記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/7/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
暑くなってくると「脱水症で●●名が搬送されました」といったニュースを聞きます。身近な病気ですが、実は脱水症には種類があることは、あまり知られていません。
今回は脱水症の種類や症状、種類別の治療方法などをまとめました。早期発見のためにも、症状などを知っておくことが大切です。そして、「この症状……もしかしたら脱水症かも」と思ったら、すぐに対処しましょう。
生命維持や活動に支障をきたすほど体液が減った状態を「脱水症」と呼びます。体液とは、体の機能を維持している液体のことで、汗や尿、唾液や粘液、血液やリンパ液、消化液などが体液にあたります。
子供の場合、体重の70~80%が体液で満たされています。大人も約60%、お年寄りも約50%が体液です。このように、大人から子供まで、体液が体の半分以上占めており、体内の循環などにも大きく関わっています。
脱水症になって体液が減ると、体がうまく機能せず、細胞が酸素や栄養素を取り込めなくなったり、老廃物を排出できなくなったり、体温がコントロールできなくなったりします。そのため、脱水症を放置すると重い病気にかかる危険性があり、時には命を落とすこともあります。脱水症は早期発見、早期治療が肝心です。
脱水症と一言でいっても、実は3つに分類されます。
体に必要な電解質(ナトリウムやカリウムなど)が多く失われて起きる脱水症を「電解質欠乏性の脱水」と分類します。別名は「Na(ナトリウム)欠乏性脱水」です。
この低張性脱水は、血漿中のナトリウム濃度の低下や、血漿浸透圧の低下を伴います。体内の水分が減るのも危険ですが、電解質が著しく減るのも危険なのです。
発汗や下痢、嘔吐などによって、体液が著しく減ったにも関わらず、水だけ摂取し続けると起こります。
体内の水分が多く喪失する「水欠乏性の脱水」を高張性脱水と呼びます。著しい発汗や、水分を極端に取らなかった場合に起きる症状です。血漿中のナトリウム濃度が上がり、血漿浸透圧も上昇します。
水分と電解質の喪失が、ほぼ同じ割合(等張)で起きる「混合性の脱水」のことを等張性脱水と呼びます。
脱水症を防ぐにはこまめに水分を補給する必要があります。しかし、乳幼児や高齢者はのどが渇いたことを自覚しにくく、遊びに熱中してしまったり水を飲むのが億劫になってしまったりすることで、水分補給を忘れがちです。
脱水症の症状が出ていないかどうか、周囲にいる人たちが気をつけてあげましょう。
また、水分の喪失量で脱水症状が分かります。とくに、赤ちゃんは体重の減少がチェックポイントとなります。急激に体重が3%以上減少した場合は注意が必要です。日々の体重をチェックしておきましょう。
体重に対する水分の喪失量の目安は、大人にも当てはまります。症状を覚えておいて、「あ、もしかしたら脱水症状かもしれない」と思ったら、すぐにイオン飲料などを飲ませるとともに、病院にかかってください。
脱水症の種類別に、主な症状と治療法をご紹介します。
輸液療法を実施します。高張食塩液を少しずつ輸液し、血漿Na濃度をゆっくりと上昇させます。症状を見ながら、生理的食塩水や乳酸化リンゲル液などに切り替え、症状の改善を促します。
水分補給を実施します。口から飲めない場合は1/2生理食塩水などを輸液します。輸液は効果が高いですが、急速に行うと血漿浸透圧が急降下してしまい、水中毒などを起こしかねないため、注意が必要です。
循環不全などにより、緊急の対応が必要な場合は等張電解質(乳酸化リンゲル液)を輸液します。循環が改善したら病状に合わせた液剤を輸液します。
脱水症は重症化すると死に至る恐れもある、怖い症状です。重症化しないためにも早期発見・早期治療が大切ですし、日ごろからの予防にも心掛けましょう。また、脱水症には3種類あります。「この症状なら水を飲んでおけば大丈夫」といった自己判断をせず、具合が悪くなったらすぐに病院に行くようにしましょう。