記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/11/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
カビの一種が作り出したペニシリンは、世界で最初の抗生物質としてよく知られています。抗生物質とは、このように微生物が産生する物質のうち、他の微生物の増殖や機能を抑えるもので、感染症の治療に使われます。
メイアクト®︎もこうした抗生物質の一種で、病原体となる細菌の増殖を抑えます。メイアクト®︎の詳細な特徴や起こりうる副作用、服用時の注意点などについて知っておきましょう。
メイアクト®︎は、はじめにご紹介したとおり、殺菌の増殖を阻害して殺菌的に働き、細菌感染症を治療する薬です。感染症とは、病原体となる微生物が人の体に侵入して悪さをし、その病原体に対して体に備わっている防御システム(免疫)が反応して腫れや発赤、ときに化膿して痛みや発熱などをもたらすものです。病原菌が死滅すれば、これらの炎症反応はしだいにおさまります。
感染症を引き起こす病原体には、細菌のほかにウイルスや真菌(カビ)などが含まれますが、メイアクト®︎はウイルスや真菌には作用せず、細菌に対して作用する薬です。このため、細菌が引き起こす感染症を治療することができます。細菌に対しては幅広く効果を発揮することから、呼吸器や耳鼻科の領域を中心に幅広く使われています。
また、喉の痛みや発熱のある風邪に対しても処方されます。上記のように、インフルエンザなどウイルス性の疾患(風邪を含む)そのものに対しては無効ですが、ウイルス性疾患にかかって免疫機能が低下することで細菌による二次感染を引き起こした場合、または二次感染を予防するために使われることがあります。
専門的には、「セフェム系第3世代の抗生物質」と呼ばれ、細菌の細胞壁(最も外側の「殻」の部分)の合成を阻害し、増殖できないように作用し、結果として細菌の数を減らしていきます。グラム陽性菌にくわえて、大腸菌やインフルエンザ菌(細菌であり、冬に大流行するインフルエンザを引き起こすインフルエンザウイルスとは別物)などのグラム陰性菌にも高い効果を発揮します。
また、他の抗生物質が効きにくい「ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)」や「βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)」に対しても良い効果がみられます。しかし、緑膿菌に対しては効果がありません。副作用が少なく安全性が高いほか、ショックなどのアレルギー症状もペニシリン系の抗生物質と比べて少ないです。
ピポキシル基を持つことから、乳幼児に低カルニチン血症を引き起こすリスクがあります。赤ちゃんや子どもには細粒剤がよく処方されることがあり、一時的な服用ならたいていは問題ありませんが、長期服用時などは念のため注意しておきましょう。
メイアクト®︎の副作用として、比較的多く見られるのは「下痢」です。とくに小さな子どもの場合、便が柔らかくなりやすい傾向があります。これは、抗菌作用によって腸内細菌のバランスが崩れるためであり、服用を終了すれば元に戻りますので、多少柔らかくなる程度ならほとんど心配はいりません。しかし、ひどい下痢が続く場合や、血便が見られるなどの場合は医療機関を受診しましょう。
また、アレルギー症状として、人によってはブツブツした小さな発疹ができることがあり、ときには発熱を伴うこともあります。このような症状が出た場合はいったん服用を中止し、医師に相談しましょう。ショックに至るような重いアレルギー症状(アナフィラキシー)を引き起こすことはまずありませんが、万が一ひどいじんましんや、顔や口の腫れ、ゼーゼーとした呼吸などの症状が現れた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
その他に考えられる重い副作用としては、以下のようなものがあります。これらの副作用が起こるのは極めてまれですが、念のため初期症状などを注意して観察しておきましょう。
また、長期服用時の副作用として、菌交代症(口内炎やカンジダ症)、ビタミンK欠乏症(出血傾向)がみられることがあります。これらの副作用の頻度は非常に低いですが、乳幼児や高齢者など、臓器が未発達または機能が低下している人では比較的出やすくなりますので、十分に注意が必要です。
アレルギーを起こしやすい人や、今まで薬を飲んで発疹などのアレルギー症状を起こしたことがある人、喘息やじんましん・腎臓病などの持病がある人は診察時に医師に伝えておきましょう。また、飲み合わせに注意するためにも、服用中の薬がある人は必ず医師に伝えましょう。
メイアクト®︎は、以前にこの薬でアレルギー症状を引き起こしたことのある人には使えないほか、同じセフェム系の薬にアレルギーのある人に対しても原則として使いません。喘息やじんましんなど、アレルギー性の疾患を持っている場合は慎重に使います。腎臓病など腎機能が低下している人、高齢の人なども副作用が出やすいことから、服用量や服用期間に配慮し、慎重に使用します。
乳幼児は、大人よりも下痢を起こしやすいため、注意が必要です。下痢予防のため、乳酸菌の整腸薬と併用することもあります。さらに、まれですが血液中のカルニチンが減少し、低血糖を引き起こすこともありますので、血清カルニチンが低下する先天性代謝異常がある場合は処方を控えます。この副作用によって尿糖検査が不正確になることがありますので、検査を受ける場合はメイアクト®︎を服用中であることを伝えましょう。
一般的には1日3回、毎食後に飲みますが、症状・年齢・製剤によって用法・用量が異なりますので、医師に指示された飲み方を守りましょう。症状が重いときは、少し多めになることもあります。
錠剤はコップ1杯ほどの十分な水で飲み、子ども用の細粒(ドライシロップ)は、普通、1包を適量の水で溶いてから飲みます。大きい子どもはそのまま飲んでも構いませんが、その場合は水を多めに飲むようにしましょう。
症状によっては少し長めに服用しなくてはならないこともありますが、指示された期間きちんと飲み続けることが重要です。自己判断で飲むのを止めてしまうと、再発したり治りづらくなったりすることがあります。一般的には3~4日程度で治りますが、効果がみられない、かえって悪化した場合は、薬を中止するのではなく、早めに医師に相談してください。
メイアクト®︎は「セフェム系第3世代抗生物質」という分類に属する抗生物質で、ウイルスや真菌には効きませんが、細菌には幅広く効果を発揮します。他の抗生物質が効きにくい耐性菌に対しても効果を発揮するので、広い診療科で使われています。
抗菌作用によって腸内バランスが崩れるため、比較的下痢の副作用は起こりやすいですが、たいていは心配いりません。アレルギー症状や乳幼児の低カルニチン血症などには注意しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。