失神するとどんな症状が出てくる?貧血との違いは?

2019/9/23

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

突然意識を失ってしまい倒れてしまった、という経験はありませんか?失神は日常生活を何気なく送っているときにも起こりうる発作です。この記事では何らかの原因によって引き起こされる失神について、貧血との区別などと合わせて紹介します。

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失神ってどんな状態?

失神とは、数十秒単位の短い時間に血圧が低下し、心臓から脳へ送る血液量が低下したために、脳全体が酸素不足になり意識を失う発作を指します。意識を失うと、立っている状態を維持できず、転倒する危険性があります。それによって頭などにダメージを受けることもあるため注意が必要です。

くず折れ型
血圧が徐々に低下し、くず折れるようにして座り込む
転倒型
立っている状態で発症し、自分で体を支えられずに転倒する
座位型
座っている状態で発症する

失神の原因はさまざまですが、多くは軽症で時間とともに状態が改善されます。しかし心臓病や出血など命に関わる疾患や症状を原因とする失神もありますので、入院や治療が必要となる場合があります。失神を起こした場合、すみやかに病院を受診し原因を特定することが大切です。

貧血との違いは?

失神と貧血は同じ状態を指すように使われることがありますが、正確には2つの状態は異なります。貧血とは、血液中のヘモグロビンが減少している状態です。失神は脳に流れ込む血流の低下によって引き起こされる意識消失です。

失神の原因・症状は?

失神では多くの場合、意識を失う前に前駆症状があらわれます。前駆症状は血圧低下に関連した症状で、自覚できるものが多いです。前駆症状に引き続き、意識を失うことが多くみられます。

  • 目の前が暗くなる(白くなる)
  • 人の声が小さく聞こえる
  • 冷や汗をかく
  • 血の気が引く
  • 不快感
  • 吐き気
  • 頭痛
  • 胸痛

気をつけたいのは頭痛と胸痛です。前駆症状で頭痛や胸痛が診られる場合はくも膜下出血や心臓病など重症の疾患が原因となっている可能性がありますので、すぐに病院を受診してください。

失神の原因で代表的なものを紹介します。大きく分けて、器質的疾患(急性)、変性疾患(慢性)、神経起因性失神、環境障害や薬物、原因不明の5つに分かれます。

器質的疾患

心原性
急性冠症候群、不整脈、急性大動脈解離、大動脈弁狭窄症、肥大型閉塞性心筋症
肺疾患
肺塞栓症、肺高血圧症、気管支喘息
消化器疾患
消化管出血
その他
感染症、脱水、脳血管障害、アナフィラキシーなど

変性疾患

慢性本態性起立性低血圧、パーキンソン症候群など

神経起因性失神

血管迷走神経性失神、頸動脈洞過敏症候群、状況失神(排尿後、排便後、咳漱後、その他)

環境障害や薬物など

熱中症、降圧薬、硝酸薬、アルコール、食後低血圧

原因不明

原因が特定できない失神もあります

背後に病気が潜んでいる可能性がある失神もあるの?

重大な病気のサインとして失神があらわれている可能性もあります。失神を起こした人の年齢などによって、注意点が異なります。

高齢者
  • 心臓の疾患を持っている
  • 降圧薬を服用している

高齢の方で失神を起こした場合は一般的に注意が必要ですが、上記の2つに当てはまる人は要注意です。特に夏は血管が拡張しやすく汗も出やすい季節ですので、薬が効きすぎて失神を起こす可能性があり、これを「夏失神」といいます。

初めて失神した人
今までに失神をしたことがなかったけれど失神した場合、年齢を問わず注意が必要です。体の中で出血したことが原因で失神し、重篤な状態に陥ることもあります。たとえば異所性(子宮外)妊娠の破裂による出血で失神が引き起こされる例が報告されています。
前駆症状のない失神
比較的軽症の失神では、なんらかの前駆症状があらわれることがほとんどです。なんの前触れもなく失神した場合は、原因を特定するために速やかに病院を受診してください。
疾患を持っている人
下記のような疾患を持っている人は注意してください。

  • 心臓や血管の疾患(不整脈、弁膜症、大動脈の疾患)
  • 肺塞栓症(下肢静脈血栓症)
  • 生活習慣病(高血圧、糖尿病など)
  • 神経疾患(神経難病、糖尿病性神経障害)
  • 肥満

失神の対処法は?

失神の治療は原因によって方法が異なります。心臓病が原因ならば心臓病の治療が必要になります。そのため原因の特定がとても大切です。失神で病院を受診する際は、治療中の病気の有無、既往歴、失神したときの状況や症状などをできるだけ詳しく医師に伝えましょう。
何度も失神を繰り返す場合は、生活習慣改善を取り入れるのもおすすめです。睡眠不足や運動不足の解消、過度なダイエットをしない、アルコール摂取量を見直す、服用している薬について医師に相談するなど試してみてください。

おわりに:失神は軽度のものから重度までさまざま。原因を特定して適切に対処しましょう

失神は軽症で一時的な症状がほとんどですが、なかには重篤な病気を原因とするものもあるので注意が必要です。失神した場合は放置せずに、すぐに医師に相談しましょう。

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