血糖値スパイクを防ぐために、食事で気をつけることは?

2019/10/25

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

血糖値という言葉は、糖尿病や生活習慣病の予防などでよく聞かれることでしょう。空腹時の血糖値が増えすぎることはもちろん体に良くないのですが、空腹時の血糖値が健康な人と変わらないのに、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も体に悪影響を及ぼします。
血糖値スパイクは、なぜ体に良くないのでしょうか?また、血糖値スパイクを防ぐために、どんな工夫をすれば良いのでしょうか?

血糖値スパイクが怖いのはどうして?

血糖値スパイクとは、食後に急激に血糖値が上がり、そしてまた急激に下がることを言います。健康な人でも食後には血糖値が一時的に上がり、そしてまたもとの値まで下がるものですが、普通は血糖値の上がり方も下がり方も穏やかで、急激と言うような激しいアップダウンは引き起こしません。

このように血糖値が適正に保たれているのは、食事から血液中に取り込まれた糖分を細胞などに取り込む「インスリン」というホルモンの働きによります。しかし、生まれつきの体質や生活習慣の乱れなどが原因で、細胞が糖を吸収する能力が低下してしまい、インスリンが分泌されても血中の糖をうまく細胞に送り込めないことがあります。

すると、食事を食べた後に血糖値をうまく取り込めず、急上昇してしまいます。そこで、体はインスリンをどんどん分泌して血糖値を下げようとします。この大量に分泌されたインスリンによって、血糖値は急降下します。この急上昇と急降下の様子をグラフに書くと「スパイク(くぎ)」のように見えるため、「血糖値スパイク」と呼ばれています。

血糖値が急上昇と急降下を繰り返すと、血管の内壁の細胞から大量の活性酸素が発生することがイタリアの研究によってわかりました。活性酸素は細胞を傷つける有害物質ですから、血糖値の急上昇と急降下を繰り返すと、細胞がダメージを受けてしまいます。実際に、急上昇と急降下を繰り返す「血糖値スパイク」の状態を2週間続けたところ、細胞のおよそ4割が死滅してしまいました。

実際の人体には、傷ついた細胞を修復しようとする働きもありますので、血糖値スパイクによってダメージを受けた細胞は、免疫細胞によって修復されます。しかし、このときの修復で免疫細胞が血管の内壁の内側に入り込むため、壁はどんどん厚く硬くなるとともに、血管の内側が狭くなります。これが血糖値スパイクによって動脈硬化が進む理由です。

動脈硬化は、進行するとさまざまな生活習慣病の原因になるほか、心筋梗塞や脳梗塞などの生命に関わる疾患を引き起こすリスクを高めてしまいます。ですから、血糖値スパイクは単なる食後の眠気やイライラの原因となるだけでなく、怖い疾患を引き起こす原因となる危険性があるのです。

他にも、インスリンの過剰分泌が体に悪影響を及ぼすことも、最近の研究によってわかってきました。インスリンが多いと、アルツハイマー型認知症の原因のひとつと言われている「アミロイドβ」という脳の老廃物が溜まりやすくなるほか、細胞の増殖を促す働きによってがん細胞の増殖を促進し、がんを発症させてしまう危険性があります。つまり、インスリンが多いと認知症やがんの発症リスクが上がると言えます。

このように、血糖値スパイクはさまざまな重篤な疾患の原因となる危険性がある症状なのです。

食後の血糖値急上昇を防ぐために、食事で工夫することは?

最初にもご紹介したように、食事を摂ると血糖値が上がること自体は、人間なら誰でも起こる正常な反応です。食事をした直後から血糖値が上がり、健康な人であれば適切な量のインスリンが分泌され、食後2時間程度で食べる前と同じ値にまで戻ります。しかし、治療をしていない糖尿病の人は、インスリンが働かないまたは働きにくいため、血糖値が低下しません。

血糖値スパイクの人は、食後の血糖値上昇が急激に、そして高い値まで上がりますが、空腹時の血糖値は健康な人と同じくらいの値にまで下がります。このようにインスリンを過剰分泌させないためには、血糖値が急激に上がりにくい食べ物を食べたり、食事の食べ方を工夫したりすることが重要です。

そこで、まずは食事の食べ方の工夫を3つのポイントから見ていきましょう。

ゆっくりよく噛んで食べる

食事を食べるときは、ゆっくりよく噛んで食べることを心がけましょう。1口を30回噛み、1回の食事に最低でも15分はかけて食べるのが良いとされています。5分や10分で食事が終わってしまう人は、噛まずに飲み込むように食べてしまっている可能性があり、血糖値の急上昇だけでなく、胃や腸などの消化管に大きな負担をかけてしまいます。

ゆっくりよく噛んで食べるためには、食物繊維の豊富な野菜・きのこ・海藻などを積極的に食べると良いでしょう。また、一口食べるたびにテーブルに箸を置き、一呼吸置いて誰かと会話をしながら食べるのもおすすめです。

食べる順番を工夫する

また、同じメニューでも、食べる順番を変えるだけで血糖値の上昇を抑えられることがあります。前述の野菜やきのこ、海藻など食物繊維が多い食べ物は、糖分の消化・吸収を穏やかにする働きがありますので、できるだけ食事の最初に食べると良いでしょう。これらの食物繊維をある程度食べてから、メインの肉や魚を食べ、最後にご飯やパンへと食べ進みます。

このように食べる順番を変え、食物繊維を最初に食べるようにすると、満腹感を感じやすくなるため、無理せずご飯の量を抑え、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。

油や酢を上手に利用する

一般的に、脂質でカロリーが高いと敬遠されがちな油ですが、すぐに吸収される糖質や、比較的早めに消化・吸収されるタンパク質と比べ、消化・吸収にはもっとも時間がかかるため、食後の血糖値はそれほど急激に上がりにくいことがわかっています。ですから、糖質と脂質を同時に摂取すると、血糖値スパイクを抑えられます。

つまり、パンにバターを塗るのは、血糖値の急上昇を防ぐという面から見ると良い効果が期待できます。また、ただのかけそばやかけうどんより、天ぷらそばやたぬきうどんなどを食べるとやはり血糖値の急上昇を抑えられます。

さらに、血糖値の急上昇を抑えられ、油よりもカロリーが低い調味料として、酢を摂取するのもおすすめです。酢はラーメンやチャーハン、餃子や春巻きなど糖質の多い中華料理によく合うことから、中華料理店の卓上にはよく置かれていますので、ぜひ利用しましょう。中華ではなく和食や洋食の場合、酢の物やピクルスなどを最初に食べておくのもおすすめです。

酢には高血圧や血中の脂質を低下させる働きもありますので、生活習慣病の予防にも効果が期待できます。ただし、これらはあくまでも「食後の血糖値の急上昇を防ぐ」というだけですので、摂りすぎた糖質や脂質を排出してくれるわけではありません。脂質や糖質は摂りすぎないよう、適正量を心がけましょう。

血糖値を上げにくい食べ物は?

血糖値スパイクを防ぐためには、血糖値を上げにくい食べ物から食べることが重要です。カロリーが高いものを食べ過ぎると確かに太りやすいのですが、食後の血糖値を上げやすいものとカロリーが高いものは必ずしも一致しません。というのも、前述のようにもっともカロリーの高い脂質は、もっとも食後の血糖値を上げにくい性質があるからです。

三大栄養素と言われる炭水化物(糖質)、タンパク質、脂肪(脂質)のうち、もっとも血糖値が上がりやすいのは炭水化物です。なかでも食物繊維の少ない炭水化物は血糖値を上げやすく、食物繊維の多い炭水化物は血糖値の上昇が比較的穏やかであることがわかっています。たとえば、同じパンでも白いパンよりライ麦パンの方が食物繊維が多いため、血糖値が急上昇しにくいのです。

また、タンパク質は炭水化物よりは血糖値を上げにくいですが、脂質よりは血糖値を上げやすいことがわかっています。このように血糖値を上げやすい食品を「高GI食品」、血糖値を上げにくい食品を「低GI食品」と呼んでいます。オーストラリアのシドニー大学の定義によれば、グルコース(ブドウ糖)のGI値を100としたとき、GI値が70以上の食品を高GI食品、56~69の食品を中GI食品、55以下の食品を低GI食品としています。

高GI食品を摂取すると一気に血糖値が上がるため、インスリンの分泌が追いつかず血糖値が急上昇したり、この急上昇した血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌されて血糖値の急降下が起こったり、という血糖値スパイクが起こりやすくなります。逆に、低GI食品では摂取後の血糖値上昇が穏やかなので、急激に血糖値が上昇したり、インスリンが大量分泌されたりすることなく、適度なインスリン量で穏やかに血糖値がもとの値に戻っていきます

とはいえ、白米や食パンなど、炭水化物の多くは中~高GI食品に含まれます。炭水化物を一切食べないことは、栄養バランスが悪くなるだけでなく、満腹感を得にくく、かえってタンパク質や脂質の摂りすぎを招きかねません。ですから、栄養バランスを大切にするとともに、低GI食品から食べ始め、高GI食品はなるべく後に食べるというように順番を工夫すると良いでしょう。

おわりに:血糖値スパイクを防ぐために、食物繊維など低GI食品から食べ始めよう

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、インスリンが大量に分泌され、そのために血糖値が急降下する現象のことです。この急上昇と急降下は有害物質の活性酸素を発生させ、細胞にダメージを与え、動脈硬化の原因になります。

こうした血糖値スパイクを防ぐためには、血糖値の上がりにくい低GI食品を積極的に食べるとともに、低GI食品を食事の最初に食べると良いでしょう。また、ゆっくりよく噛んで食べることも大切です。

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