閉経

2017/8/16

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

概要

閉経は女性の月経期間が終わる時です。 これは、女性の年齢が上がるにつれて、卵巣が女性ホルモンのエストロゲンを作る量が少なくなるために起こります。 実際の閉経の時期は女性によって異なりますが、40歳から59歳の間、平均で51歳前後に閉経が起こるのが普通です。閉経はいきなり月経がなくなるのではなく、数年をかけて徐々に進んでいきます。
周閉経期は、閉経前の数年間のことを指します。

症状

一部の女性は、閉経をただ迎えるだけで症状がないこともあります。 一方ほとんどの女性は体内における女性ホルモンの変化によって以下のような症状を周閉経期に経験します。

月経周期の変化

これは閉経の最初の徴候の一つです。 周閉経期に入ると月経周期が乱れることがあります。月経が普段より遅れることもあれば早まることもあり、次第に月経どうしの期間が2−3か月と空いていき、閉経に至ります。また、月経量もいつもと異なるかもしれません。こちらも多くなることもあれば、少なくなることもあります。

ただし周閉経期による月経の乱れと思っても、他の病気が隠れていることもあるため以下のような症状があって気になる場合は、医師に相談してください。

・毎月の月経周期の変化
・重い出血
・いつもより長く続く出血
・3週間ごとより頻繁に起こる出血
・性交後の出血 など

ほてり

ほてりは、閉経の最も一般的な症状です。 ほてりを感じる時は、体の中心、胸から頭にかけて暖かい感覚が出現し、数分続きます。 肌は赤くなり、汗をかいたり、 胃の不快感やめまい、 頭痛、動悸、言いようのない不安感を感じることもあります。

腟の乾燥

周閉経期から閉経後にかけて、腟および外陰部の皮膚が薄くなります。 腟も、性的興奮の間に潤いを生み出す能力を失います。 これらの変化は性交中の痛みにつながる可能性があります。性的苦痛を少なくするために、市販の性的潤滑剤(ゼリーなど)または保湿剤を使用することができます。 また、エストロゲン製剤を腟の変化に対して使用することもできますが、副作用もあるため使用にあたっては利点とリスクについて医師に相談してください。

尿路の問題

周閉経期および閉経後に膀胱および尿路感染症を発症する可能性がより高くなります。 頻繁にトイレに行ったり、急な尿意をもよおしたり、排尿時に灼熱感があったり、尿を出すことができなくなったりする場合は、医師に相談してください。

頭痛、夜間の汗、睡眠障害、疲労などの症状

閉経を経験しているとき、夜の汗で目を覚ますことがあります。 レム(REM)睡眠(夢を見ているとき)を十分には得られないかもしれません。 レム睡眠が欠如すると、疲労や、気分不快、ストレスを感じさせるかもしれません。

体重の増加

多くの女性が閉経時に体重を増やします。 健康的な食事と週の何日かの運動を行うことで健康な状態を保ちましょう。

感情的な症状

多くの女性が閉経時に感情的な症状を経験します。 これらの症状には、悲しみ、不安、気分の変化が含まれる場合があります。 女性によっては、症状が重篤になることがあります。 感情的な問題を抱えていることがわかったら、かかりつけ医に相談しましょう。

閉経の起こる時期

実際の更年期のタイミングは、女性ごとに異なります。 平均年齢は約51歳ですが、40歳から59歳の間は閉経が起こる可能性があります。母親と同じような年齢で閉経する方もよくいます。 月経の終わりが早い(40歳より前)場合は、医師は血液検査をして、実際に閉経を迎えているかどうか、あるいは別の原因があるかどうかを調べることができます。
閉経は数年かかることがある徐々に進むプロセスです。12ヵ月間月経がなくならない限り、実際に閉経には至っていません。
手術中に両方の卵巣を切除した女性は、手術時に「外科的閉経」を実施します。注意したいのは、子宮が取り出されても卵巣が取り出されなければ閉経とはならないことです。子宮がなくなるため性器出血はなくなりますが、女性ホルモンは卵巣から出続けています。同じように、卵管を切除しても閉経にはなりません。卵管は卵子の通り道であって、ホルモン分泌には関わっていないからです。

治療

ホルモン補充療法

ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy;HRT)は、人工的に合成した女性ホルモンを摂取することによる更年期症状の治療法です。 HRTは、エストロゲン単独、またはエストロゲンとプロゲスチンとを組み合わせて投与します。
HRTにより、多くの女性でほてり、腟乾燥などの症状を和らげることができますが、全ての女性に効くわけではありません。 骨粗鬆症による骨折や胆石の予防などその他の利益もある一方で、血栓症など一部の病気が増加するリスクもあることから、 HRTの使用にあたってはリスクと利点について医師に相談するようにしましょう。

他の治療法

エストロゲンクリーム、低用量抗うつ薬、大豆製品、特定のハーブサプリメントなどの薬は、更年期症状を緩和するのに役立ちます。 これらのオプションについては、医師に相談してください。

合併症

閉経の骨への影響

年齢を重ねるごとに、女性の骨粗しょう症 リスクは高まり、女性では 閉経を迎えると、リスクはさらに大きくなります。 閉経中にエストロゲンレベルが低下すると、体が再生できるよりも多くの骨が失われ、骨が弱くなります。 骨を強く保つためには、体に十分なカルシウムとビタミンDを摂取することが重要です。
医師は、食物、飲み物、そしておそらくカルシウム補給によってカルシウムを増やす方法を提案するでしょう。さらに、体内のカルシウム濃度を上げるために必要なビタミンDを含むサプリメントを取ることを提案するかもしれません。 毎日のカルシウムとビタミンDの量が合っているかどうかについては、医師に相談してください。一般に、30〜50歳の女性には毎日1,000mgのカルシウムが、50歳以上の女性には毎日1,200mgのカルシウムが必要です。カルシウムを摂取するには ミルク、ヨーグルト、その他の乳製品、大豆、ブロッコリー、豆腐などを食べるとよいでしょう。
女性であれば、年齢に関わらず、毎日少なくとも5μgのビタミンDが必要です。 サケやマグロのような脂肪の多い魚は、ビタミンDに良い供給源です。

閉経の心臓への影響

女性は閉経後に心臓病を発症する可能性が高くなります。これは エストロゲン値の低下が、中高年女性において心臓病発症の原因の一部になるからです。 動脈硬化が進むと、体重が増えて活動量が少なくなるにつれて、高血圧や糖尿病を発症するようになります。 これらの健康問題のリスクを軽減させるために、適度な運動、健康的で栄養豊富な食事を摂ることで、積極的に適切な体重を維持するようにしましょう。

閉経の血中の鉄分レベルへの影響

周閉経期における月経は多量となることもあるため、出血が重い場合や、月経の期間が長い場合には、血中の鉄分が足りなくなることで貧血症につながる可能性があります。食事中に十分な鉄をとるために、 鉄分を豊富に含む食べ物を摂りましょう。 鉄分の摂取源としては、ホウレンソウ、豆、肉などがあります。 また、鉄分を含むサプリメントを飲むことも有効です。

関連知識

植物エストロゲンの効果

植物エストロゲンは、いくつかの穀物、野菜、豆およびほかのマメ科植物、ならびにハーブに含まれるエストロゲンに形の似た物質です。 それらは体内で弱いエストロゲン作用を持ちます。 豆腐、テンペ、豆乳などの多くの大豆製品は、植物性エストロゲンを多く含みます。
いくつかの研究では、大豆のサプリメントが閉経後の女性のほてりを減少させる可能性があることが示されています。 しかし、結果は一定していません。
閉経の症状を治療するために植物エストロゲンを含むハーブを使用することを推奨するのに十分な科学的証拠はありません。ハーブとサプリメントは、特定の医薬品と組み合わせると有害となることがあるので、特に常用薬のある人は、 症状を和らげるために天然製品またはハーブ製品を使用することを検討している場合は、まず医師に相談しましょう。

閉経中は特定の食べ物や飲み物を避けるべきか

ほてりがある場合は、スパイシーな食品または辛い食品、飲み物は避けましょう。これらは、ほてりを引き起こす可能性があります。 アルコールは顔面紅潮を引き起こし、骨の合成およびカルシウム吸収を妨げる可能性があります。 閉経が進行している女性はアルコールを避けるか制限するべきです。

快適な睡眠

以下のヒントは、睡眠の問題を軽減するのに役立ちます。
・定期的に食事を摂る
・深夜の食事や軽食を避ける
・コーヒー、紅茶、チョコレート、コーラの飲み物に含まれるカフェインを制限する:
カフェインは6時間血流にとどまることがあり、睡眠を妨げる原因となります。
・アルコールを避ける:
眠気を感じさせるかもしれませんが、実際にはレム睡眠と非レム睡眠のサイクルに影響し、夜中に起きてしまう可能性があります。

顔面紅潮の対策

顔面紅潮の対策として以下を参考にしましょう。
・涼しい部屋で寝る
・重ね着して暖かくなったら服を脱ぐ
・暑くなり過ぎないよう綿などの天然素材を着用する
・ベッドに綿のシーツを使用する
・顔面紅潮が始まったら、冷たい水またはほかの飲み物を飲む
・たくさんの運動をする
・顔面紅潮のトリガーを見つけ、それらを避ける
※一般的なトリガー:スパイシーな食べ物、アルコール、ぴちっとした衣類、高温多湿の天気 など
・ホルモン補充療法

医師に相談するための質問

・現在の症状は、周閉経期及び閉経後である可能性があることを示していますか?
・月経周期が不規則です。 閉経以外の原因で引き起こされている可能性はありますか?
・気分がよくありません。 安全に治療する方法はありますか?
・大豆製品やハーブサプリメントが役立つかもしれないと聞いてきました。 これらは効果的ですか?
・ホルモン補充療法のリスクと利点は何ですか?
・私は心臓病や骨粗鬆症の危険にさらされていますか?
・骨密度スクリーニングなどの検査は必要ですか?
・閉経したばかりですが、食事や運動など何か生活を変えなければなりませんか?

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