閉経後のトラブルはどうやって対処すればいいの?

2017/1/23 記事改定日: 2018/6/25
記事改定回数:1回

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

閉経をむかえると体にさまざまな変化が起こります。今までと違うことばかりなので、どんな変化が自然の流れなのか、お医者さんに診てもらったほうがいいのかわからず、混乱することもあるのではないでしょうか。
ここでは、閉経後のトラブルの回避方法を紹介しています。

閉経後に起こりやすいトラブルとトラブルの解決法とは

骨粗鬆症

骨粗鬆症は、歳を重ねるとすべての人に起こりますが、閉経後の女性の方が発症が速いです。50歳以上で骨粗鬆症になる人は、男性だと12人に1人しかいませんが、女性だと3人に1人に上ります。

症状

骨粗鬆症になると、骨、特に手首、股関節または背骨が折れる危険が増します。

自分でできる対策

骨の形成に役立つカルシウムやビタミンDを摂取することで予防や改善ができます。

一般に、30〜50歳の女性には毎日1,000mg、50歳以上の女性は毎日1,200mgのカルシウムが必要と言われています。カルシウムを多く含む食べ物として、ミルクやヨーグルトといった乳製品、大豆、ブロッコリーなどがありますが、どのような食品やサプリメントで摂取すればよいかなど、詳しいことは医師に相談してみてください。

また、ビタミンDは30〜70歳の女性で毎日少なくとも600IU、70歳以上の女性には毎日少なくとも800IUのビタミンDが必要です。 サケやマグロといった脂肪の多い魚は、ビタミンDに良い供給源です。

治療

エストロゲンは健康な骨の成長にとって重要なので、ホルモン補充療法(HRT)は、治療中は女性の骨を骨粗鬆症から守るのに役立ちます。

ホルモン補充療法とは、人工的に作られた女性ホルモンを摂取する治療法で、主として更年期障害の症状を改善するために行われるものです。HRTは、エストロゲン単独で、またはエストロゲンと別のホルモン、プロゲスチンとを組み合わせて投与することができます。

セックス時の痛み

閉経を迎えると、セックスがあまり気持ちよくなくなる女性もいます。閉経に伴ってエストロゲンレベルが低下することで、不快になる可能性もあります。セックスへの関心が下がることに気づく女性もいます。

症状

閉経後、セックスをすると痛みを感じる人が多く、この痛みのせいでカップル間の関係に問題が生じている場合が多いようです。

自分でできる対策

潤滑剤で膣の乾燥を和らげると、痛みが軽減します。専用のゼリーや潤滑剤などを使ってみましょう。これは、処方箋は不要で、ドラッグストアで購入できます。乾燥が悪化するので、石けんやバスオイル、シャワージェルなどは使わないでください。

治療

上記を試しても効果がなかった場合、医師はホルモン療法を勧めるかもしれません。ホルモン補充療法は膣の乾燥を緩和しますが、ホルモン補充療法を受けられない、または受けたくない場合は、膣を自然に潤すためにエストロゲンを膣のみに使うことで対処することができます。エストロゲンクリームや錠剤など、さまざまな選択肢があります。

更年期障害

更年期障害とは、女性の閉経前後に様々な不快症状を生じる状態のことであり、女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少することが原因です。
女性には月経周期がありますが、これは女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが相互に作用しあって引き起こすものです。プロゲステロンもエストロゲンも卵巣から分泌されますが、エストロゲンは卵子の成熟を促して排卵を誘発し、プロゲステロンは卵巣から排卵した後の組織である黄体を成熟させ、来るべき妊娠に備える作用があります。
女性ホルモンは月経周期を整えるだけでなく、自律神経の調節など体に様々な影響をもたらしますが、加齢によって卵巣が老化すると女性ホルモンの分泌量が著しく低下し、全身に多くの弊害を及ぼすのです。
多くの人は45~55歳前後に発症し、閉経後二年ほどで症状が落ち着くと言われています。

症状

更年期障害の症状はエストロゲンの減少による月経周期の乱れだけではなく、自律神経のバランスが乱れることで様々な不調が現れます。
主な症状は次のように分類されます。

月経周期の乱れ
月経が遅れたり、早まったりといった乱れが生じます。また、腟分泌液が減少することで、細菌性膣炎になりやすく性行為での痛みを生じることもあります。
自律神経の乱れ
自律神経のバランスが乱れることで、自律神経失調症のような症状が多く見られるようになります。具体的には、次のようなものが挙げられます。

  • 突然の発汗やほてり(ホットフラッシュ)
  • 些細なことでイライラする
  • 不眠
  • 頭痛
  • めまいや耳鳴りなどの耳鼻科症状
  • 全身倦怠感

自分でできる対策

更年期は女性であれば誰しもが通る道です。しかし、症状の程度は人によって大きく異なり、中には日常生活が困難になるほど重度の症状が現れることもあります。
しかし、女性ホルモンの減少は自分の力で止めることはできず、医療機関での治療やセルフケアを行うしか症状を改善する方法はありません。
更年期障害に対してご自身でできる対策としては、自律神経をできるだけ整えるために、一日の内で必ずリラックスできる時間を作る、適度な運動を行う、規則正しく生活をこころがけて睡眠不足を予防することなどがおすすめです。
また、ドラッグストアや薬局などでは更年期障害によいとされるサプリメントや漢方薬を購入することができますので、ご自身に合うものがないか試してみるとよいでしょう。

治療

更年期障害は主に婦人科によって治療が行われます。
最も代表的な治療は、HRTと呼ばれるエストロゲン補充療法です。この治療によって不足したエストロゲンを補い、更年期による不快な諸症状を改善することが可能です。治療方法は閉経しているか、子宮があるのかによって異なり、子宮がある人にはエストロゲンとプロゲステロンを併用します。これは、エストロゲンの補充のみでは子宮がんの発症率が上昇するためであり、プロゲステロンを毎日飲むか、半月だけ飲むかによって月経用の出血を生じるかが異なり、閉経しているかやそれぞれの希望に合わせて服用内容が選択されます。また、子宮がない人にはエストロゲン単独での治療が行われます。
その他、自律神経症状が強い人には抗不安薬や抗うつ薬などが併用されることも少なくありません。

閉経後のおりものと出血には注意

閉経後にはおりものにも変化が生じます。一般的にはおりものの量は減少し、腟は乾いた状態となります。このため、細菌性膣炎を生じやすく、魚が腐ったような悪臭を伴う緑色を帯びたおりものが出ることがあります。また、腟カンジダ症にもなりやすく、強いかゆみと共に白いヨーグルトのカスのようなおりものが出ることもあります。
閉経後には基本的に出血は生じませんが、子宮がんやポリープがある場合には出血を生じることがあります。閉経後に生じる出血は基本的には何らかの病気のサインと考え、なるべく早めに病院を受診して下さい。

まとめ:閉経後に起こる変化をあらかじめ知っておき、対策をとろう!

閉経は誰にでもいずれ起こることであり、閉経後の変化も個人差はありますが少なからず起こります。あらかじめ現れやすい症状や起こりやすいトラブルを知っておけば、対処もしやすくなるでしょう。
また、出血やおりものの変化は病気のサインのことがありますので、気になる変化が見られたときは、早めに医師に相談しましょう。

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