リンデロン®︎が処方されたら、どんなことに気をつければいいの?

2019/12/5

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

私たちの体には、さまざまな働きをする「ホルモン」という物質がたくさん存在しています。そのうちの1種類が「ステロイドホルモン」というもので、ステロイドホルモンの作用を増強して合成した薬を「ステロイド」と呼んでいます。

そんなステロイド薬の1つに、リンデロン®︎という薬があります。リンデロン®︎はどんなときに使われ、どんな副作用や注意点があるのでしょうか?

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

リンデロン®︎ってどんな薬?

リンデロン®︎はいわゆるステロイド薬の一種で、炎症をしずめ、アレルギーを抑える効果があります。そのため、膠原病・ネフローゼ・関節リウマチ・重い喘息・酷いアレルギー症状・めまい・耳鳴りなど、炎症性・免疫系・アレルギー性などの疾患に広く使われています。主な効果としては、以下のようなものがあります。

慢性副腎不全(アジソン病)
  • 副腎皮質ホルモンが不足しているとき、補充療法として用いる
免疫系の疾患
  • 膠原病・関節リウマチ・ネフローゼ・潰瘍性大腸炎など
  • 免疫系が関係している炎症性疾患を改善する
アレルギーほか、炎症性の疾患
  • 喘息・湿疹・アトピー・アレルギー性鼻炎・結膜炎・角膜炎など
  • その他、各科領域における炎症性の疾患に対して用いるが、一部は外用剤が無効な重症例に限ることもある
その他の疾患
  • メニエール病(めまいや耳鳴り)・顔面神経麻痺・重症筋無力症・さまざまな血液系疾患
  • 一部の腫瘍・臓器移植後の拒絶反応の抑制・注射によるパルス療法の補助など

ステロイド(ステロイドホルモン)は別名「副腎皮質ホルモン」とも呼ばれ、左右の腎臓の上にある「副腎」という器官で産生・分泌されます。代表的なステロイドホルモンに「コルチゾル」というものがあり、糖や脂肪の代謝に関わったり、体液の維持に働いたり、免疫系を調整したりと、体内で重要な役割を果たしています。

このステロイドホルモンの働きを強めて合成したものがステロイド薬で、医薬品として一定量以上を用いることで、優れた抗炎症作用・抗アレルギー作用・免疫抑制作用などを発揮します。リンデロン®︎は中でも長時間型の強力なステロイド薬ですが、電解質の代謝作用は弱いため、むくみや血圧の上昇を招くことが少ないというメリットがあります。

リンデロン®︎で起こりうる副作用は?

ステロイド薬は比較的副作用が起こりやすいとされますが、リンデロン®︎も例外ではなく、服用量や服用期間によってその出方が異なります。とくに、多めの量を長期間服用していると、さまざまな副作用が出やすくなることがわかっています。場合によっては、副作用に速やかに対処するため、入院が必要になることもあります。このため、治療が長期間になるときは、定期的に決められた検査を必ず受けましょう。

飲み始めに現れる副作用としては「イライラ感・不眠・消化不良・下痢・吐き気・食欲増進」などがあります。服用が長くなるに従い、「ニキビ・むくみ・生理不順」などが起こることもあります。他にも軽い副作用としては「食欲不振・毛深くなる・脱毛」などが見られますが、軽い副作用の場合、疾患によっては治療の方を優先すべきときもあります。

長期服用で現れる副作用の中でも、特徴的なのが「脂肪の異常沈着」です。多めの量を長期間続けると、かなりの頻度で生じ、ムーンフェイスと呼ばれる顔のふくらみや、肩やお腹が太る症状が見られます。しかし、これは治療が終了してステロイド薬を減薬・中止すれば徐々に元に戻っていきますので、それほど心配はいりません。

そのほかに起こる副作用として、頻度は高くありませんが、大量または長期の服用で「副腎不全・ウイルス性肝炎をはじめ各種感染症の誘発・血糖値上昇・骨が弱る・胃潰瘍・気分の落ち込み・眼圧上昇・動脈硬化・血栓症」などが生じる場合があります。このうち、副腎不全の状態のまま急に投薬を中止すると重い反発症状が出ることもあり危険なため、減薬や中止には必ず医師の判断を仰ぎましょう。

めったに現れませんが、考えられる重い副作用としては、以下のようなものが考えられます。

重篤な感染症
  • 発熱・倦怠感・喉の痛み・咳や痰・息苦しさ・嘔吐・下痢・皮膚発赤
  • 小水疱・ピリピリとした痛み・水ぶくれ・できもの
副腎不全・糖尿病
  • だるさ・吐き気・下痢・喉が渇く・水をがぶ飲みする・多尿・食欲増進・太る
消化管潰瘍・胃腸出血
  • 胃痛・腹痛・吐き気・嘔吐・吐血(コーヒー色のものも)・下血(血液便や黒いタール状の便)
膵炎
  • 吐き気・嘔吐・上腹部~背中の激しい痛み
抑うつ状態
  • 憂うつになる・気分がひどく落ち込む・やる気が出ない
  • 悲観的になる・不安感・不眠
骨粗鬆症
  • 骨がもろくなる・背中や足腰の痛み・骨折
重篤な目の症状(緑内障や白内障など)
  • 見えにくい・霞んで見える・眩しい・視力低下・目の痛み・頭痛・吐き気
血栓症
  • 手足(とくにふくらはぎ)の痛みや腫れ・むくみやしびれ・突然の息切れ・息苦しさ
  • 深呼吸で胸が痛くなる・急に視力が落ちた・視野が欠ける・目が痛む・頭痛
  • 片側半身のまひ・うまく話せない・意識が薄れる

上記のような症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

リンデロン®︎を服用するときに気をつけることは?

どんな薬でもそうですが、持病やアレルギーがある場合や、服用中の薬がある場合は、必ず診察の際に医師に伝えておきましょう。また、水ぼうそうやはしかにかかったことがない人も医師に伝えておく必要があります。リンデロン®︎はステロイド薬であることから、長期間の服用で副作用が出やすくなりますので、長期の治療になる場合、副作用や注意点についてとくによく説明を聞いておきましょう

飲み合わせに注意する必要がある薬は、主に以下の7種類です。

リンデロン®︎の効果が薄れるかもしれない薬
  • 抗けいれん薬:フェノバルビタール、フェニトイン
  • 結核の薬:リファンピシン
相互作用を起こす可能性がある薬
抗凝血薬:ワルファリン
アスピリンなどのサリチル酸誘導体
糖尿病の薬、利尿薬など

また、長期もしくは大量服用中、中止後6ヶ月以内の人は「生ワクチン」の接種を控える必要があります。リンデロン®︎は免疫反応を抑えるため、細菌に感染した場合に重い症状を発症する可能性があるからです。

同様に、リンデロン®︎を使用すると疾患によっては症状が悪化する可能性がありますので、以下のような疾患などがある場合は、リンデロン®︎を使用することのメリットとデメリットを十分に考慮しながら慎重に使っていきます。

  • 有効な抗菌薬がない場合の感染症、全身の真菌症、結核、単純疱疹性角膜炎など
  • 肝炎ウイルスを保有している
  • 水ぼうそうもしくははしかの既往がなく、また予防接種も受けていない
  • 胃潰瘍、精神疾患、緑内障、白内障、高血圧、電解質異常など
  • 手術後である、血栓症、心臓病、糖尿病、骨粗鬆症など

このように、服用している最中は感染症にかかりやすいことから、外出のときにはマスクをし、うがい・手洗いを忘れないなど、細菌やウイルスによく気をつけましょう。できれば人混みを避け、もし発熱や喉の痛み・咳や痰・皮膚の発疹や発赤・水ぶくれなどが現れた場合は、すぐに主治医の診察を受けましょう。万が一、大怪我や手術・予防接種や皮内反応テストなどを行う場合は、必ずリンデロン®︎を飲んでいることを伝え、感染症のリスクを最小限に抑えましょう。

症状によって飲む量や飲み方が違いますので、決められた飲み方を守りましょう。隔日服用や間欠服用などの変則的な飲み方はとくに忘れやすいので、注意が必要です。量が非常に多くなる場合は、入院が必要なこともあります。また、長期服用時はとくに「自己判断で止めない」ということが重要になります。ステロイド薬を長期服用中に急に中止すると、反発的な重い症状が出ることがあるためです。中止や減薬は必ず医師と相談の上、指示を守って時間をかけながらゆっくり行いましょう。

おわりに:リンデロン®︎はステロイド薬なので、副作用に十分注意しながら使いましょう

リンデロン®︎はステロイド薬の一種ですから、多めの量を長期間服用するにしたがって副作用が出やすくなります。長期服用で多い副作用としてムーンフェイスがありますが、これはステロイド薬を減薬・中止すれば治りますので、それほど心配はいりません。

服用中は免疫機能が低下するため、感染症に十分注意しましょう。また、変則的な飲み方になることもありますので、医師に指示された服用方法をしっかり守りましょう。

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