記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
二分脊椎症は、妊娠中に赤ちゃんの背骨の発達に影響を及ぼす先天性欠損です。 赤ちゃんの背骨が完全に閉じず、脊髄や神経に損傷を与えます。 妊娠スクリーニング検査、出生後の脊髄手術などにより、二分脊椎と診断されます。しかし、患者の多くは予後良好です。
二分脊椎症には3種類あります。
先天性欠陥を原因とした、最も軽症である二分脊椎症先天性軽症のタイプです。
背骨の開口部は通常小さく、脊髄と神経は健康な状態です。
通常、別の健康問題のために撮影された背部X線検査の後にこの病気が診断されます。
また、診断後に身体的・知的障害は起こりません。
脊椎に開口部があるため髄膜が脱出します。
ほとんどの場合、重大な神経損傷はありません。
軽度の身体障害や排尿および排便コントロール問題が出現する可能性があります。
最も重篤な二分脊椎症タイプの一つです。
脊椎の開口部を通して脊髄および神経が負傷し、赤ちゃんの背中から脊髄液が漏れます。
下半身麻痺の可能性があるため、排尿及び排便コントロールに影響を及ぼすことがあります。
医師は、重症度を診断するにあたり、脊柱の開口部の大きさと位置ならびにその種類を診ます。
潜在性二分脊椎は、全く症状がでないことがあります。
一方、髄膜瘤または脊髄髄膜瘤は、妊娠検査のスクリーニングか出生直後に症状がでる可能性があります。
妊娠スクリーニング検査時にでる症状としては以下のものがあります。
・母親の血液中に異常な濃度のタンパク質が検出される。
これは、アルファフェトプロテイン(AFP)検査で測定されます。赤ちゃんによって作り出され母親にわたるタンパク質の量をチェックします。
・羊水に異常なタンパク質濃度が検出される。
これは、羊水穿刺と呼ばれる処置によって測定されます。
・超音波検査の際に異常な形の背骨が確認される。
超音波検査とは、妊娠中の赤ちゃんの画像スキャンのことです。
なお、医師は次の場合に妊娠検査スクリーニングを勧めます。
・二分脊椎症を持つ子供が他にいる場合
・二分脊椎症の家族歴がある場合
・妊娠中に葉酸を服用しなかった場合
・特定の健康状態(糖尿病、肥満)がある場合
・発作やうつ病のために特定の薬を服用している場合
出生時の症状としては、次のようなものがあります。
・水頭症(脳に水分があるため水分のために赤ちゃんの頭が異常に大きく見たり、または赤ちゃんの頭の柔らかい部分が膨らむ症状)。
・赤ちゃんの足、腰、脚の筋肉の衰弱
・赤ちゃんの背中の特定の場所にくぼみや毛の生えた部分がある。
この場合、二分脊椎症が疑われる場合があります。 しかし通常は筋力低下および水頭症が、二分脊椎の可能性を示唆する手がかりとなります。
赤ちゃんが子宮内で発達している期間中、つまり妊娠中に二分脊椎症は発症します。 赤ちゃんの背骨が完全に閉じることはありません。
出産時に二分脊椎が疑われる場合は、X線検査、磁気共鳴画像(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンを受けるように薦める場合があります。
二分脊椎症には薬や治癒法はありませんが、出生後の手術は助けになります。 状態や重症度に応じて、母親の子宮にいる間に手術を受けられますこともあります。 しかし、大多数の乳児は、出生後1〜2日の早い時期に手術を必要とします。何年にもわたって繰り返し手術を受ける子どもたちもいます。
手術しても赤ちゃんの病状が改善しない場合、医師は体力とバランスを高めるため理学療法士を紹介するかもしれません。 理学療法士は、自立して移動するための器具の使い方(足括弧、歩行器、松葉杖、車椅子など)を子供に教えることもできます。
子供の学習や学業成績に影響を与えるような重大な症例では、子供が支援を受けることができるように、お住まいの地域学区内にある特別教育施設を紹介するかもしれません。
赤ちゃんが二分脊椎症で生まれた場合、健康状態の見通しは、二分脊椎の位置、大きさ、種類によって異なります。
そして、次のような合併症の可能性があります。
・神経感覚
・皮膚刺激
・ラテックスアレルギー
・窒息
・胃の疾患
・歩行障害
・呼吸困難
・学習障害と知的障害
・うつ病(十代、成年期において)
・水頭症(脳室の拡大)
手術で二分脊椎を改善できない場合は、松葉杖、歩行器、または車いすを使用することが歩行障害の合併症を改善することに役立ちます。子供の学校の成績(読み、書き、数学など)に影響する知的障害の場合、教育的支援が、お住まいの地域にある支援学校から受けられます。 知的障害が深刻な場合でも、大人として包括的な生活を送ることを支援するために、多くの政府および民間の社会福祉サービスがあります。
二分脊椎症の原因は不明です。しかし、妊娠前および妊娠中の女性に葉酸があると、二分脊椎のリスクを低下できることが研究によって示されています。 葉酸が多い食品(一例として濃い緑色の葉、豆、エンドウ豆、レンズ豆、種子、ナッツなど)を食べるとよいでしょう。 妊娠は予定外なこともあるため、女性は出産適齢期に葉酸補給すると良いでしょう。
てんかんまたはうつ病のために特定の薬を服用している場合、または二分脊椎症の家族歴がある場合は、二分脊椎症のリスクが増大します。
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