物忘れってどんな状態のこと?認知症との違いは?

2019/11/23

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

加齢するにしたがって、人名や言いたいことを忘れてしまう「物忘れ」の経験は、誰にでも起こり得るものです。今回は加齢による物忘れと認知症がどう違うのか、物忘れのメカニズムと認知症症状との違い、病院に行くべき目安とともにご紹介していきます。

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物忘れってどんな状態?

加齢による「物忘れ」の定義に当てはまるのは、以下いずれかの状態です。

  1. 脳へのインプット機能が衰え、情報を覚えていられなくなる
  2. 脳のアウトプット機能が衰え、情報をうまく出せなくなる

年齢を重ねるとともに、脳を含む私たちの体は確実に老化していきます。脳のうち、外から入ってきた情報を一時的に覚えておく海馬の衰え、または脳全体が委縮することが原因で、老化による物忘れが起こると考えられています。

物忘れと認知症の違いは?

ただの老化による物忘れと認知症による記憶障害には、似ているようで明確な違いがあります。以下に、物忘れ・認知症による記憶障害の両方に起こりやすい症状について、それぞれの違いとともに紹介します。

人、または物の名前が出てこない

物忘れの場合
有名な人・物などの名前が出て来なくなるが、ヒントで思い出せる
認知症の場合
身近な人・物などの名前が出て来ず、ヒントや正解を聞いてもわからない

予定していた用事、段取りを忘れる

物忘れの場合
予定や段取りを忘れてしまうが、忘れているという自覚があり頻度がまれ
認知症の場合
予定や段取りを忘れていること自体も忘れ、まったく別のことを始める

体験したことを思い出せない

物忘れの場合
経験したという事実は漠然と覚えているが、細かい内容が思い出せない
認知症の場合
直近のことを中心に経験した事実ごと忘れていて、思い出せず不安がる

なお、老化による物忘れは進行しませんが、認知症による記憶障害は確実に進行します。また、認知症による記憶障害では本人に忘れていることへの自覚や不安がなく、年齢不相応な物忘れにより生活に支障をきたすのも大きな特徴です。

病院で診てもらったほうがいい目安は?

以下のような症状が見られたら、ただの物忘れではなく認知症の可能性もあります。複数当てはまるようなら、一度医療機関で診てもらうことをおすすめします。

  • 迷子になる、仕事が進まないなど、物忘れで日々の生活に支障が出ている
  • 本人に物忘れしている自覚がなく、無意識に話しの辻褄を合わせようとしている
  • 毎日の体験や出来事、会話したことなどを丸ごと忘れていて話がかみ合わない
  • 周りの言うことを理解できても、うまく自分の言葉を出すことができない
  • 服を脱ぎ着したり、飲み物を入れたり食事するなどの日常行為も忘れているようだ
  • 物忘れ以外に暴言や暴力、段取りが組めない、幻覚などの症状がある

なお上記のような認知症を疑うべき症状には、本人や家族よりも、近隣住民など本人に近しい他人の方が気付きやすいと言われています。家族について、本人の周囲から「気になることがある」と指摘を受けたなら、一緒に病院に行ってみるとよいでしょう。

おわりに:物忘れは、老化による年齢相応の脳機能低下によるもの

年齢を重ねると、情報をとどめておく海馬の機能低下や、脳全体の萎縮から記憶力はどうしても悪くなります。これにより情報のインプット、またはアウトプットはうまくいかなくなる症状が物忘れ」です。物忘れの特徴は、その程度が年齢相応で生活に支障をきたすようなものでないこと、そして本人に忘れている自覚があることの2つです。確実に症状が進行し、生活に支障をきたす認知症による記憶障害とは大きく異なることを押さえておきましょう。

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