デパス®︎の服用をやめたあとに起こりうる「離脱症状」とは

2019/10/27

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

デパス®︎は向精神薬の一つで、不安や不眠などに効果を発揮します。精神系の薬は長い間付き合っていくものが多く、デパス®︎もその一つですが、デパス®︎を飲むのをやめると「離脱症状」という身体的・精神的な症状が現れると言われることがあります。

デパス®︎をやめたあとにみられる「離脱症状」とはどんな症状なのでしょうか。また、離脱症状に対してはどのように対処すれば良いのでしょうか。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

薬の服用を終えた後に副作用が出ることがあるって本当?

薬の副作用は、通常は薬を飲んでいる間、とくに飲み始めの時期に多く起こるものです。しかし、薬の種類によっては、飲んでいる間ではなく、急に服用を中止したときに副作用を引き起こすこともあります。このような薬では、例えば、精神科の領域でよく知られている薬や、内服のステロイド剤などが有名です。

ベンゾジアゼピン系の薬剤であるデパス®︎もそのような薬の一つで、急に止めると副作用が出ることがあります。しかし、デパス®︎の副作用は必ず出るわけではなく、デパス®︎に対して身体依存を起こしている状態のときに急に止めると現れます。身体依存とは、「薬を長期にわたって服用した結果、身体がその状態に慣れてしまっている状態」のことで、このような状態で突然薬を中止してしまった場合、デパス®︎以外の薬でもさまざまな症状が現れます。

デパス®︎服用後にみられる離脱症状とは

前述のように、デパス®︎を長期服用して身体依存の状態になった場合、急に薬の服用を中断すると離脱症状というさまざまな症状が現れます。服用前よりもひどい不安感や不眠、これまではなかったイライラや焦燥感、発汗や震えなどが生じる場合もあります。

デパスは作用時間は短いですが、効果がしっかりしていて即効性もあるため、効果を実感しやすい薬だと言えます。そのため、漫然と使っているとどんどん服用量が増えてしまい、依存状態に陥りやすいとも考えられます。しかし、デパス®︎の作用時間の短さから、少し飲み忘れると離脱症状も現れやすくなってしまうのです。

離脱症状がみられたときの対処法は?

離脱症状がみられたときは、これを和らげるために薬の量を突然0にするのではなく、ゆっくりと減らしていく必要があります。ゆっくり薬を減らしていくには、「漸減法」「隔日法」「置換法」の3つの減薬方法があります。

まずは、漸減法が行われます。漸減法とは、1~2週間ごとに離脱症状の状態を見ながら少しずつお薬を減らしていく方法です。たとえば、最初は2mgのデパス®︎を飲んでいた患者さんが次の週には3/4の1.5mgのデパス®︎にします。しばらく様子を見た後、調子が良さそうなので2週間後には1/2の1mgにする、というように、あくまでも患者さんの症状と相談しながらゆっくり薬を減らしていきます。

このとき、薬の服用量が少なくなってきたら、より慎重に減薬を行っていかなければなりません。なぜなら、1.5mgを1mgに減らすときは2/3(約67%)に減るだけですが、1mgを0.5mgに減らすときは1/2(50%)に減らすというように、服用量が少なくなってくるほど、減り幅が大きくなってくるからです。減量の割合が大きくなるほど、離脱症状が出やすくなります。

患者さんによっては、この漸減法よりも隔日法の方が取り組みやすい場合もあります。隔日法とは、毎日飲んでいた薬を1日おきに、やがて2日おきに、3日おきに、と間隔を開けていく方法です。デパスは作用時間が短いため、0.25mg~0.5mgとなったころに隔日法を取り入れ、突然完全になくすのではなく、徐々に減らしていくと離脱症状の出るリスクを下げられると考えられます。

漸減法や隔日法での減薬が難しかった場合に「置換法」を使います。まずはデパス®︎と同様の作用があり、効果が長い薬に徐々に置き換えていき、完全に置き換わった後で漸減法や隔日法による減薬を行います。作用が長い薬の代表としてメイラックスやセルシン、ホリゾンなどがあり、これらは減薬しても身体から抜けていくスピードがゆっくりなので、突然の離脱症状が起こりにくいのです。

このように、減薬はあくまでも計画的に、そして慎重に行います。

デパス®︎をやめた後にみられる、離脱症状以外の症状

デパス®︎をやめた後、離脱症状以外に以下の2つの症状が見られる場合があります。

再燃
  • もともとの疾患が良くなっていないのに薬をやめてしまった場合、もとの症状がまた出てきてしまうこと
偽性離脱症状
  • 抗不安薬を飲んでいる人は疾患のせいもあって不安になりやすいため、薬を減らされたと思うだけで症状が悪化し、離脱症状に似た症状が出ることもある
  • 不安や不眠になることはあるが、けいれん発作や幻覚・妄想などの強い症状は出ない

これらの症状は離脱症状ではありませんが、いずれも新たな対処が必要です。デパス®︎をやめた後でこのような症状が現れた場合は、できるだけ早く医師に相談しましょう。

おわりに:身体がデパス®︎に慣れた状態で突然やめると、離脱症状が起こることがある

デパス®︎に限らず、長期にわたって服用する薬は、飲み続けるうちに身体は薬がある状態に慣れてしまいます。この状態を身体依存と言い、身体依存の状態で突然薬を飲むのをやめると、離脱症状と呼ばれるさまざまな症状が現れます。

デパス®︎では、不安や不眠、イライラや焦燥感などが起こります。このような離脱症状を防ぐためには、薬をいきなりやめるのではなく、ゆっくりと減薬していくことが必要です。

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