記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/1/19 記事改定日: 2018/4/20
記事改定回数:1回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
避妊を失敗して望まない妊娠をしてしまうと、女性の体だけでなく心にも負担がかかってしまいます。そのような悲しいリスクを避けるためには、避妊失敗の原因を理解し、正しい避妊ができるようにすることが重要です。
避妊の重要性と避妊失敗時の緊急対処について解説していくので、女性だけでなく男性もきちんと理解しておきましょう。
避妊には様々な方法がありますが、日本ではコンドームの使用が最もポピュラーな避妊法です。しかし、コンドームは正しい使い方をしないと避妊効果が得られないこともあり、約10~15%の確率で避妊に失敗するとされています。
コンドームは、陰茎が勃起して挿入してから射精するまでの間着用する必要があります。中には、射精の瞬間に合わせて着用する人もいますが、精子は射精前でも少しずつ放出されており、この状態で挿入すると妊娠する可能性があります。また、サイズが合っていないコンドームも精液が漏れ出すことがあるので要注意です。
同じように、コンドームなどの避妊具を使用せずに性行為をし、射精の瞬間に膣外に放出するいわゆる「腟外射精」での避妊成功率は約80%にすぎません。妊娠を望まない人は確実な避妊方法をとりましょう。
低用量ピルは、正しく服用すれば約99.7%の避妊効果があるとされています。しかし、飲み忘れや、嘔吐・下痢などの胃腸炎を発症しているときにはピルの成分が十分に体内に吸収されず、避妊効果が薄れることもありますので注意が必要です。
また、ピルには副作用があり、吐き気や頭痛、乳房の張りなどに悩まされることがあります。まれにですが、ピルの服用で血管が詰まる血栓症を発症することも知られており、特に肥満や喫煙者ではそのリスクが高いとされています。
このように、低用量ピルは非常に高い避妊効果を得られますが、副作用が生じることもありますので医師と相談して正しい用法を守って使用して下さい。
避妊をせずにセックスをしてしまった場合、または避妊に失敗してしまったと思われる場合は、緊急対処としてアフターピルを使って妊娠を避ける方法があります。
たとえば、次のような場合などに使われます。
アフターピルにはいくつか種類があり、ほとんどは1回1錠のものですが、2回の投与(1回目に服用した後、2回目の薬を服用する)ものもあります。
服用タイミングは、セックスから72時間以内に服用するものや、120時間以内に服用するものなど処方薬によって異なりますが、服用が早ければ早いほど避妊効果が高まる(妊娠阻止率は、72時間以内の服用で85%前後、24時間以内の服用で約95%の確率とされる)ため、可能であれば24時間以内の服用が望ましいです。
アフターピルは、服用すると次のような効果があります。
なお、緊急避妊薬は「中絶薬」とは異なるため、受精卵が子宮の壁に着床してしまうと妊娠を防ぐことができません。
アフターピルを服用した後、生理期間は通常より早くまたは遅くなることがあります。服用後1ヵ月以内に生理が来ない場合は医師に相談してください。
副作用として、服用後に胃のむかつきを感じるケースもありますが、これはおおよそ2日程度で解消します。ほかに考えられる副作用としては、頭痛、乳房の痛み(圧迫されたような痛さ)、生理周期の変化、腹痛などがあります。
アフターピルは性感染症(STI)を予防するものではありません。もし、性感染症にかかっているのではないかという不安があったり、異常な分泌物が出るようになった場合は、必ず医師に相談してください。
セックスの前にピルを服用しても、妊娠を防ぐことはできません。必ずセックスの後に服用してください。
アフターピルは、計画外の妊娠を避けるための緊急手段として使われるべきであり、通常の避妊の代替手段ではありません。望まない妊娠を避けるためには、正しい方法でのコンドーム装着等を日頃から徹底することが重要です。
妊娠中・授乳中のアフターピル服用で、胎児・母体等に影響が出ることがあります。該当する方は、アフターピルを服用して問題ないか、医師に相談してください。
肥満(BMI30以上)の方だと、アフターピルの避妊効果が下がるケースがあります。該当する方はアフターピルの処方時、薬の種類等について医師に相談することをおすすめします。
中絶手術には、妊娠12週目までに行う初期中絶と12週以降に行う中期中絶があります。
初期中絶は、人工的に子宮口を開き、子宮の内容物を吸引したり、掻き出すものです。初期であればあるほど体にかかる負担は少ないですが、子宮内に器具を挿入したときに子宮に穴が開いたり、子宮内に胎児や胎盤の一部が残って感染を生じたりするなど、様々なリスクがあります。また、子宮の壁にダメージを与えることがあり、将来的に不妊や前置胎盤のリスクが高まるといわれています。
一方、中期中絶は、胎児や胎盤などの内容物が大きくなっているため、吸引や掻把などで排出することができず、人工的に子宮口を大きく開いて陣痛促進剤を用いて通常の分娩と同じように胎児を生み出します。そのため、子宮の入り口を損傷したり、過度な陣痛が生じることで子宮破裂が生じる危険もあります。そして、女性が受ける精神的ダメージも大きいものになるでしょう。
このように、中絶手術には様々なリスクやデメリットがあり、女性の心に大きな傷を残すものです。望まない妊娠を防ぐためにも、パートナーと協力して確実な避妊を心がけましょう。
アフターピルを使えば、望まない妊娠を高確率で避けることはできますが、あくまで最終手段であることに変わりはありません。「日頃から避妊をきちんとする」「コンドームの装着状態を見直す」など、女性だけでなく男性も意識をしていきましょう。