報告もあります。
体内のナトリウム濃度が高くなると、体は適切なナトリウム濃度に下げて一定の塩分濃度を保とうとします。塩分を摂りすぎると、水分を多く摂って体に溜め込もうとするため血液量が増えます。血管壁はたくさんの血液を流すために高い圧力がかかるようになり、高血圧を招く恐れがあります。また、この状態が続くと血管壁の内側が傷つき、弾力がなくなり硬くなる動脈硬化となることもあります。また血液を全身に送り出す心臓にも過度な負担がかかるため、心肥大が進み、心筋梗塞や心不全、また脳卒中や不整脈などが引き起こされる場合もあります。
日本人が塩分を多く摂りすぎるのは、醤油や味噌などの調味料を使った料理や、食塩が多く含まれる加工食品などで食事をしてきたことがひとつの原因として考えられます。
また、現代人は仕事などで日々忙しく、核家族や共働きの影響などもあり、外食やコンビニ食、惣菜などの加工食品などをとる機会が増えたため、塩分摂取量がなかなか減らないと考えられています。
さらに、ベーコンやハムなど肉の加工食品、チーズやパンなどの加工食品の食塩は減らすことができないことも、塩分を多く摂ってしまう一因といわれています。ただし、調味料なども減塩タイプのものが販売されていますし、保存食品などに含まれる塩分も少なくなりつつあるといわれています。
塩分摂取量を下げるためには、以下のような工夫をすることが大切です。
和食はヘルシーというイメージがありますが、汁物や煮物には塩分が含まれています。そのため、和食に偏らず、塩分の少ない洋食とバランスよく食べることで塩分の摂りすぎを防ぐことができるでしょう。
うどんやラーメン、そばなどには1食で約5gほどの塩分が含まれているといわれています。このうちのスープの塩分量は約3gほどであるため、全部飲みきらずに残すと塩分の過剰摂取を防ぐことができるでしょう。
外食やコンビニで食べ物を買う場合には、表示されている塩分量を確認してみましょう。また、かまぼこやちくわなどの練りもの、ベーコンやハムなど肉の加工食品は塩分量が多いことが知られています。
調味料の使い方によっては、塩分を減らせる可能性があります。たとえば、顆粒の和風だしには塩分が含まれているため、昆布やかつおなどを使って自分でだしを取ることにより塩分量を減らすことができます。また、コショウなどのスパイス、ミョウガやハーブなどの香味野菜、またすだちなどの柑橘類、お酢などで料理にアクセントをつけることができるでしょう。
食事に含まれる塩分の70%が調味料に含まれていると考えらえています。たとえば、醤油は大さじ1杯で2.5g程度、みそは大さじ1杯で2.0g程度の塩分が含まれているといわれています。計ってから料理をすることにより、摂りすぎることを予防し、塩分量を意識することにもつながります。
塩分を摂りすぎてしまうと、不整脈や心不全、慢性腎臓病や胃がんなど、さまざまな病気になるリスクが高くなります。味付けを工夫したり、調味料を減塩タイプのものに変えてみたりするなど、塩分控えめの生活を心がけて病気を予防しましょう。