記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/9/29 記事改定日: 2021/8/31
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食中毒は、暑い時期に最も多く発生すると思われやすいですが、秋に発症リスクが高まる食中毒もあります。そこで今回は、秋に食中毒の特徴と原因菌の種類、食中毒の予防法をご紹介します。
一年を通して最も多く食中毒が発生する時期は、9月~10月といわれています。これは、この時期は残暑で夏バテが長引き免疫力が落ちていること、秋の気温の変化に体が適応できず体調を崩しやすい時期であることが原因と考えられます。
また、秋は運動会やキャンプなど、さまざまな野外イベントが多くなる季節です。野外イベントでは、加熱の足りない食材、衛生管理が不十分の食材が原因となり、食中毒の発症のリスクが高まります。野外のイベントでお弁当を持参したり、テイクアウトのお弁当を食べたりすることも多くなるでしょうが、秋はまだまだ高温多湿な日も多く、お弁当に食中毒の原因菌(原因微生物)が繁殖しやすいため注意が必要です。
秋の食中毒のおもな原因菌には、以下があります。
主な感染経路は生卵や食肉で、夏から秋に繁殖しやすい細菌です。潜伏期間は半日~3日程度であり、加熱が不十分の場合に発症リスクが高まります。犬や猫などから感染することもあるため、触った後は手を洗うようにしましょう。
腸管出血性大腸菌は、O-157などで知られる、非常に注意が必要な細菌です。大腸菌は、人や家畜の腸内に存在していますが、多くの大腸菌は無害です。しかし、腸管出血性大腸菌は非常に毒性が強く、感染すると溶血性尿毒症症候群や出血性の腸炎を引き起こすことがあります。
加熱が不十分な肉、生肉がおもな感染経路であり、生肉を触れた手や食器から感染が広がることもあります。潜伏期間は2日~8日程度です。
カレーやスープ、シチューなどの煮込み料理がおもな感染経路です。潜伏期間は6時間~18時間程度といわれています。ウェルシュ菌は、芽胞という構造を作ることで加熱に強くなるため、再加熱をしても死滅しないことがあります。常温での保存はもちろん、鍋に入れたまま冷蔵庫で保存することもおすすめできません。カレーやシチューを保存するときは、小分けにしてから冷蔵庫で保存しましょう。
また、ウェルシュ菌は嫌気性細菌のため、調理時や小分けにして保存するとき、再加熱時に、よくかき混ぜて空気に触れさせることも大切です。
鶏や牛、豚など多くの動物がもっている菌で、潜伏期間は2日~5日程度です。鶏肉がとくに感染リスクが高く、刺身など生食での感染例が多いです。鶏肉は十分に加熱調理してから食べましょう。
魚介類がおもな感染経路であり、潜伏期間は6時間~12時間程度です。生魚や貝などを調理した後に、調理器具などを介して汚染された場合にも食中毒が発生することがあります。
フグ毒には特効薬がなく、死亡率が高い食中毒です。フグは、種類や生息環境などで毒の有無や毒のある部位が違うため、資格がない人が調理することは大変に危険です。家庭では、絶対にフグを調理しないでください。
また、自生するキノコの多くは、毒の有無がわからないものが多く、食べられるキノコに似た毒キノコもたくさんあります。見極めが難しいので、野山で採取したキノコを食べることは止めましょう。
食中毒を予防するためには、「つけない」「増やさない」「やっつける」対策が大切です。
手にはさまざまな細菌やウイルスが付着しています。調理前は手をしっかりと洗い、肉や魚を触った後も手を洗いましょう。
細菌がほかの食材につかないようにするために、調理で使った包丁やまな板などは、その都度きちんと洗うようにしましょう。食材ごとに調理器具を使いわけることも、食中毒の予防に役立ちます。
夏から秋にかけては、高温多湿で細菌が増殖しやすい時期です。細菌は、10℃以下になる繁殖力が落ち、マイナス15℃以下になると増殖がストップするといわれています。
鮮魚や生肉は、できるだけ早く冷蔵庫にしまいましょう。また、調理済の料理も常温保存はおすすめできません。必ず冷蔵庫で保存しましょう。
食中毒の原因菌は、十分に加熱することで死滅させられるものが多いです。肉料理は、必ず中心部が75℃以上になった状態で、1分以上加熱してください。
肉や魚で使ったまな板や包丁などは、洗った後に熱湯殺菌することをおすすめします。
食中毒の原因菌には、カンピロバクター菌やウェルシュ菌などさまざまな種類があり、それぞれ特徴が違いますが、加熱調理、冷蔵保存、手洗い・消毒を徹底することで対策できる場合が多いです。秋は涼しくなって油断しやすい時期ですし、野外イベントが増える時期でもあります。食中毒には十分に気をつけてください。