朝起きられないのは低血圧のせい?改善するには?

2019/11/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

朝、なかなか布団から起き上がれないという悩みを抱えたことがある人は多いと思います。前日にいつもより夜更かしをしてしまった、体調が悪くて十分眠れなかったなどの理由がある場合は数日で元に戻りますが、いつもいつも朝起きられない場合、何かほかの原因がありそうです。

よく、低血圧の人は朝に弱いと言われますが、低血圧だけが朝起きられない原因なのでしょうか?朝起きられない原因と、その改善方法をご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

朝起きられない原因として考えられることは?

朝起きられない原因は、疾患から一時的な睡眠不足までさまざまですが、特別な疾患以外の原因として考えられるものは、以下の3つあります。

体内時計が乱れている
寝つきが悪くなったり、熟睡できなかったりして、目覚めが悪くなる
体温や代謝のリズムも乱れたり、ホルモンの分泌に悪影響が現れたりすることも
体内時計が乱れるのは、不規則な生活が原因
そもそもの睡眠時間が足りない
短い睡眠は目覚めが不快になる
休みの日にお昼ごろまで寝て平日の睡眠不足を補う「寝だめ」も目覚めにくくなる原因
休みの日に平日より2時間以上長く寝ると、体内時計が乱れて時差ボケのような状態になる
冷えが原因で熟睡できていない
睡眠と体温には深い関係があり、体の内部の「深部体温」が昼は高く、夜は低くなる
夜に深部体温が下がり始めると眠くなり、明け方に上がり始めると目が覚めやすくなる
睡眠中に体が冷えて体が冷えて表面体温が下がると、深部体温は下がりにくくなる

体内時計は生物時計とも呼ばれ、地球の自転に合わせて約24時間を1周期とし、体内環境を睡眠と活動に切り替える役割を担っています。しかし、人間の体内時計の周期は24時間よりも若干長いため、定期的に太陽光を浴びて外界の24時間の周期に合わせなくてはなりません。

したがって、寝る時間も起きる時間もバラバラといった不規則な生活を送っていると、体内時計が乱れてこの周期が上手く合わせられなくなります。同様に、休日に寝だめしてしまうのも、体内時計のサイクルを上手く調節できない一因となります。

睡眠と活動のサイクルに関係するもうひとつの要因として、体の内部の「深部体温」が挙げられます。朝すっきりと目覚めるためには深部体温が上がり始めなくてはならず、そのためにはまず夜間の睡眠中に深部体温が下がりきらなくてはならないのです。ところが、気温が低く体の表面の体温が下がると筋肉が収縮し、深部体温は逆に下がりにくくなります。

このように、さまざまな要因によって体の活動と睡眠のサイクルが乱れることが、朝すっきりと目覚められない原因になっていると考えられます。

低血圧も朝起きられない原因になる?

朝起きられない疾患以外の原因として、低血圧も考えられます。低血圧の人は頭痛・肩こり・耳鳴り・不眠・胃もたれ・動悸・立ちくらみなどのほか、朝起きられないという不調もみられることがあります。とくに、こうした症状は比較的若い女性にみられやすいと言われています。

しかし、高血圧の場合と異なり、低血圧には有効な薬物療法が少ないのが問題です。しかも、朝だけが低血圧で日中は逆に高めの血圧を示す人もいるなど、一概に血圧を上げる薬を使えばいいというわけでもなく、薬を処方するにもそのさじ加減が難しいのが現状です。

低血圧には、以下の3つのタイプがあります。

本態性低血圧
多くは体質によるもので、とくに何らかの疾患があるわけではないが、低血圧である
最大血圧が100より低い
起立性低血圧
ベッドから起き上がる、椅子から立ち上がるなどの際に急にふらつく
最大血圧が20以上急に下がることでふらつく
二次性低血圧
他の疾患や薬の作用で低血圧になったもの
心臓や甲状腺の疾患、糖尿病などで起きやすい
食後に末梢血管が拡張して起こる食後低血圧もここに分類される

患者数が多いのは、とくに疾患や原因がない「本態性低血圧」で、朝起きられない以外にも頭痛や耳鳴り、全身倦怠感などの症状が現れます。また、この本態性低血圧に起立性低血圧や食後低血圧が重なることもあります。

朝起きられないのはどうすれば改善できる?

まずは、睡眠と活動のサイクルの乱れに関する3つの原因から見ていきましょう。

体内時計が乱れている場合
不規則な生活習慣を整え、就寝時刻と起床時刻を一定にする
決まった時刻に食事や運動を行う
朝起きたらカーテンを開けて窓際で朝食を食べる、通勤時は日なたを歩くなど、朝に積極的に太陽光を浴びる
目覚ましライトを使う
寝室が遮光カーテンの場合、寝る前に10cm程度隙間を開けておき、朝の太陽光が入り込むようにする
睡眠時間が足りていない場合
日頃から睡眠時間を充分にとり、休日も寝すぎない(平日より2時間以上多くならない)よう気をつける
毎朝、同じ時刻に起きるようにするとともに、仕事のある日の就寝時刻を30分早めてみる
どうしても休日に寝だめしたい場合、まず一度平日と同じ時刻に起き、太陽の光を浴びて朝食を食べ、体内時計をリセットした後で午前中に寝る
冷えが原因で熟睡できていない場合
日中は深部体温を高め、睡眠中は下げるという体のリズムを整える
体温がもっとも高くなる夕方に、軽く汗ばむ程度の運動をする
入浴は、ちょっと熱め(41度くらい)に15~20分くらい半身浴し、軽く汗ばむ程度に体を温める
寝るときに腹巻きなどをして、内臓を冷やさないよう気をつける
寝るときの冷え対策として、厚着ではなく毛布を体の下に敷くなど、寝具で調節する

また、低血圧で朝起きられない場合は、生活習慣の改善が役立つといわれています。例えば、以下のような方法がおすすめです。

  • 早寝早起きの習慣になるよう、生活時間を前倒しにしてみる
  • 起きたらすぐに太陽の光を浴び、コップ1~2杯の冷水を飲む
  • 熱いシャワーを浴び、交感神経の働きを活発にしてスムーズに血圧を上げる
  • ウォーキングなど、適度な有酸素運動を習慣にする

低血圧で朝起きられない場合、活動に必要なレベルにまで血圧をスムーズに上げられるよう、自律神経の働きを高めることが大切です。そのため、上記に挙げた方法などを利用し、自律神経の働きを促していきましょう。

おわりに:朝起きられないのは体内時計や体のサイクル、低血圧などがおもな原因

朝起きられない原因は、低血圧のほかにも体内時計や睡眠時間の不足、夜間の冷えで熟睡できていないなどが考えられます。人間の体内時計は1日の24時間よりも少し長いため、定期的に太陽の光を浴びてリセットする必要があるのです。

また、低血圧も朝起きられない原因になりますが、こちらは自律神経の働きを促すことが大切です。有酸素運動や朝のシャワーなど、自分なりの工夫をしてみましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

体内時計(9) 寝起き(12) 低血圧(20) 寝起きをよくする(1)