ちょっとした動きでも息苦しい…。これってCOPDの症状?

2023/3/22

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

COPDとは、歩くなどのちょっとした動きでも息苦しさ、疲れを感じるようになる疾患です。この記事では、COPDの詳しい症状や発症の仕組み、検査・治療の必要性について解説します。

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この息切れ、もしかしてCOPDの症状?

COPDは「慢性閉塞性肺疾患」のことで、肺や気管、気管支に起こる疾患のひとつです。発症すると、以下のような症状が現れます。

  • 長めの階段を登ると、きついと感じたり、息切れが起こったりする
  • 少し早めに歩いたり、同世代の人と同じ速度で歩こうとすると辛く、息切れする
  • 昔から、冬になると朝方に咳や痰が出るようになる

特に喫煙習慣のある40代の人にこのような症状がみられた場合、COPDが強く疑われます。

COPDの症状が出る仕組みは?

COPDは、タバコの煙や汚染された空気を長期間吸い続けたことで、空気の通り道である気管や細(さい)気管支、肺に慢性的な炎症が起こった状態です。

口や鼻から体内に取り込まれた有害な煙や大気は、まず肺までの空気の通り道である気管支、細気管支に炎症を起こします。炎症を起こした細気管支は、痰が溜まって空気の通り道が狭くなるため、徐々に呼吸時に「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった呼吸音が聞かれるようになります。

炎症が気管支・細気管支から肺胞(肺の中で酸素と二酸化炭素の入れ替えを行っている部分)にまで及ぶと、肺胞壁が崩れて弾力を失います。その結果、肺まで届いていたわずかな酸素もうまく取り入れられなくなり、運動中に苦しくなったり、息切れすることが多くなります。

また、息を吸って酸素を取り込めても、肺胞での二酸化炭素がうまくいかず吐き出せない状態になるため、体の酸素濃度がどんどん低下して呼吸が難しくなっていきます。このように、長期間にわたって徐々に呼吸器官に炎症が広がることで、COPDは発症・悪化していきます。

COPDの症状は肺以外にも!

COPDが進行すると、息苦しさから全身の運動量・活動量・食事量が低下し、これに伴って筋力や骨密度の低下や、内臓脂肪型肥満も進行していきます。また、COPDによる呼吸器の炎症によって、炎症性サイトカイン(タンパク質の一種)が増加するため、以下のような全身性の炎症が起こります。

  • 骨格筋機能障害、骨粗鬆症、貧血
  • 抑うつ、睡眠障害
  • インスリン抵抗性によるメタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞、狭心症、脳血管障害の発症

このように、COPDから始まった全身性の体調不良は、さらなる運動量や食事量の低下を招き、全身の機能低下を早めてしまう可能性があります。

定期的な検査を受けて、症状の進行を抑えよう

COPDは、早期に発見・治療を開始することで、症状の進行を抑えることができます。COPDは、スパイロメーターという機器を使って一秒率(いちびょうりつ)という数値を計測することで診断できます。

一秒率とは、大きく息を吸って吐き出した最初の一秒間で、吸い込んだ空気のうち何%を吐き出せているかを数値化したものです。COPDの人は息を吐き出す速度が遅くなる特徴があり、スパイロメーターで計測した一秒率が70%以下であれば、COPDの可能性アリと判断できます。

スパイロメーターの検査は、呼吸器科のある全国の医療機関で受けられます。喫煙習慣のある人や、日常の動作で息苦しさを感じている人は、5年に1回のペースで検査を受けましょう。

おわりに:息切れや息苦しさ、全身の不調はCOPDのサインである可能性があります

長期にわたりタバコの煙や汚染された空気を吸い込むことにより、空気の通り道である気管支や細気管支、肺胞に慢性的な炎症が起こる状態をCOPDと言います。慢性閉塞性肺疾患とも呼ばれるこの状態になると、十分な量の空気を吸い込んだり、肺で酸素と二酸化炭素をスムーズに入れ替えることが難しくなります。喫煙習慣がある人は、症状が現れる前に発見し治療を始められるよう、定期的に検査を受けましょう。

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