フェニルケトン尿症(PKU)

2017/3/21

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

概要

フェニルケトン尿症(以下、PKU)は、フェニルアラニンと呼ばれるアミノ酸を分解することができない状態で赤ちゃんが生まれてくるまれな疾患です。

症状

症状は最初のうちありません。 しかし、出生から数ヶ月以内に、病気の重症度に応じて、発症する可能性があります。
・頭が通常の大きさよりも小さい(小頭症と呼ばれる)
・多動性
・尿や息に動物臭があり皮膚にカビのようなものがある
・肌、髪、目の色が他の兄弟よりも明るい
・湿疹などの皮膚疾患がある
・腕や脚を痙攣させたように動かす
・振戦(ふるえ)
・発作
・発育が遅い
・行動上に問題
・精神障害
・永久的な知的障害

診断

新生児に行う検査の一つに血液検査があり、アミノ酸の一種であるフェニルアラニンを処理するのに必要な酵素(フェニルアラニンヒドロキシラーゼ)があるかどうかを検査します。 その酵素が欠損している場合、さらに血液および尿検査をして、PKUの診断を確認します。

治療

PKUの最も重要な治療法は、フェニルアラニンを含有する食品を制限することです。 この病気と診断された新生児は、少量の母乳や通常の処方薬と混合できる特別な乳児用調合乳を使用しなければなりません。 混合比率はデリケートなものです。 赤ちゃんの正常な発達のために一定のフェニルアラニンが必要です。 しかし、フェニルアラニンの過剰摂取は、赤ちゃんを傷つけることになります。
PKUの子どもは低フェニルアラニン食に従う必要があります。 フェニルアラニンは、すべての肉や魚、ミルク、チーズ、卵、ナッツ、大豆、豆などのほとんどのタンパク質食品に含まれています。 特定の野菜、果物や、パン、ビールなどの非タンパク質食品にも含まれています。 フェニルアラニンを消化する際に放出される甘味料アスパルテームも避けなければなりません。
体がフェニルアラニンを分解するのを助けることができる、PKUの治療薬である一部の薬が国内で承認されています。 しかし、この薬はすべての人のフェニルアラニンが十分に減少するわけではありません。 薬の効果が低い人々はまだ、低フェニルアラニン食に従わなければなりません。

予防

PKUは遺伝的条件であるため、予防することはできません。 遺伝子検査は、欠損遺伝子を持っているかどうかを判断する唯一の方法です。 PKUを持たない遺伝子の人は、PKUの徴候や症状を示しません。 どちらの両親からも、病気の伝染に関わる遺伝子の1つは受け継ぎます。 しかし、妊娠中の検査(絨毛性絨毛サンプリングまたは羊水穿刺)で、PKUの可能性を調べるスクリーニング検査をすることができます。
PKUを持っている場合は、妊娠する前と妊娠中の両方でフェニルアラニンの摂取を制限する、厳密な低フェニルアラニン食を遵守しなければなりません。 赤ちゃんが欠損遺伝子を継承していなくても、フェニルアラニンの蓄積は発達中の胎児を傷つけるでしょう。

関連知識

フェニルケトン尿症を患った生活

制限された食事では、体に必要なすべての必須栄養素を得ることは難しいです。しかし日々の処方はPKU患者が適切な栄養を取るのに役立ちます。 サプリメントの摂取が必要な場合もあります。 例えば、魚油は、標準的なPKU食から抜けている長鎖脂肪酸(脂質または脂肪の基本ビルディングブロック)のいくつかを代替えすることができます。これらの脂肪酸は、神経発達を改善するのに役立ちます。
PKUの患者毎に、有すフェニルアラニン量は許容できる程度であっても個人差があります。 PKUを有す場合は、個々のPKU対策食を作るために医療関係者と緊密に協力しなければなりません。医師の診断を頻繁に受け、定期的な血液検査を受けることが役に立ちます。 健康な成長と発達のために十分なフェニルアラニンを摂取する必要がありますが、健康を傷つけるほど摂取することはできません。
PKU食は非常に制限のあるものですが守らなければなりません。生活の中で制限食を守っている人は、肉体的および精神的健康状態が、守っていない人よりも全体的に良好です。 友人や家族、PKUサポートグループの協力が、この食事に伴う難しさに直面した時、結果的に命を救うことにつながります。

医師に相談するための質問

・PKUの遺伝子検査を受けるべきですか?
・PKUを有している場合、赤ちゃんを守るために妊娠中に何をすべきですか?
・検査のために、PKUを有する赤ちゃんを、どれくらいの頻度で連れてくる必要がありますか?
・PKUの重篤度を決定する要因は何ですか?
・子どもに何を与えるべきですか?
・子どもはどんな食べ物を避けるべきですか?
・子どもが食べてはならない食べ物を食べるとどうなりますか?
・PKUを有している子どもの次に生まれる子はPKUを有していますか?

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