ちゃんと寝たはずなのに、日中の眠気が襲ってくるのはどうして?

2019/9/29

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

昨日、十分に寝たのに、昼間に眠気が襲ってきて仕方ない、という状態になることがあります。前日の睡眠不足があればはっきりとした原因がわかるのですが、前日の睡眠はしっかりとっている場合、なかなか原因がわからなくて困ってしまうこともあります。

このような突然と思われる眠気の原因には、どのようなことがあるのでしょうか?生活習慣と過眠症、2つのポイントから解説していきます。

ちゃんと寝たのに眠いのは生活習慣のせい?

ちゃんと寝たのに眠いという場合、生活習慣が原因となっている場合があります。一時的な生活習慣と慢性的な生活習慣の場合が考えられますので、それぞれについて詳しく見ていきましょう。

一時的な生活習慣の場合

徹夜で仕事やレポートをした、朝まで飲んだり遊んだりしてそのまま出勤・登校した、深夜にネットサーフィンをして睡眠時間が極端に短い状態で仕事や学校に出かけたなど、一時的な行動が原因で、翌日だけでなく翌々日以降になっても日中のだるさや眠気が抜けないことがあります。翌日は単に睡眠時間が不足していて眠くなりますが、睡眠の質も落ちるため、翌々日以降までだるさや眠気が残ることがあるのです。

とくに、アルコールを過剰摂取した場合、睡眠中に目が覚める「中途覚醒」の原因になってしまうこともあります。アルコールで眠くなることもありますが、この眠気は脳が一種の麻酔状態に陥っているだけのことで、自然にやってくる眠気とは違うのです。そのため、アルコールが代謝されてこの麻酔状態が切れてしまうと体が急に目覚めてしまいます。これが中途覚醒です。

中途覚醒が起こる場合、中途覚醒前の睡眠は麻酔で強制的に眠っているのと同じ状態です。このため、通常の睡眠中に行われる体の活動や休息までもストップして、結果として睡眠の質が低くなってしまうのです。

また、就寝前にパソコンやスマートフォンを使いすぎるのも、スクリーンから発されるブルーライトが交感神経を活性化させてしまい、睡眠の質を下げてしまったり、なかなか寝つけなくなってしまったりします。そのため、できるだけ就寝前には触らないようにしましょう。

慢性的な生活習慣の場合

長時間の残業や、帰宅後に夜更かししてゲームをするなどの睡眠不足が一定期間続き、日中の眠気が慢性化してしまっている状態です。睡眠時間そのものは不足していなくても、寝る前のアルコールが習慣になっている場合も、前述のような睡眠の質の低下が慢性化してしまうため、眠気が続いてしまっている可能性があります

このような悪い習慣は自分でなかなか気づきづらいことも多いので、ぜひ意識して数日から数週間、自分の睡眠の習慣を見直してみることも大切です。

また、思い当たる原因が仕事だけという場合、単に労働時間が長くて十分な睡眠時間がとれないだけでなく、ストレスが原因で睡眠不足や不眠が重症化することもあります。たとえば、帰宅しても明日の仕事が気になってあまりリラックスできないという場合は、体もなかなかリラックスできず、睡眠の質を高めるための副交感神経がうまく働きません。

このように長期間にわたってストレスの負荷が高い状態が続くと、不眠症などの重篤な状態に進行してしまう可能性もありますので、十分に注意しましょう。

寝たはずなのに眠いのは病気の場合もあるの?

十分に寝ても日中に耐えられないような強い眠気が生じる場合、過眠症という疾患の可能性があります。過眠症には「ナルコレプシー」「特発性過眠症」「反復性過眠症」の3つがあり、それぞれ以下のような特徴があります。

ナルコレプシー
世界で1000人から2000人に1人の割合で見られ、10代で発症することが多い
日中の耐え難い眠気と居眠りが繰り返して生じるが、長くても30分程度と短く、目覚めれば一時的にすっきりする
笑ったり怒ったりすると突然体の力が入らなくなり、ひどい場合はへたり込む
寝入りばなに金縛りに遭ったり、現実と区別がつかないような夢を見たりする
特発性過眠症
10代~20代で発症することが多く、有病率はナルコレプシーよりやや少ない
昼間の眠気と居眠りが主な症状で、居眠りは1時間以上続き、目覚めてもすっきりできない
夜の睡眠時間が10時間以上など、著しく長くなることがある
反復性過眠症
非常にまれな疾患で、ほとんど10歳代で発症し、女性より男性に多い
強い眠気を生じる傾眠期(3日~数週間)と、自然に回復してまったく症状がなくなる間欠期を繰り返す
傾眠期の生じる時期は不定期だが、風邪や疲労などが誘因となって生じることが多い

また、上記のようなはっきりとした疾患による過眠症を「中枢性過眠症」と言い、生活習慣のように疾患によって直接眠気が引き起こされるわけではない場合を「症候性過眠症」と言います。症候性過眠症には、中枢性過眠症のような特徴的な症状はありません。

過眠症の原因は?

上記に挙げた中枢性過眠症の原因は、いまだにはっきりとわかっていません。生活習慣にはとくに問題がない人も多く、脳の何らかの機能障害であると考えられています。しかし、症候性過眠症の場合、その原因は睡眠の質が下がることによる睡眠不足だと考えられます。

とくに、仕事や趣味などが原因で慢性的な睡眠不足に陥っている「睡眠不足症候群」は非常に多く、中でも仕事による睡眠不足が原因の場合は本人も気づいていないことも多いため、日本の人口の1割が発症していると言われています。

その他の症候性過眠症には、以下のような原因が考えられます。

いびき・無呼吸
睡眠時無呼吸症候群を引き起こす
むずむず脚症候群
寝るときに足が火照る、足がむずむず・チクチクしてじっと座っていられないなど
睡眠相後退症候群
早く寝ようと思っても真夜中を過ぎないと眠れず、起床は正午近くになるなど、リズムが崩れてしまう
睡眠時随伴症(パラソムニア)
睡眠時に起こる異常行動で、入眠時に大声をあげる・腕を回す・突然歩き出すなどが見られる

過眠症の可能性がある場合の治療法は?

過眠症と考えられる日中の眠気は、1日に何度も症状が起こり、しかも毎日その症状が続きます。日中の強い眠気は家事・勉強・仕事の作業効率を下げてしまい、日常生活や社会以下つに支障をきたしたり、運転中の眠気が交通事故を引き起こしたりする可能性もあります。3カ月以上こうした過眠症状が続く場合は、過眠症の疑いが強くなりますので、早めに睡眠外来などを受診しましょう。

過眠症の治療法は、原因によって以下のように異なります。

疾患による過眠症
原因がはっきりしないナルコレプシー・特発性過眠症など
薬物療法により、睡眠発作や情動脱力発作を抑える
症候性過眠症
それぞれの原因疾患に対する治療を行う
いびき・無呼吸の場合、肥満によるものなら肥満の改善を行い、そうでないなら睡眠時のマウスピースの着用などを行う
睡眠不足症候群による過眠症
慢性的な睡眠不足が原因なため、まず休日などに十分な睡眠をとる
その後、できる範囲で学業や仕事などの環境調整を行い、睡眠の時間と質を確保できるようにする

おわりに:ちゃんと寝ても眠いのは、睡眠の質が下がっている可能性が高い

前日にちゃんと寝たはずなのに、日中にいつまでも眠いという場合、その睡眠の質が下がっている可能性があります。一時的な生活習慣によるものなら、十分な睡眠をとるうちに日中の眠気も消えていきますが、いつまでも日中の眠気がとれない場合、過眠症かもしれません。

とくに、3カ月以上日中の眠気が続く場合、過眠症の可能性が高くなります。薬物療法や生活指導などの治療が行えますので、早めに睡眠外来などを受診しましょう。

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