骨盤内炎症性疾患

2017/3/21

山本 康博 先生

記事監修医師

東大医学部卒、独立行政法人国立病院機構東京医療センター

山本 康博 先生

概要

骨盤内炎症性疾患(PID)は、女性の生殖器官(子宮、卵管、卵巣)の感染です。通常、子宮頸部は膣内の細菌がこれらの器官に広がるのを防ぎます。しかし、子宮頸部が淋病やクラミジアなどの性感染症(STI)に感染すると、細菌は内部の器官に移動し炎症を起こすことで卵管が損傷し、妊娠しにくくなる可能性があります。

症状

PIDには以下の症状がありますが、症状のない人もいます。

・下腹部の痛み
・黄色(または緑色)で不快な臭いをもつ膣分泌物
・不規則な月経期間(生理時以外の微出血など)
・寒気
・高熱
・下痢
・吐き気
・嘔吐
・性交時の痛み
・腰痛
・排尿時の痛み

これらの症状がある、またはSTIの可能性があるときは、すぐに病院を受診してください。骨盤検査で検体検査することでのみ、PIDかどうか診断できます。放置すると感染が広がり、痛みや傷害が増える可能性があります。

原因

STIのリスクにさらされていることが、PIDのリスクにもなります。PIDのリスク要因には次のものがあります。
・25歳未満の性的に活発な女性
・複数の性交パートナーをもつ
・安全でない性的習慣がある

PIDは、淋病やクラミジアなどのSTI感染者とのセックスにより感染します。これらの病気は精液およびほかの体液に運ばれ、性的接触の間、細菌は子宮頸部から膣、尿路または肛門の開口部でリンパ節に広がります。

STI以外の理由でPIDを発症することもありますが、膣内の細菌がなぜ子宮と卵管に拡がってPIDを引き起こすのかは不明です。

まれに、出産、流産、中絶あるいは検査のために子宮の内部からサンプルを採取する手順の途中で、細菌が内臓器官に感染した場合にもPIDは発生することがあります。細胞診検体や子宮内装置(IUD)の挿入のために発生することもあります。

治療

PIDのための市販薬はありませんが、抗生物質で治療できます。なお、ほとんどの場合入院する必要はなく、外来治療で治療可能です。
ただし、医師の指示どおりにすべての薬を服用しないと症状が悪化し、入院する必要が出てくるかもしれません。そのため、薬を服用してから数日後、経過確認のために再び医師の診察を受けることになります。

重度のPIDまたは18歳未満で妊娠している場合、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している場合は入院して治療が行われます。特にSTIに起因する場合は、パートナーも治療を受ける必要があります。パートナーが治療されない限り、再び感染するかもしれないからです。PIDの可能性がある場合は、すぐに医師に相談してください。

早期治療は、PIDの合併症を予防するのに効果的です。
逆にPIDを治療しないと、臓器に恒久的な損傷を与える可能性があります。瘢痕(はんこん)組織は卵管および腹部に形成され、不妊または子宮外妊娠の要因となります。瘢痕化すると、数カ月または数年間持続する痛みを起こすこともあります。PIDの影響が深刻な場合は、膿や瘢痕組織を除去したり、損傷した器官を除去するための手術が必要となることがあります。

STIに再感染した場合、PIDは再発する可能性が高くなります。PIDに罹患するたびに、より多くのダメージと合併症の可能性が生じます。

予防

STI感染の可能性がある人との性的接触を避けてください。セックスする場合は、まずSTI感染の危険性があるかどうかパートナーに確認してください。
男性でも女性でもSTI感染者であれば、症状がなくてもSTIの定期的なスクリーニングが重要です。男性はセックス中に常にコンドームを着用する必要があります。コンドームはSTIを100%予防するわけではありませんが、感染の可能性は大幅に減ります。

コンドームのみがSTIを防ぐ手段だということを忘れないでください。ほかの避妊薬では防止できません。

医師に相談するための質問

・骨盤内炎症性疾患の原因は何ですか?
・どのような検査が必要ですか?
・検査結果の数値はどういう意味ですか?
・どの治療法が最良でしょうか?
・性的パートナーも治療する必要がありますか?
・セックスしてもいいですか?それとも治療後まで待つ必要がありますか?
・臓器に瘢痕組織やその他の損傷がありますか?
・将来、妊娠することができるでしょうか?

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