記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/10/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
COPDとは、肺の生活習慣病とも呼ばれ、肺の機能が少しずつ低下していく疾患です。原因となるものはさまざまですが、いずれも有害物質などの環境要因によるところが大きいため、生活習慣病と呼ばれています。
では、COPDの最大の原因となる有害物質は何なのでしょうか?また、他の原因としてはどんなものが考えられるのでしょうか?
COPDとは「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」の略で、日本語では「慢性閉塞性肺疾患」と呼ばれています。「肺の生活習慣病」とも言われ、タバコの煙などの有毒ガスや有毒な粒子に長期間さらされることで発症する慢性かつ進行性の気管支・肺の疾患です。
以前は咳や痰が多くなる「気管支炎」と、呼吸困難の原因となる肺組織の破壊「肺気腫」に分類されていましたが、今ではCOPDとしてまとめられています。自覚症状は初期には現れにくく、炎症や肺組織の破壊が進行してから慢性的な咳や痰、動くときの息苦しさ(労作時呼吸困難)、呼吸時のゼーゼー音などとして現れます。
初期には自覚症状が出ないだけでなく、胸部レントゲン検査によっても異常が検出されにくかったため、進行してから発見されることが多く、そのため過去には患者数が実際よりも少なく数えられていたのではないかと考えられています。多くは50歳以上になってから症状が現れて病院に行き、そこで初めて発覚するようです。
COPDの主な原因はタバコの煙で、発症者の90%以上が喫煙者であるというデータもあります。さらに、自分で吸っている人だけでなく、周囲でタバコの煙を吸い込んでしまう(受動喫煙)人も発症率が上がることがわかっています。タバコの煙には4,000種類以上の化学物質が含まれていて、そのうち人体に有害なものだけを見ても200種類も含まれているのです。
タバコの有害物質は、主流煙よりも副流煙に多く含まれていることもわかっています。フィルターを通さないこと、燃焼温度が低いことで有害物質が分解されず、主流煙の約100倍もの濃度で含まれているのです。そのため、自分で吸っている人よりも、近くにいて強制的にタバコの煙を吸い込まざるを得ない受動喫煙の人の方がCOPDを発症するリスクが高くなります。
しかも、タバコの煙の粒子は非常に小さく、肺の奥まで入り込みやすいという特徴があります。とくに、タバコの三大有害物質と呼ばれるニコチン・タール・一酸化炭素は吸い込むと気道や肺を傷つけながら入り込んでいきますので、炎症を起こしたり、細胞が破壊されたりする原因になります。
一般的には、若いうちから喫煙を始めた人や喫煙年数が長い(20年以上)人、1日に吸うタバコの本数が多い(20本以上)人ほどCOPDになるリスクが高いとされています。このことから、40代以上の喫煙者に多く見られます。しかし、タバコの有害物質に対する感受性の高さにも個人差がありますので、中には40年以上喫煙歴のあるヘビースモーカーでもCOPDにならない人もいます。
喫煙者全体のうち、COPDを発症する人は15%程度と言われています。しかし、そのままやめずにタバコを吸い続けた場合、10年後にCOPDによって死亡する確率が30%以上増えるとも言われています。これは、タバコの有害物質によって気道や肺がダメージを受けると、その組織や肺機能は元に戻らないためです。
しかし、その時点で禁煙すればそれ以上のダメージは防げますので、COPDを発症する前に禁煙すれば発症リスクが下げられますし、既にCOPDを発症している場合でも、症状がそれ以上進行したり、死亡したりするリスクを下げられます。つまり、いつからでも禁煙すればCOPDに関するさまざまなリスクを下げられるのです。
COPDの原因は、タバコ以外にもあることがわかっています。他には以下のような原因が考えられます。
タバコの有害物質と同じように、PM2.5などの粒子の小さい大気汚染物質・化学物質は気道や肺の奥まで入り込み、傷つけ、炎症を引き起こします。さらに、こうした化学物質は体内に蓄積されていき、多くなればなるほどCOPDのリスクが高くなります。
また、低出生体重児で生まれて肺機能が弱い、幼児期に慢性肺疾患にかかったことがある、加齢によって肺機能が低下している、気道に炎症を起こす感染症にかかったことがあるなどの要因があるとCOPDにかかりやすくなります。
COPDの検査(スパイロ検査)は「スパイロメーター」という器械を使って行います。この器械では呼吸機能を検査することができ、肺活量と息を吐くときの空気の通りやすさを調べます。喫煙歴が長い人や、周囲に喫煙者がいて最近息苦しさを感じるようになってきたという人は、ぜひ一度検査を受けてみましょう。
スパイロ検査は、マウスピースをくわえて呼吸をするだけなので、痛みや食事制限などはなく、5〜10分程度で終わります。主に以下の2つの項目について検査を行い、算出された値と同年代の標準値によって病状を診断します。
1秒量(FEV1)を努力肺活量(FVC)で割った1秒率(FEV1%またはFEV1/FVC)が70%未満であると、COPDと診断されます。さらに、COPDの病状が進行していくと1秒量が同年代・同じ性別・似た体格の標準的な値(予測値)よりも低くなっていくことから、病状は1秒量の予測値に対する割合(%FEV1)で以下のように表されます。この割合が低くなっていくほど、肺機能が衰え、病状が進行しているとわかります。
この検査以外にも、長期の喫煙歴などのリスク因子、労作時呼吸困難や慢性的な咳・痰など、総合的に判断してCOPDかどうかの診断を行います。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の主な原因はタバコの煙です。とくに、タバコの有害物質は副流煙の方により多く含まれていますので、COPDの発症リスクは自分で喫煙をする人よりも受動喫煙の人の方が高いとも言われているのです。
その他、遺伝的要因や感染症などもCOPDのリスク因子になります。喫煙歴が長い人や周囲に喫煙者がいる人で最近息苦しいなどの症状があれば、ぜひ一度検査を受けてみましょう。