バリウム検査を拒否していいのはどんな場合?

2019/9/8

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

一般的な企業などが社員に受けさせる健康診断に、バリウム検査が含まれていることは多いです。バリウム検査は独特の薬剤を飲まなくてはいけなかったり、検査台で回転したりと少し手間のかかる検査なので、苦手とする人も少なくありません。

このバリウム検査ですが、拒否できる場合があるのをご存知ですか?やむを得ない理由がある場合は、バリウム検査を断れることもあるのです。詳しく見ていきましょう。

バリウム検査は拒否できる?

健康診断は、労働安全衛生法に義務づけられている「法定検診」と呼ばれるもので、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を形成することを目的として定められています。検査項目は以下の通りです。

  • 問診(既往歴、業務歴、喫煙歴、服薬歴、自覚症状及び他覚症状の有無)
  • 検査(身長、体重、腹囲、視力、聴力)
  • 血圧測定
  • 胸部X線検査(必要に応じ、喀痰検査も実施)
  • 尿検査(尿中の糖とタンパクの有無の検査)

この項目の中に、バリウム検査はありません。つまり、バリウム検査は法的に義務づけられた検査ではないのです。ただし、健康保険組合によっては一般検診として胃部レントゲン検査がセットになっている場合もあります。

バリウム検査は、胃を膨らませる発泡剤やドロドロとしたバリウム溶液を飲まなくてはならない、ぐるぐると検査台の上で体勢を変えたり台を回転させられたりする、などの理由から苦手だと感じている人も多いでしょう。上記のようにバリウム検査は法的な義務はありませんので、拒否しても罰則はありません。とはいえ、会社から受けるよう指示がある場合、勝手に検査項目を変える、断るなどしてしまうと問題になります

単に発泡剤やバリウム溶液を飲みたくない、検査を受けたくないという理由でバリウム検査を拒否してしまうと、会社の考え方や就業規則にもよりますが、極端な例で解雇されたという例もあるようです。しかし、何らかの正当な理由がある場合は、会社側も強制的に受けろとは言えません。

正当な理由の一例として、「バリウムにアレルギーがある」「以前にバリウムを服用して、体調が悪くなって検査を受けられなかったことがある」「検査後にバリウムをうまく排出できず、医療機関を受診したことがある」などのように、検査を受けることで明らかに体調が悪化するという場合などが挙げられます。

とは言っても、検査当日になって突然「受けられません」となると、トラブルになってしまう可能性もあります。トラブルを避けるためには、事前に上司や担当部署などに相談し、体質的にバリウムが飲めない、排出できないなどの体調不良を引き起こす可能性があることを伝えておきましょう。

ただし、検査がセットになっている場合は胃部X線検査(バリウム検査)を受けないことでセット料金が適用にならず、検査費用が割高になったり、割引が適用になったりすることもあります。その場合、自己負担を求められる可能性もあります。

胃カメラでの代用もできる

「社員の健康を守るため」という会社の方針により、どうしても何らかの胃の検査を受けなくてはならない場合、胃カメラによる内視鏡検査を受けてバリウム検査の代わりにするという方法もあります。一般的には自分で胃カメラの検査を受けて、その結果を会社に提出することでバリウム検査の代わりとすることができます。

また、会社の法定検診の際、可能であればバリウム検査を胃カメラに変更するという方法もあります。可能かどうかは会社の規定によりますので、必ず前もって確認しておきましょう。費用に関しても、超過分が自己負担なのか、胃カメラの検査費用はすべて自己負担なのかなど、会社ごとに細かく異なりますので、検査を胃カメラに変更したいという場合は、検査を受ける前に必ず上司や担当部署に相談しましょう

バリウム検査前の注射は拒否できる

バリウム検査の前に、たいていの検査施設では「鎮痙剤(ちんけいざい)」という筋肉注射を行います。この薬剤は消化管の蠕動運動を止め、バリウムがすぐに流れ出てしまうのを防ぐとともに、きれいに写真を撮影するためのものです。薬剤は「ブスコパン」が使われることが多いですが、ブスコパンが打てない人などは「グルカゴン」を使うこともあり、いずれも副作用の可能性はありますので、心配な場合は注射を拒否しても構いません。

とくに、ブスコパンは悪心・嘔吐・頭痛・めまい・目のピントが合わなくなる・過度に瞳孔が開く(散瞳)などの副作用が出やすいとされています。これらは数時間で自然におさまり、その後の後遺症が残るわけではありませんが、数時間は仕事に支障をきたす可能性もあります。鎮痙剤の注射は行わない施設もあるわけですから、不安な人は受けたくない旨を事前に相談しておきましょう

バリウム検査を受けないほうがいい人は?

バリウム検査は、そもそも受けられない、受けない方がいいという人もいます。以下の9項目のいずれかに当てはまる場合、バリウム検査を受けないよう指示される可能性もありますので、該当することがわかっている場合はやはり事前に相談しておきましょう。

体調不良を起こす可能性が高い人
  • 過去、バリウム検査でアレルギー症状(血圧低下・発疹・発汗・悪心・嘔吐など)を起こしたことがある
  • 過去、バリウム検査を受けた際に体調不良を起こしたことがある
  • 強い腹痛などの消化管系の症状がある
  • 現在、胃や腸の疾患で治療中または経過観察中である
バリウムが気管に入って呼吸困難や肺炎を引き起こすリスクが高い人
  • 過去の検査でバリウムを誤嚥(誤って気管に入る)したことがある
  • 脳血管障害などで嚥下障害がある
  • 酸素吸入治療をしている
脳卒中や心筋梗塞などの重篤な疾患を引き起こすリスクが高い人
  • 当日の血圧が収縮期180mmHg以上、または拡張期110mmHg以上と著しく高い
バリウムが腸に詰まりやすい人
  • 過去に腸閉塞・腸捻転を引き起こしたことがある
  • 検査前3日間排便がないというひどい便秘症である
  • 胃・大腸・小腸のいずれかを切除している
  • 心疾患や腎疾患などで水分制限中である
慢性疾患が悪化するリスクがある人
  • 重篤な心疾患・肺疾患がある
撮影台からの転落リスクがある、または撮影困難な人
  • 手足に麻痺がある
  • 検査のための寝返りなどの体位変換が自分でできない
  • 体重130kg以上(※撮影装置の体重制限による)
1年以内に消化器・循環器・呼吸器・脳血管・脊椎・四肢などの手術を行った人
  • 手足に麻痺、自力で体位変換できないなど
毎回結果が「精密検査」に該当している
  • バリウム検査よりも詳細な検査を行った方が良いと判断される
妊娠中または妊娠の疑いがある
  • 胎児への放射線の影響を考え、検査を受けられない

バリウム検査が受けられない人は、胃カメラの検査を

上記のように、やむを得ない理由でバリウム検査が受けられない場合は、胃カメラ(内視鏡)の検査で代用することができます。会社と相談の上、ぜひ、胃カメラの検査を受けましょう。

胃カメラ(内視鏡)検査は、大人の小指程度の太さのスコープを口から挿入し、食道・胃・十二指腸とバリウム検査と同じ部位を観察します。スコープの先端に内蔵されているCCD(ビデオカメラ)で画像をモニタで観察するとともに、写真を撮影していきます。検査は10分程度で終了しますが、その間常にのどにものがはさまった感じがあります。

また、体に害のない色素を使い、染色して詳しく観察することもあります。また、必要に応じて胃の粘膜の一部を採取し(生検)、組織検査をすることもあります。こうした画像や組織検査の結果を総合して疾患の有無を判断します。結果は基本的にその場でわかりますが、組織検査を行う場合は2週間程度かかります。

胃カメラの検査の流れって?

胃カメラの検査は、以下のような手順で行われます。

  1. 検査に関する問診に応える(内視鏡検査経験の有無、そのときの様子、現在治療中の疾患や飲んでいる薬剤など)
  2. 胃の中をきれいにする薬(ガスコンドロップ)を飲む
  3. 入れ歯、コルセット、腹部を締めつける腹巻、ガードルなどを取る
  4. 胃の動きを抑える鎮痙剤(ブスコパン)を注射する。希望により、麻酔薬や鎮痛剤なども同時に注射する
  5. のどに麻酔のスプレーやゼリー状の薬剤を入れる
  6. 内視鏡(直径8〜11mm)を口から挿入する
  7. 10分程度体内を観察し、必要に応じて組織の採取を行い、終了する

内視鏡は細長い管状で、無理に飲み込もうとしなくても自然に入っていきます。のどにものがはさまった感じはありますが、痛みのある検査ではありません。医師やスタッフの指示に従い、全身の力を抜いて受けましょう。

おわりに:バリウム検査は法的な義務ではないので、やむを得ない場合は拒否もできる

バリウム検査は国が推奨している胃がんの早期発見のための検査ではありますが、労働安全衛生法に義務づけられている「法定検診」には含まれていません。つまり、バリウム検査を受けることは法的な義務ではありませんので、やむを得ない理由があれば拒否できる場合もあります。

また、その場合は代わりとして胃カメラ(内視鏡)検査を受けておくと安心です。バリウム検査と同じところを画像で診断することができます。

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