一過性脳虚血発作(TIA)

2017/3/22

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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概要

一過性脳虚血発作(TIA)は脳卒中ですが、深刻な脳卒中ではありません。実際のところ、「軽度」または「警告」脳卒中と呼ばれることが多いです。一過性脳虚血発作(軽度脳卒中)の場合、脳への血流が2〜5分間停止します。それは、重度の脳卒中よりはるかに少ない時間です。通常、長期間の損傷はありません。しかし、一過性脳虚血発作があると、重度の脳卒中になるリスクが大幅に増加します。

症状

一過性脳虚血発作の症状は、重度の脳卒中の症状に類似しています。 顔、腕、脚が衰弱し、感覚の喪失があるかもしれません。 それは通常、体の片側で起こり、これが発症のもうひとつの兆候になります。顔に力が入らないため、笑顔をつくったり会話をすることが難しくなるかもしれません。 また、ほかの人の話を理解するのが難しくなったり、混乱したりするかもしれません。 突然ひどい頭痛に襲われたり、視界が悪くなったり、めまいを感じたり、歩行することや、バランスを取ることや、筋肉の協調をとる事が難しくなるかもしれません。

原因

ほとんどの場合、重度の脳卒中と同じように、血栓が一過性脳虚血発作の原因になります。  食事、運動、および医師の薬の処方によってコレステロール値を管理することで、一過性脳虚血発作のリスクを下げることができます。
高血圧、糖尿病、および肥満といったほかの病状も、脳卒中に関連しています。また、生活習慣の変更や処方薬での管理も可能です。 喫煙をしないことやアルコール制限をすることは、脳卒中のリスクを低下させます。 他の脳卒中のリスクには、年齢、遺伝、性別、民族性が含まれます。 既に脳卒中がある場合、別の脳卒中を発症する危険性は非常に高いです。

診断

一過性脳虚血発作を診断するには、医師または集中治療室の医師が検査を行い、病歴(糖尿病、高コレステロール、高血圧、頭頸部の最近の外傷、または喫煙者かどうか)を尋ねます。一過性脳虚血発作は、わずか数分だけ持続します。したがって、症状を医師に報告した後、または集中治療室に到着した後に全ての検査が行われます。
特定の画像検査を使用して体内の画像を撮影し、脳卒中を診断することができます。 画像検査には、以下のものがあります。
・頚動脈超音波検査
・CT(コンピュータ断層撮影)
・CTA(コンピュータ断層撮影血管造影)
・MRI(磁気共鳴イメージング)
・MRA(磁気共鳴血管造影)
・TTE(経胸的心臓超音波)
・TEE(経食道心臓超音波)
最後に、脳血管造影と呼ばれる簡単な外科的検査により、小規模な脳卒中を診断することができます。 この検査では、医師は脳内の動脈を見ることができます。 検査では、鼠径部(下腹部)の近くを小さく切開することもあります。カメラを取り付けたフレキシブルチューブを切開部に挿入し、医師が診断が必要な箇所を見るために動かします。

治療

重度の脳卒中と同様に、一過性脳虚血発作は緊急事態であり、すぐに対処が必要です。すべての脳卒中の治療において、時間が重要です。治療を速く受ければ受けるほど、回復と予後(病後の経過の見通し)がよくなります。治療には、血栓薬の服用(将来起こる脳卒中の原因となる血栓を予防するために、今後、その薬を飲み続けることが必要になるかもしれません)や、詰まった動脈を開くための手術、または薬と手術の両方が必要になる可能性があります。極端に狭い頚部動脈を有する患者の場合、内膜切除術と呼ばれるもう1つの手術が行われることがあります。 この手術は、動脈の脂肪コレステロール沈着物を除去します。

関連質問

一過性脳虚血性発作(TIA)になったら

歩行や発話しづらさといった、長期間にわたる損傷が生じることは、一過性脳虚血発作の場合はまれです。 健康な生活への変化と処方薬の服用をした後でさえ、別の一過性脳虚血発作に見舞われる可能性を心配する人もいます。したがって、脳卒中の兆候や症状を知ることが重要です。次のFASTというフレーズが、注意すべき症状を覚えておくのに役立ちます。

Face-顔

笑顔になれない場合、顔が垂れている場合(特に片側)には、脳卒中を起こしている可能性があります。

Arm-腕

一方、または両方の腕を上げることができない場合、脳卒中がある可能性があります。

Speech-スピーチ

話したり簡単なフレーズを繰り返すことができない場合、またはスピーチが鈍っている場合は、脳卒中を起こしている可能性があります。

Time-時間

脳卒中の治療には時間が最も重要です。 症状が見られてから3時間以内に治療を受けると、予後と回復の結果がよくなります。
症状や気分を伝えることができない場合に備えて、家族や友人にこのFASTルールを教えてください。

予防

健康な生活や慢性疾患の管理で、一過性脳虚血発作のリスクを減らすことができます。 健康的な食生活の維持、定期的な運動、喫煙、アルコール制限、処方薬の指示に従うことが必要です。リスクにさらされているかどうかを問わず、これは有用な方法です。病歴、家族歴、または他の要因からかんがみて、脳卒中のリスクが高いと思われる場合は、医師に相談してください。
一過性脳虚血発作は、将来、重度の脳卒中または別の一過性脳虚血発作の可能性を警告しています。 適切なライフスタイルの変更や薬がなければ、2回目の一過性脳虚血発作または重度の脳卒中が、1回目の一過性脳虚血発作が起きてからたいてい、1年以内に起こります。 健康面で変化があっても、脳卒中が起きないという保証はありません。

医師に相談するための質問

・両親または兄弟のいずれかまたは両方が脳卒中となった場合、脳卒中リスクがより高くなりますか?
・特定の薬が脳卒中を引き起こすことはありますか?
・カフェインが脳卒中を引き起こすことはありますか?
・症状が認められたときに病院まで3時間以上かかるの場所にいたらどうすればいいですか?
・脳卒中を治療していない場合の合併症は何ですか?

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